第10話 押しに弱い性格
夜な夜なの 悪夢の
解決方法の 一つに
心当たりのある 場所に 赴く
というものがある
家を 空けられないと言う
依頼人の 代わりに
私一人 近場から 足を運んでみた
彼女の 調べでは
男の一人が 身につけていた 服と
言葉の
それから 背景に映る 物資から 推測して
この山を 下りて すぐだと言った
すでに 日が暮れていたのだが
空が 赤らんでいたのだが
一人でも 減らしてほしいと
懇願された その上
お茶と お菓子を ごちそうになり
お手洗いを 二度も借りてしまい
断る気力と 立場が 奪われた
いつもは 依頼人からの
数ヶ月 かけながら
機械を 使って 調査する
今度の 依頼人は その手間を
正確な情報で 省いてくれるだろうか
本当に この山の下に
オレンジ畑が あったのだろうか
年中 肌寒い この独特な 土地に
根付くのだろうか
半信半疑だが
依頼人からの 絶対の自信による 裏付けに
背を 押されて
日が 落ちてゆく 空と
舗装されている とはいえ
だんだんと 見えづらくなってゆく 下り坂に
急かされながら
下へ下へと 足を 動かした
あ 蛇がいる
くねくねしながら 草間に 入ってゆく
やっぱり 明日にすれば と
後悔しても 遅かった
ここまで 下りてしまったから
やるだけ やってみる
黒いコートの 内ポケットから
リンゴの皮を 手早く剥くような
忙しない音が 聞こえてきた
つまみを 回さなくても
鳴るときは
その近くに 誰かの 思いの
こびりついて いるということ
ノイズ混じりに 機械が拾うは
歳とった 男の 声だった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます