第2章


草子は、四時限目の社会科の授業が終わりに差しかかりこれから昼休みになるという何とも絶妙な時間帯になってから、プロレスラーばりの体格をしたジャージ姿の生徒指導の教師に連れられてやってきた。もとい。首根っこを掴まれ運ばれてきた。

 ブレザーのボタンは全開で、ワイシャツはズボンからはみ出し、制服のあちらこちらが黒く煤けているその締まりのない様子と教師に運ばれて来たことから、すぐに予想通りだったのだと察しがついた。

 これに懲りてコイツの悪癖が直ればいいのだけれど、そんな素振りは微塵もなく、宙吊りになりながらも目蓋を伏せてふてぶてしく眉間にシワを寄せているのだから本当にうれしい限りだった。

 子犬というより狂犬だな、小声で独りごちり僕は苦笑した。

 教師は筋力任せにその狂犬を投げ捨てると乱暴に扉を閉めて出て行く。狂犬は、生徒の衆目を一身に浴びながら気だるそうに立ち上がり、汚れた制服を整えもせず、後は授業が終わるまで背を丸めて机に突っ伏すのだった。


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