第29話:ユニ

 次の日。


「名前、決めたよ」


「⋯⋯」


「お、ついに決まったんですか?」


「うん。一晩中ずっと考えて、やっと決まった」


 私は、じっと見上げる少女の前でしゃがんで、目線を合わせる。


「ここにいる間、君の名前は"ユニ"だ」


「⋯⋯⋯ユニ」


「そう。シルヴェニアの雪山にしか咲かない希少な花、《ユールニース》から名付けたんだ。⋯⋯気に入ってくれたら、嬉しい」


「⋯⋯うん。⋯⋯うれしい」


 少女・ユニは嬉しそうに笑顔を浮かべた。


 あぁ、良かった⋯⋯。


「おぉ〜。良い名前ですね。ユニちゃん、よろしくね」


「⋯⋯うん。⋯⋯よろしく」


「えへへ〜、ユニちゃん、良い名前だね♪」


 良かった。皆も違和感なく受け入れられたようだ。自分の名付けの素質を、もう少し信じてみても良いかもしれない。



 ◆◆◆



「じゃ、ギルドに行ってくる。アイビス、フェリシア。ユニの事をよろしくね」


「分かりました!おまかせください!」


「はーい。まっかせてー♪」


「⋯⋯⋯⋯(ぎゅ)」


「⋯⋯ん?」


 外に出ようとしたところで、ユニが服を掴んできた。


「⋯⋯どこ、いくの⋯⋯?」


「ちょっと仕事に行くだけだよ」


「⋯⋯⋯いっしょが、いい⋯⋯」


 ⋯⋯あぁ。これは、懐かれてしまったか。


 うーん⋯⋯。


 狙われてるかもしれない以上、外出には危険が伴うのだが⋯⋯。


「⋯⋯⋯(ふるふる)」


 ユニは、服を掴んだまま震えていた。


 ⋯⋯無理矢理離すと、精神的にダメか⋯⋯。


 となると、連れて行くしかないか。ファルシアとフェリシアが側にいれば、大丈夫か⋯⋯?


「⋯⋯分かった。じゃあ、一緒にいくか」


「⋯⋯(こくり)」


「⋯⋯師匠、良いんですか?」


「ああ。ユニの心も気遣ってあげないといけないからな」


「⋯⋯なるほど。師匠は優しいですねっ♪」


「その分、私たち全員で護らないといけない。フェリシア、ユニを優先で護るように。良いね?」


「はーい!」


「ファルシアも、周囲の警戒レベルを強化して」


「分かりました。おまかせください」


「⋯⋯じゃあ、行こう」


 やれやれ。外出するのも命がけだな⋯⋯。


 私たちは、ユニを連れてギルドに向かう事にした。

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