第2話 勇者=ラーメン男
僕の名前はアクト=クゥ=マックス。大賢者をしている。
大賢者は人々の悩みに応えるのが役目なんだけど、とりあえず今は魔物討伐のため、召喚した勇者と聖女に仲よろしくしてもらうのが目標だ。
「なんで異世界転生してもラーメン男と一緒なのよっ」
「うるせー、タコ女。お前が聖女なんて笑わせるぜ」
勇者と聖女はこの調子でずっと喧嘩をしている。ある意味仲がいいのかもしれない。痴話喧嘩にみえないこともないかも。
なんとか魔物の前でイチャイチャしてもらえないものだろうか。って無理か。
「はぁ。どうしたものか。おかしいな?勇者と聖女の相性は抜群と女神様は太鼓判押していたのに」
あの二人の間に何かのすれ違いがあったに違いないな。それとも女神の手違いだろうか?二人が魔物の前で愛を語らわなければ、今は廃墟と化しているだろう村に近寄ることすらできない。うーん。とりあえずなんでお互いをそんなに嫌っているのか、それとなく探りをいれてみるとするかな。
「聖女様はなぜ、勇者殿をそんなに邪険にするのですかな?」
とまずは聖女に尋ねてみる。
「お高く止まったラーメン男だからよ」
と聖女はピシャリと言い切った。
「実家がお金持ちだからって偉そうに!」
勇者も負けずに
「ブーメランお疲れさまです。そちらこそタコヤキがちょっと売れたからって偉そうに!金が全てだと思うなよ!」
(もう村に還るのは諦めた方がいいのかな)
せっかく偽物ではない本物の勇者と聖女を召喚したのに、まさかこんなに上手くいかないものだとは!
魔物の前でイチャついてもらうなんてタダでさえ無理気味な要求なのに。
古文書によると魔物はニホンと呼ばれる異世界の存在に弱いらしく、かの地の人間の愛の営みにより溶けるように消えるという。
こうなったら最後の手段だな。
最低の悪徳賢者といわれた僕が思い浮かべた二人をくっつける手段。
それは。
「金だな。世の中金。飲む打つ買う。三拍子全部金がいるときたもんだ!」
二人はことあるごとに金持ちへの恨み辛みを罵倒に替えていたから、金には弱い裏返しかも?幸い自分はお金だけは沢山もっているんだよね?借金した金だけど。
なんで借金したかって?賢者って初期投資が結構いる商売なのよ。マジックアイテム沢山買わないといけないし。学費だって馬鹿にならないんだぜ?
王国は僕の才能を認め出世払いで賢者の道に進むことを許してくれた。
でも僕は王国を赦すつもりはない。故郷を魔物ごと鏡の異世界に葬り去った恐ろしい所業。僕の生まれたミラル村は裏切りの村と言われている。
「裏切ったのは王国なのにな、全く」
くくく、でも悪徳賢者様の報復は恐ろしいぜ。いつか、必ずいつかこの世界に償いをさせてやる。
僕はいろいろな復讐を考える。どす黒い感情と恍惚が僕の心を満たしている間、故郷を奪われた苦しみを忘れることができる。
今となっては、それが僕の生きる原動力なのだから、負の感情だからといって忌み嫌う必要がどこにあるというのだ。
「金だけはいつも裏切らない」
僕はそう一人ごとを言うと例のお金をどう工面するか思案をはじめるのであった。
よく考えれば金持ちを嫌う二人がそんなことで心変わりしないことはわかりそうなものだったのに、僕は自分があまりにお金というパワーに支配されているがため、独り相撲を取っていた。だって人間は簡単に裏切る。仕方ないだろう?
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