松村涼哉「15歳のテロリスト」

成瀬 灯

紹介

コロナウイルスが流行して、緊急事態宣言が出されて多くの学校が休校状態。最初は実感なんてなくて休校を喜んだけど、ニュースで知らず知らず耳に入ってくるコロナの情報に家族や周りの大人達が騒ぎ始めて実感せずにはいられなくなった。


自粛中、課題は出るしやる事がないわけじゃない。それでも出掛けられないし友達と遊べないのは思った以上に暇で窮屈でスマホの世界に逃げてみるけど、

YouTubeもドラマやアニメの再放送も、もう飽き始めていた。

ていうか、ずっとスマホを見てるとブルーライトの影響かな?頭痛くなったり体調悪くなるよね。

だから「本を読んでみようかな」なんて気まぐれで手を伸ばす人もいると思うんだ。でもその時にどうせなら、自分に衝撃を与えてくれるような一冊を選んで欲しい。


私はメディアワークスから出版されている「15歳のテロリスト」を紹介したいと思う。

本の背表紙に書かれたあらすじを簡略化するとこうだ。


『すべて、吹き飛んでしまえ』

新宿駅爆破事件はこの犯行予告のあと、起きた。容疑者は渡辺篤人15歳。少年犯罪を追う記者安藤は、少年犯罪被害者の会で彼と出会っていた。被害者だったはずの彼がなぜテロを起こしたのか?

安藤は難航する事件の中、足取りが掴めない篤人を追う。事件の裏に隠された真実に、衝撃と感動が突き刺さる慟哭のミステリー。



15歳という年齢が子供か大人か、あなたはどちらだと思いますか。

私は「15歳のテロリスト」を読み終わった時、あまりに15歳の少年の――渡辺篤人の葛藤が胸に刺さって、息が出来なくなるかと思った。もしかしたら途中、我知らず止めていたのかもしれない。

記者安藤の視点と篤人の視点が交錯することで、大人の立場からも事件の真相が見れる。だからこそ、苦しいだけじゃなくて、おかしな話ではあるけどテロリストの応援もしてしまった。

なんの力もない、お金も権力もない。だけど変えなきゃいけない、どうか変わってくれよ、守りたいんだ、自分はどうなってもいいから。

痛いくらい純粋な叫びに、何も感じないなんて許されなかった。

この話のもう一つの鍵はきっと「アズサ」の存在だ。

篤人は妹をとある事件で亡くしている。その犯人の妹がアズサだ。つまり、篤人とアズサの関係は被害者親族と加害者親族。なぜ篤人がアズサと一緒にいることを選んだのか? ここに生まれる葛藤に私はどうしようもなく共感してしまった。


きっと、読む前と読んだ後では少し世界が違って見えるはずだ。揺さぶられ刺され、それでも目に光は残しながら息をつく。

「面白かった」と。


だからやはり私が言えるのは、

“ どうか是非、松村涼哉「15歳のテロリスト」を読んでみてほしい ” そのことだけだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

松村涼哉「15歳のテロリスト」 成瀬 灯 @kimito-yua

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ