秋の雨が降れば猫の顔が三尺になる

 翌日も僕は彼女の部屋に出向いた。


「今日は外へ連れて行ってくれるのでしょう?」


 開口一番に彼女は言う。


「約束通り、空を見に行きましょう。」


 僕はそう答えた。


「楽しみですね。本当に楽しみです。」


 そう答えると彼女は着替えだした。


「ちょっと、やめてください。部屋を出ますので。」


 しかし、彼女は退室を許さなかった。


「いえ、ちゃんと見ていてください。この服を脱がすのはあなたの役割なのですから。」


 確かにそうだ。雨に濡れた服を脱がすのは僕がしなければならない。


「ブラジャーは普通のとフロントホックのどちらが好きですか?」


 そんなことを聞かれても困るのだが。


「この服は後ろで止めるの。手伝ってくれるかしら。」


 彼女の服のファスナーを上げる。


「スカートはこうやって止めるの。知っていました?」


 これはセクハラで訴えれば勝てるのではないか。


「それでは行きましょうか。空を見に。」


 僕は玄関のドアを開けた。今日も雨が降っている。


 

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