第4話 間違いなく君なんだよ

「私のこと覚えてるの?」


「なんか変だよしおちゃん」


「私はしおちゃんじゃない」



 ガラッと教室の戸が開く。



「あー疲れた」



 数人の生徒の中に山本美紀もいた。さっと塩澤ちなみは帰っていく。


「なにボーッとしてんだ、帰るぞ」


「うん」



 次の日の放課後、三咲七海はまた教室に残っていた。委員会はない、山本はバイト。今日の日直はさっさと日誌を書いて帰ってしまった。結局提出できなかった昨日のプリントをもう一度広げ、悩んでいるうちに彼女はまた一人になっていた。



「ななみちゃん、」


「しおちゃん、やっぱり来ると思った」


「覚えてるんでしょ、やっぱり」


「思い出したよちなみちゃん」



 塩澤は少し傷ついた顔になる。



「小学校の時転校してったちなみちゃんでしょ、名字も変わったし、顔も大人になったね」


「私はずっと覚えてた、ななみちゃんと遊ぶのが一番楽しかったから」


「あたしも楽しかった!でもほら、ランドセル持たせる男子がいてさー、重いのに」


「やっぱり覚えてるんだ!昨日の、重いなら置いてけばいいのにって」



 そこでやっと三咲も思い出したようだ。三咲と塩澤が罰ゲームで持たされたランドセルを、路上に置き去りにした話を。



「ななみちゃんいじめられなかった?私怖くて学校…転校になってずっと気になって」


「えー?どうだったかな。先生から話聞かれて。ほら、けんちゃんとかに謝られて。そんでおわりだった気がするよ?覚えてないや!」


 大声で笑う、三咲につられる塩澤。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る