第3話 悪徳商法
さて、手っ取り早く金を稼がねばなるまい。
そういえば勇者と聖女を紹介しろってウルサイ冒険者一行が居たな。
なんでも自分たちが真に世界を救うとか、勇者と聖女の仲間にふさわしいのは僕らだとか。
「今更、世界を救うとか馬鹿なのかヤツラはっ」
吐き捨てるように独り言を賢者の塔の書斎で言う。
しかし、紹介料を払うとか言っていたな。腕の立つ冒険者らしく、かなりの大金だった。ま、本物の勇者と聖女を紹介する義理なんてどこにもないから断ろうと思ってたけど、勿体ないよな? 金だけ受け取っておいても良いよな。
「悪くない考えだ」
うんうん、と一人でうなずく僕。
勇者と聖女も気乗りしないらしく紹介しないでくれと言われていたから、いつも門前払いしてたけど本当にシツコイのだよな。
どうせ、また来るだろう。そのとき「偽物」を紹介してやればいい。どうせ彼らに真贋がつくとも思えない。
「アクトさん笑っている?悪くない考えってなんのこと?」
思案をめぐらしていたので聖女がすぐそばに来ていたの気づかなかった。
「いや、コッチのこと。夕食?」
「そうだよ。タコヤキとラーメン。アクトさん好きでしょ?」
そうなのだ身よりのない勇者と聖女にはとりあえず賢者の塔に住んでもらっている。そして、彼らは彼らなりに故郷の味が懐かしいらしく、色々とニホンの料理を再現しては僕に食べさせてくれる。
「ありがとう。王国の宮廷料理なんかよりタコヤキとラーメンの方が百倍美味しいよ」
今夜は彼らの得意料理のタコヤキとラーメン。
二人は仲が悪いが料理の腕だけは認め合っているらしく、厨房では良く協力してくれている。
食事をしながら僕は二人に計画を打ち明ける。
「君たちを紹介しろって何度も来る冒険者いただろ?あいつらを追い払ういい考えが浮かんだ。功名心にはやった同じように最悪なヤツラを噛み合わせてやろうと思う。偽物の勇者と聖女を仕立て上げて、形だけ紹介すれば金も取れるし、満足してもうココに来なくなるはずさ?」
「アクトさんエゲツないっすね。金儲けのためならなんでもやるんですね」
と勇者は笑った。
「ま、僕もアイツらと旅するのは勘弁だから賛成ですよ」
聖女は
「私も賛成。お金持ちは嫌いだけど、お金は必要だもの」
お、これは脈ありか?実はまだ黙っているけど君たちを説得するためのお金なんだよね?と内心ほくそ笑む僕。
よし、アイツらが来たら異世界召喚しているフリをして、偽物の勇者と聖女を召喚してやるんだ!そしてお金をガッポリ頂いてしまおう。
僕は美味しい夕食と家族団欒のような空気で上機嫌だった。
故郷の村で当たり前に毎日していた食事の時間の空気と良く似ていたからだったことに気づくことはなかったけれども。
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