第20話 草原の住所
山を越えて 霊園に戻った
依頼人が マフィンを 弁当箱に 詰めてくれたが
腹は ふくれなかった
お茶も 水筒に 注いでくれたが
喉は 乾いていた
さすがに 疲れてしまったから
今日は 夜まで 小屋にいようと
そう思っていた矢先
霊園の となりの 教会から
シスターが 現れた
あまり感情を 表に出さない人だが
私を見つけるなり ほっとしたように
微笑んでくれた
それだけで 今日の奇跡を 信じることができた
私は 生きて帰ってきたのだ
「おかえりなさい。お怪我などは、ありませんか」
私は 首を横に振った
「そうですか。お仕事、お疲れ様でした」
気の利いた 返事が浮かんでこなくて
私は お辞儀して 小屋に 戻った
もっと 話せていたら と後悔しながら
でも いきなりシスターに会うなんて思ってなかったから
とか 言い訳を 脳内で 並べ立てながら
依頼人から もらった 地図を 眺めた
なんの間違いだろう
草原の住所が 教会だった
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