満を辞して異世界転生したものの..

@Sangakuha1810

第1話 異世界へ

眠い、眠すぎる...

そう心の中で嘆きながら深夜26時に放映されるアニメを淡々を待っていた。

俺は山元伸介、日本の埼玉県に住むごく普通の高校生だ。

「はぁ、やっと2時だ」

独り言をぼやきながら生放送しているサイトのブラウザーの目の前まで動かす。

今から見ようとしているアニメは俗に言う"なろう系"

自分の同い年の高校生が異世界に転生して、超人的なパワーを神様とやらに授かって魔物を倒し、世界を救うという在り来たりな設定。

だがアニメを見ている多方の視聴者はその道中に仲間になる美少女目当てというところだが。

「誰が助けてぇ!」

「リーフバリア!」

「あ、あなたは勇者様!?」

目をこすりながら楽しみに待っていたアニメもいざ見始めると集中力が途切れてほかの作業に手をつけ始める。

10分もすると俺は生放送のブラウザーを尻目にネットサーフィンを始めている。

イヤホンからはアニメの音声が聞こえるが内容なんて聞いちゃいない。

スーパーで時折流れてくる広告商品を値段をただ発するだけのアレと似たようなものだ。

「寝るか」

ただアニメを見るという言い訳を理由に眠くなるのを待っていただけ、そう思いながらもパソコンの電源を切り、ベッドへと足を運んだ。

まぶたを閉じる、俺の本当のなろう系はここから始まる。

皆一度は自分をなろう系の主人公に仕立て、自分だけのオリジナル空間を想像したことがあるに違いない、現に俺がそうだ。

昔見たアニメに出てきたあの子、そしてさっきみたお気に入りのあの子、全て俺の中じゃ思い通りだ。

そうやって妄想を繰り返していくうちに眠りにつく、毎日がこれの繰り返し。

そして今日も気づけば深い眠りに俺は落ちていった....



目覚ましの音がうるさい

「シンスケー!ご飯!」

「今行くよ」

母さんの声に寝起きの乾燥した声で必死に返事をする。

昨夜妄想した世界は一旦お預け、俺は食事を取りに階段を降りてリビングへと向かった。

「お醤油いる?」

「いらないよ、塩だけで食う」

「シンスケはいるわよね」

「あぁ、貰うよ」

親父は新聞片手に味噌汁をすすっている。

俺もまだ寝起きで意識が朦朧とする中、朝食を口に運ぶ。

..

「ごちそうさま」

「ごちそうさま、ありがとう、母さん」

「今日帰りは研修生の指導で帰りが遅くなる」

「シンスケも今日は部活?」

「あぁ、俺も遅くなるよ」

母さんが何か言おうとしたが俺は自分の部屋へと階段を上り、制服に着替えた

..

「それじゃ行ってくるよ」

「いってらっしゃい」

母さんに見送られながらいつものように家を出た。

友達と合流する交差点までの道のりはいつも一人だ。


しばらく歩くと後ろからすごい勢いでトラックが迫ってきた

なぜか運転手の顔がその時だけはっきり見えた。

眠っている。俺は咄嗟に避けるべきだがこの光景に見覚えがあった。

なろう系主人公の高確率はトラックに跳ねられ、転生する。

俺にはなぜか自殺するような勇気はないのに、その居眠り運転のトラックを避けようとはしなかった。

そして目と鼻の先にトラックが迫り、風が一瞬止まったかのように思えた。


その瞬間、俺はトラックに跳ねられた。

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