第4話 シスターに相談
シスターは 教会の懺悔室で
誰かの 罪の告白を聞いている
どんな罪かは たとえ警察でも 尋ね知ることはできない
そういう決まりだった
私は懺悔室の外から
ほとんど聞き取れない やたら明るい声で話す男と
シスターの返答している声を こっそり聞いていた
盗み聞きではない
シスターの手が いつあくのかを
計っていただけである
どのみち くぐもった声しか 聞き取れないのだし
けっして 盗み聞きではない
そろそろ 告白も一段落 着いた頃だろう
懺悔室の扉が 開いて
男が 出てくる前に
私は 椅子に座って ステンドグラスを 見上げていた
「おはようございます。お早いんですね」
そう声をかけられて 私は 軽く会釈した
明るい雰囲気の 青年だった
足早に去ってゆく その背を見送り
何事もなかったように 現れたシスターと 会釈をして
私の話す番がきた
「おはようございます」
私も挨拶を返したはず だが
いつだって自分の声は
よく覚えていない
なにを言ったかは 記憶しているのに
私の声は いつも忘却の彼方だった
シスターは 私宛の手紙を
熱心な横顔とともに 熟読していた
その目の動きが
何度も内容を 読み返している
その筆跡 言葉選び
投函主の人柄を 割り出そうとしているかに見えた
「大事なのは、貴方の気持ちですね。これを読まれたとき、どう思われましたか」
残念なことに 非常に興味を惹かれた と素直に答えた
すると彼女の 青色の目が 大きくなる
「この手紙を書かれたお人に、会いたいですか」
会いたいとは思わないが
話だけなら 聞いてみたい
そんな ややこしい気持ちを抱えていると 素直に答えた
「私はその言葉を、記録帳に記しておきますね。あなたが出かけられた日付も記しましょう。また、あなたが危険な目に遭わないように、ここで祈っています。もしも三日して、あなたが戻らなかった場合は、警察に連絡も入れますね。他に何か、私にできることはありませんか」
シスターは 私の気患いを すべて察することが できる人だった
この人に 任せておけば 自分に何かあったときに
本気で捜してもらえる
その安心感から 決心がついた
この手紙を書いた人物に 会いに行ってみようと
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