チャイム

@rurunana

第1話

「ねえ、人間は死んだらどこに行くのかな」

気怠げにレイはスミレに話しかけた。

ぽかぽかのお日様が、2人の髪色を透かす。

2人の黒染めが落ちてきてしまったかなとスミレはレイと自分の髪の色を見比べて思った。

「さあ?無になるんじゃないの?なんにも感じなくなって、自分がいるかいないかもわかんなくなるんだよ。」

「そっかぁ。」

自分で聞いたくせに、レイは興味なさそうに呟いた。

昼休み、5限の社会は2人の間でどこかに捨ててしまおうと一致団結して、先生という監視の目をかいくぐりここは2人の秘密の場所。

スミレはここが好きだ。

暑くもなく寒くもない、気になる程汚くないし、2人で過ごすにはぴったりの広さ。

なにより、2人しか知らない場所というのがスミレの心をくすぐる。

スミレにとってレイは唯一無二の存在だ。

「彼氏がさあ、ほかの女の子と浮気してたんだよね。」

ヘラっと笑って、レイはそう言った。

「まじ?」

スミレはレイの目を見た。

その目は昨日よりも少し腫れている気がする。

「週末2人でお泊まりしたんだけど、その時に出来心で携帯見ちゃったんだよね。そしたら真っ黒。」

レイの目から涙が一滴、また一滴と流れ始める。スミレはそれを目で追った。

透き通って綺麗だ。レイのすべすべの肌には瞬く間に涙がとどまることなく落ちていく。

スミレはレイの涙を自分の手でぬぐってあげた。

「ほんとに好きだったんだあ、私。最初で最期の人だったの。でもあいつにとっては私は替えの効く存在だったの。ほかにも女の子がいたの。その子はすごく可愛かったの。」

「レイも可愛いよ、レイの方が可愛いよ。」

「スミレに可愛いって言ってもらっても意味ないの。可愛くないの私は。だから浮気されたの。」

「そんなことないよ。レイは世界で一番可愛いし綺麗だよ。」

「もういいよ。もういいの。死にたい。死んでしまいたい。」

「なんでそんなこと言うの。死にたいなんて言わないで。」

「あの人がいないと意味ないもん。生きてたってしょうがない。」

「私がいるじゃん。」

自分で言って、スミレは胸がキュッと締め付けられるような感覚がした。

レイは首を振る。

どうせ死ぬ勇気なんてないくせに、くだらない恋愛ごとで涙を流して死にたいと漏らすしょうもない女のくせに、そんな綺麗に泣かないでよ。

レイの泣き声が、震わせた肩が、全てが弱くて脆くて儚くて、スミレは言いようのない怒りと悲しみでいっぱいいっぱいになった。

気がついた時にはもう遅かった。

スミレはレイに顔を近づけて、そのままキスをした。

授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。




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