意思と役目を継ぎし者
おめでとう。そう祝うのは、彼がこの〈セカイ図書館〉に迷い込んできてから3度目になる。記憶が無いため〝仮の〟ではあるが、いわゆる誕生日というやつだ。
1度目は、ここでの名前と役目を得たことを。2度目は、〈ナナシ〉の身で消え溶けることなく無事に1年を過ごせたことを祝った。そして、この3度目は――
「でも、師匠。本当に俺なんかが〈シシャ〉になれるんですか? 〈ショーチョー〉の生成だって出来なかったのに……」
不安半分、期待半分の顔で
「問題なかろう。
「でも、
今度は
でもでもと、
「焦がれることに
だから、どうなったところで構わない。〈ナナシ〉たちのように消え溶けるか、そうはならずに残るのか。そもそも、前例のないことだから成功するとも限らない。
さすがに、
「さあさ、
神妙にうなずく1人と1羽を前に、
「無数のセカイを生み出す神々に乞い願う。我が名は
「シシャ
――対価はこの身、全てとす。
最後の言葉に、彼らがハッとする。疲れたと、気にするなと言ったのに、それでも
体が黒い膜に覆われていく。吹き荒れる空気の波に阻まれ、
またいつか、会えるときまで……さらば!
シシャの任、譲渡は成功した。予想外だったのは、奇しくも
永遠にセカイ創造を楽しめる、幸せだが閉ざされた結末。唯一の不幸は、外側の知識と記憶を持ったまま独り幽閉されたことだろうか。
それでも、まっさらで真っ暗なセカイに光を生み、
〈
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意思と役目を継ぎし者
〔2019.03.27作〕
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★カクヨム3周年記念選手権⑧「3周年」参加作
※再公開にあたり、終盤を加筆修正(2020.06.12)
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