第9話 夜な夜なの悪夢
彼女は 錆びついた コンロの
汚れたツマミを
何度も がちゃがちゃ回して
火を灯し
ついに お湯を沸かすことに 成功した
私は 目の前の ひび割れたテーブルに
お茶が運ばれてくるまでの あいだ
おとなしく 椅子に 座って待っていた
椅子は この一つしかなく
ご婦人を 立たせるままにするのも
アレなので
床での お茶会を 提案した
ご婦人は 大慌てで 首を横に振ったが
私から床に 座ってしまった
観念した婦人が 私の斜め向かいに
腰を下ろす
敷物もない 冷たいフローリング
お茶で 体を温めながら
しのぐしか なさそうだ
「お手紙は、読んでくださいましたか?」
私は
女性は 説明する手間が
ほっとしたようだった
だが この手紙の 内容については
もう少し 詳しく 尋ねなければ
私は 手紙に書いてある 男性陣の 名前について
尋ねることにした
「ええ、彼らから、私は大変恨まれております。会ったこともないのに……。どの殿方も、年代から計算するに、すでに亡くなられているはずなんですの。それなのに……」
女性は 疲れたような ため息 一つして
先を続けた
「私は夜な夜な、彼らからのひどい暴力に
この手紙に 切手がないのは
彼女の 金銭的な事情から なのだろう
親切な友人がいたものだ
山を 越えた先の
手紙一通を 運んできたのだから
よほど 彼女を 救いたかったのか
夢の話を 他の人にも 話したかと 尋ねた
「いいえ? どうしてそんなことを聞きますの?」
この手紙は 誰が 運んできたのかを
尋ねてみた
「どこかの、誰かさんですわ。私が窓枠に手紙を置いていたら、届けてあげると言われましたので、お任せしましたの。貴方への手紙を」
妙な話だ
その誰かさんは 山一つ超えて 手紙を運んだ
そこまでして 彼女から なんの見返りもなかったら
その誰かさんからも 恨まれていそうだと 思った
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