セカイ創造のお供
『実は私のところにも1人、1年くらい前からナナシが居るのよ』
挨拶もそこそこに淡々と
詳しい発生条件は不明。分かっていることといえば、元居た〈セカイ〉の記憶を失っている――つまり自身の名前さえも覚えていないということだけ。
記憶が無いから望むセカイもない。帰してやろうにも、どのセカイから来たのかも分からない。
「いったい何をしたらそんなに残る?」
『何って……うーん、そうねぇ。名前と役目を与えたわ』
「たったそれだけか?」
『そう。きっと、寄る辺が無いと消えてっちゃうのよ。他のみんなは、そのまま放っておいて溶け消えるのを眺めては
これがなかなか楽しいのよ、と鏡の向こうで
儂もやってみよう。そう告げて、具体的にどう関わっているのかを聞いておく。
『記憶がなくても言葉は通じるし、不便は少ないわ。ただ、此処の概念まではさすがに1から教えなきゃいけないから、そこは少し骨が折れるかしら』
「ふむ。当然だろうな」
『今じゃ、弟みたいなものよ。
「あっはっは! 子どもも居ないのにか! いや、でもそれも悪くないな」
我が分身といえど、
ひとしきり笑ったあと、「ところで」と話題を変える。
「セカイ創造は進展したか?
『同じく。助手が出来ただけあって没頭できる時間は増えたんだけどねぇ……』
シシャになったとき一度だけ会った〈
「紙とペンと、少しの夢があれば。ねぇ」
2人で唸る。そんな中、鏡に
『
「では、ご
『セカイ創造には、こういうお供も必要よね』
「同意しかないな」
美味しい紅茶と菓子を食べながら、他愛ない雑談をして過ごす。このひとときは、なかなかに至福だ。
またその内。そう約束らしからぬいつもの約束を交わして、映し鏡の光を消した。
――少しの夢があればいい。
もし、今の
そうさなぁ。
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セカイ創造のお供
〔2019.03.17作〕
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★カクヨム3周年記念選手権④「紙とペンと○○」参加作
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