1971年1月 朱の記憶
暗闇の中の紅蓮。
幼い日の、朱い記憶。
一九七一年一月、某所。
夜闇の中、赤々と燃える炎は火の粉を巻き上げ冬の乾いた風に乗り、緑豊かだった森を焼き、山間の小さな村を呑み込んでいった。
「おとーさぁん! おかーさぁぁん!!」
「たもつ! ダメだ!」
「だって」
「ダメだ! 行ったらオレたちまで焼け死んじまう!」
「せいじは、お父さんたちを助けたくないの!?」
「たすけたいよ! 助けたいけど……っ、オレたちまで焼け死んじまったら、だれが父さんたちの仇をとってやれるんだよ!!」
真っ暗な夜空には紅蓮の炎が立ち上る。
まだ幼い少年達は、自分達が生まれ育った大事な故郷が炎に呑み込まれて消えてゆくのを黙って見ている事しか出来なかった。
「お前達は先に逃げろ!」と、火が及ばないこの場所へ逃げる事を教えてくれた父。
家族。友達。故郷の美しい風景。大事な思い出。
全てが燃える。
悔しさも憎しみも、全てをその目に焼き付けるのだ。
絶対にゆるさねぇ。今に、今に見てろ――!
紅い炎を瞳に映す少年は、その小さな胸に復讐と野望の誓いを刻み込んだ。
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