十三 仕立屋
「お恨み申し上げます、初めから決められたことなのです、どうしてわたくしが。可愛らしい御坊ちゃま、あなたさまだけに打ち明けます、決して他言はなされますまい、どうかお聞きくださいませ。
悪夢を見ました、美しい悪夢でした、この夢はいずれ本当になるでしょう、そう確信しておりました。この邸でたったひとり、わたくしだけが知っております、ガルデニア家の滅亡は近うございます。
秋の終わりに産まれた忌子の始末を心優しい我が妹に命ぜられましたのが悪因となりました。いちど抱いてしまった嬰児、炎に焼かれて灰となっても、忘れるはずがありましょうか。そればかりか、あの子をお嬢様の養育係となされるなど、とんだご判断でございます。死者を懐かしがって紡がれる言葉は人の心を揺り動かし共鳴させます、顔も見知らぬ幻の弟君に心を寄せられた可哀想なお嬢様、日々情念を綴っては黄昏時に庭に出て、土に埋められました。その傍に咲く梔子は決まって一重咲きでございました。
針が落ちました。妹が死にました。始まったのです。これからわたくしの針が妹たちやお姉様を次々と刺し殺して、夫人様、最後にはマンジェータ様に……。この一幕の証人としてイグ様だけが残されます。
また一本、針が落ちました。どうかわたくしをお憎みなさらないでくださいませ。全ては台本の通りなのです。」
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