第4話 下調べ
偽物の勇者と聖女にぴったりな人選をまずはしなくてはいけないな。
ウザい冒険者のアイツらにぴったりのゲスい二人組がいいね。そうと決まったら下調べだ!
「遠見の水晶よ、起動せよ」
「アクト様ですね?何をご覧になりますか?」
「世界で一番クソ野郎の勇者風な男と世界で一番ビッチな聖女風な女を映してくれ」
その時僕は気づくべきだった。僕にとって一番のクソ野郎は裏切り者の親友ブレイで、世界一のビッチは恋仲だと思っていたアリヤだったということに。
ほどなく水晶玉は二人を映し出した。
闘技場のチャンピオンである「勇者」といかにも「聖女」という感じの女性が目に入る。どことなく会ったことがあるような懐かしさと嫌悪感を感じつつ、確かにこいつらはクソ野郎とビッチだな、と納得する。
この二人を転移の魔法でこの塔に呼び出すには面識を持たないといけない。実は面識は在ったのに僕は気づいていなかった。忘れたくても忘れられない故郷ミラル村の一番親しい二人だったというのに。だか無理もなかったかもしれない。なにしろ僕は僕以外にミラル村の生き残りがいる可能性など微塵も信じていなかったのだから。
いつも思わせぶりだったアリヤ。そして、僕がアリヤが好きなのを知りつつ横からアリヤを奪い去ったブレイ。あまりにも醜悪な記憶ゆえ、僕が封印した思い出。
もちろん無意識ではあったが、そんなにも嫌いつつ同時に僕は彼らに会いたかったのだろう。
「水晶玉よ、世界で一番ビッチな聖女風な女がどこにいるか調べてくれないか」
まずは女の子からだ。どんなにビッチでもクソ野郎よりはマシだと思うだろ?
「場所を検索します……、見つかりました。王都のカフェで働いている様です」
そこは歓楽街で賑やかな場所だ。そうと決まれば善は急げだな。
賢者の塔の魔法実験室には転移の門が設置してある。簡単に説明するとコレを使えばワープできる。備え付けのモノだし、コレ高かったのだよね。できるだけ利用して元は取らないとね。
「転移の門よ、起動せよ。水晶玉の情報を基に賢者アクトをかの地へ運べ!」
「起動いたしました。到着地点の安全を確認中……、確認が取れました。転移準備完了。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0、転移します!」
僕の体は賢者の塔から消えた。そして、王都の歓楽街のとあるカフェへと僕を誘った。到着した瞬間僕を魅了したのは、イカガワシイ雰囲気の聖女カフェの内装だった。
「おかえりなさいませ!勇者さま」
「どの聖女と魔物を討伐に行かれますか?」
聖女のような格好をしたきらびやかな服装の若い女性たちが僕を出迎えたのであった。
え、普通のカフェじゃなかったの?
「とにかく一番聖女らしい子がイイな?会える?」
と要望をドギマギしながらもなんとか伝えるのであった。
裏切りの村の大賢者アクト 広田こお @hirota_koo
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