第16話   人骨を発見する

階段は どこまでも 続き

窓も なく 灯りも なく

それでも 不思議と 明るかった


これは たぶん トンネルなのだ

地下へ 埋まるためでなく

真実と 出口へ 向かうための


そう信じたら 下りるのも 悪くない

まるで 産まれ出る 赤ん坊の心地だ



階段の 終わりが 見えてきた


床板も 何もない

じめじめした 地面には

草の一本も 生えていない


地下深く

しかし 呼吸も 視界も

地上と 変わらない


そんな世界に 灰褐色の 骨が

地面に 転がっていた


誰が見ても わかる

人間の 頭蓋骨


顔立ちと 歯を見れば

性別が わかる


これは 女性だ


歯のすり減り具合から

若い女性と 判断する


そして 頭部の

おでこの あたりに

大きな傷を 発見


こればかりは

警察関係の 専門家の 領域だが

当てずっぽうするならば

農具で 思いきり

殴られたのだろう


傷の深さと 亀裂の長さ


即死であったことを 祈る



今は この事態を

どうするすべも 持っていない


このまま 置いておく他ないのかと

辺りを 見回した


カビのわいた オレンジが

ぐずぐずに なって

地面に 半分 埋まっていた



よく 考えたら

この人骨を 取り巻く 環境や

どれくらい 昔のものか

いつの時代の 人なのか

詳細を 把握するすべも なかった


やれ 歯のすり減り具合がと

うんちくを 垂れてしまったが

この島の 原住民が おやつに

硬い石のような 何かを食べる

というような 文化が あった場合


歯のすり減り具合や

欠け具合が 我々と違ったものになる


やはり 当てずっぽうでは

なにも わからないままなのか


機械が 鳴ってくれるのを

歩きながら 待ってみることにする


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