ようこそ〈セカイ図書館〉へ!
ご到着、おめでとうございます。ここは貴方の世界の外側に位置する〈セカイ図書館〉です。
俺は案内役の〈シシャ〉、
では、さっそくですが、貴方の求めるセカイについてお聞かせいただけますか?
――なるほど、異セカイをご所望ですね。
でしたら、セカイの渡り方は2つあります。そのセカイに住む者へと生まれ変わる〈転生〉か、今のままの姿カタチのまま渡る〈転移〉か。最近は概念が確立・浸透しているお蔭で、簡易の説明で済むのでありがたいです。
ちなみにですね、転移の場合は記憶の持ち込みが可能ですが、転生の場合は赤ちゃんからになるので、持ち込んでもすぐには思い出せないようになっています。近年、〈ビーダマ〉化のトラブルが絶えなくて……っと失礼、こちらの話です。
まぁ、そんな事情がありまして。今はまだ実験段階なんですが、渡り方に〈転身〉を追加しようとしています。ハッキリと名前は付いていなくても、概念としては確立し始めているようなので聞き覚えがあるかもしれませんね。
これは、転移と転生の中間のようなもので、現在の姿カタチをベースに、そのセカイに合うよう手を加えてから渡します。現在変更が可能なのは、年齢・性別・種族のみです。もし、容姿そのものを変えたいということでしたら、転生をオススメしています。
転生と転身の違いは、そのセカイの常識を教わるか学ぶか、ですね。赤ちゃんからの成長過程で教わり覚えるのと、途中から学び覚えるのとでは、当然、苦労の度合いに差がありますよね?
――知識や能力を授けてくれ?
あいにく、俺たちシシャにはそういった権限が無いんです。
――類似セカイの場合、ですか。何か心残りでもありましたか? はぁ、単なる興味。そうですか。
いわゆる
ただし、こちらは記憶の持ち込みがほとんどできません。というのも、経験してきたこと自体が大きく異なるために〝記憶の混濁〟が起きてしまうからです。
保護の観点から記憶を上書きするわけですが、何か成したいことがあるのでしたら、渡る際に強く念じれば、多少ぼやけてしまってもそれだけは持ち込むことが可能ですよ。
……まぁ、俺のところに来るのは異セカイ希望の方がほとんどなので、もし類似セカイを求めて此処に辿り着いたのなら、他のシシャのもとに現れたでしょうね。
さあ、望むセカイも決まりましたし、渡りましょうか。最後に俺からいいですか?
新たな旅路へのご出立、おめでとうございます。どうぞ楽しく健やかに過ごせるように願っています。
*
『Welcome to the World!』
それは耳には聞こえない
ここは貴方が求めし、貴方の為の、貴方だけのセカイ!
――ですが、アナタは
===
ようこそ〈セカイ図書館〉へ!
〔2019.03.29作〕
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