第30話:路地裏の襲撃者

「⋯⋯中々の大所帯で来たな」


「すみません。これには事情がありまして⋯⋯」


 私は、先日の森での出来事を簡潔に説明した。


「⋯⋯なるほど、所属不明の連中か⋯⋯」


「はい。この娘は今も狙われています。いつ襲撃があるか⋯⋯」


「今のところ、我々に出来る事はほとんど無い。その娘は騎士団に預けた方が良いだろうな」


「⋯⋯ですが、それは⋯⋯」


「あぁ。城で保護される事になるが、同時に身体の隅々まで調べられる事になるだろう。年端もいかない子供にはキツいだろうな」


「⋯⋯⋯っ」


「それが嫌なら、君たち自身で保護してもらうしか無い。依頼でも無い以上、ギルドで保護する理由は無い。全て自分たちでやる事だ」


「⋯⋯分かってます」


「⋯⋯分かっているなら結構」


 そこで会話は打ち切られ、仕事の話へと移った。



 ◆◆◆



 ギルドへの報告も終わり、屋敷へと帰る途中に、それは起こった。


「⋯⋯警告。後方10メートルより尾行者を確認。数は3」


「⋯⋯この街中で?」


「はい。他にも数名いる可能性があります」


「⋯⋯⋯」


 つけられてるとなると、屋敷に戻る訳にもいかない。


 どこかでなんとか処理するしか無いか⋯⋯。


「⋯⋯みんな、少し寄り道しようか」


「寄り道ですか?」


「あぁ。⋯⋯会いたがってる人たちがいるみたいだから、会いに行こう」


「⋯⋯分かりました」


 その一言で、アイビスの顔に緊張が走る。


 どうやら、こちらの意図が伝わってくれたようだ。


 私たちは、急遽路地裏へと入っていった。



 ◆◆◆



 私たちは路地裏の奥までやってきた。


 中央区からはだいぶ離れたし、今は人気は無い。


 頃合いだろう。


「おい。そろそろ姿を見せたらどうだ?」


 私の呼びかけに応えるように、周囲から男たちの集団が現れた。その数、11名。


 思ったより多い⋯⋯。


「⋯⋯ふん。まさか、尾行に気づいただけでなくおびき寄せるとはな」


「こっちには、優秀な仲間がいるんでね⋯⋯」


「まぁいい。⋯⋯さっさとそのガキを渡せ」


「⋯⋯この娘をどうする気だ?」


「⋯⋯まだ気づいてねぇのか?」


「⋯⋯この娘の身体と同化しているヤツの事か?」


「なんだ、知ってるじゃねぇか。⋯⋯なら、分かるだろ?そいつは人間じゃねぇんだよ、実験動物なんだよ。そいつを連れて戻らねぇと、ウチらの雇い主がうるせぇからよ。⋯⋯さっさと渡せよ?」


「⋯⋯断る。人を実験動物扱いするような連中には渡せない」


「あぁそうかい。⋯⋯じゃあ、力づくで返してもらうぜぇ!」


 その一言が合図になったようで、男たち11人全員が襲いかかってきた。


「はあっ!」


「ふげっ!」


 突っ込んできた男の顔に蹴りを入れてふっ飛ばす。


 ハンドソードはあまり使いたくない。殺すのは最後の手段だ。


「シャアアッ!」


 アイビスも体術と軽い身のこなしを駆使して、男たちを次々と投げ飛ばしていた。


 ⋯⋯アイビスはかなり強くなってきた。今も、武器を使わずに素手で捌ききっている。頼もしい限りだ。


「うらあぁぁっ!」


 後方の物陰から、男が飛び出して来た。標的は後ろでユニを護っているファルシアだ。


「お姉ちゃん、危ないっ!」


 いち早く気づいたフェリシアが物理防御壁を展開し、男を弾き飛ばした。


「ぐあっ!な、なんだそれはぁっ!」


「グレイブ」


 ファルシアの左手から長大な金属製の棒が出現し、それを横薙ぎに振るって男をふっ飛ばした。


「⋯⋯って、戦えてるじゃないか?!」


 後方支援型で戦闘力低いって⋯⋯。


「あくまでも護身用です。それに、武器の扱いは相手の動きをトレースしただけです」


 規格外過ぎる⋯⋯。機械人形はみんなこういうものなのか⋯⋯?



 ◆◆◆



 襲撃者たちを全員気絶させた私たちは、衛兵たちに無事引き渡した。


 その後、戦闘で疲れ切った私たちは家へと戻って休む事にした。

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