第23話   いびつな だけど純粋な気持ち

ランタン片手に 見回りがてら 歩きだす


黒い外套がいとうに 身を包んだ私は

小さな子供たちから

オバケだの 臓器売買してる人だの

さんざんな 噂を立てられる


だが


今日は 何があったとしても

少しも気にしないで 眠ることができる


私は 埋葬者を記したファイルを 片手に

適当な 場所にしゃがんで

ランタンで 照らして ページをめくった


思ったとおり

彼女の祖父は 私の霊園にて

永遠のぬくもりを 得ていた


水中よりも 土の中のほうが 温かいだろう


ここには いつも

花が 添えられ続けていた



オレンジという言葉が 色が 匂いが

私の中に 奇妙な鮮やかさをもってして 輝いている


昆虫学者と聞いて

耳をかすめる 羽虫の存在に

意識を持っていかれる


これは偶然なのだろうか


依頼人を 苦痛から

解放してゆくたびに

私の中で 

それまで意識していなかった 身近で 素朴な

好みが 生まれてゆく


肩に留まった バッタに 微笑んだ



彼女は どういう気持ちで 花を捧げているのだろう

きっと その感情は 一つではない

複雑に 絡み合い

たとえ 負の感情がまさっても

彼女は 親族への 気持ちを

絶とうとはしないだろう


おそらくは

たぶん

きっと

なんとなく

そうであってほしいと

私が 願っていた


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