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この国の
我われの国の騎士以上の忠誠心に時にはあきれるほどでもあるが、同時に心打たれることもある。こんな主君への忠誠心が厚い
そのあふれる忠誠心をもってこの国の
奇しくも主は言われた。「もし汝ら翻りて
そんなことを私は考えているうちに、ヴァリニャーノ師と村人たちの話は終わっていた。
とりあえずは、村人たちは帰って行った。
それを待っていたかのようにヴァリニャーノ師は早速フロイス師に、
「ドン・パウロが臼杵に帰りたがらない本当の理由があるのではないですか?」
と、尋ねていた。やはりフロイス師は何か言いにくそうに、
「それは…まあ、戸島で彼と会うことができたら、その時彼に直接お聞きください」
とだけ言っていた。
そういったこともあって、早くにドン・パウロ一条兼定に会いに行きたかったが、翌日も風向きは変わらなかった。船頭の話だと、この時期に風向きが変わるのはほんの一時期で、その機を逃さずに船を出して、南下した先の岬を回ればまた順風になるという。
こうしてこの下田での停泊の日々が七日も続いた。ここは長宗我部の身内がいる中村城も近いので、できれば早く離れたかったが、そうもいかないようだ。その中村城こそが、かつてのドン・パウロの城だったのだ。
我われが滞在中、あのドン・パウロの旧臣だった村人たちが、毎日食料を届けてくれるなどの世話をしてくれた。堺に行く時に、異教徒の一向宗門徒でありながら我われを親身で守ってくれたあの船頭の時もそうだったが、ここでも村人たちは異教徒ながらかのサマリヤ人のように我われの隣人となってくれたのであった。
ヴァリニャーノ師は涙を流さんばかりに彼らに感謝をし、
「あなた方に『
と、いつも祝福していた。
この言葉を何回か聞くにつけ、彼らはキリストの教えについてもその概略を話してほしいと願うようになってきた。
「わしらの主君が信じる教えじゃき、キリシタンの教えに間違いはないがぜよ」
と、そんなことも言っていた。
しかし、あらためてキリストの教えをひと言で説明しろといわれても、それは「ひと言」のくくりの中に入りきれる程度のものではない。私はヴァリニャーノ師がどう答えるか、聞き耳を立てていた。
「我われが信じる『
「ほう。ほきイエズス様という方は、自分を殺した王をやっつけたのやき?」
「とんでもない。イエズス様は彼らを許しました。イエズス様が十字架に架けられたのは、私たちすべての人類の罪の肩代わりだったのです。そして主は罪に打ち勝った。そのすべては『
「いやいやいやいや、こんな話は初めてだっっちゃ」
村人らはみな口々にそう言って、興味を示していた。
順風を待つまでの間、村人たちは毎日ヴァリニャーノ師の話を聞きに船に来たし、フロイス師も根気よくそれを通訳していた。そして、どうしたら信徒になれるのかという話までなったので、ヴァリニャーノ師が洗礼のことを告げると彼らは皆一様に受洗を希望したのである。
それは非常に喜ばしいことであったが、いかんせんここは信長殿や大友殿にとっても敵地である。ここで彼らに洗礼を授けても、彼らは最初から司祭もおらず教会もない所で孤立してしまう運命にある。それはあまりにも不憫であるとヴァリニャーノ師は判断したようだ。
「洗礼を受けるにはもっと詳しい
ヴァリニャーノ師のその言葉を伝えてから、フロイス師は、
「もしあなた方がその心があるのなら、いつの日か必ず『
と、付け加えた。ここでフロイス師は、この国の人が好んで使う
「あなた方に『
この考え方は、仏教における『
この
そして八日目になって、ようやく順風となった。
この機を逃したら、今度はいつ出港できるかわからない。
村人たちのことはすべて『
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