第7話 ダンジョンに挑んでみる。

想定外、どうしてこうなった?

スタンピード(集団暴走)。

私はダンジョンに入る前から生死の境にいた。


「お嬢様、もう駄目です」

「メルル、落ち着きなさい。問題などありません」

「そんなこと言っても、きゃぁぁぁ!」


ダンジョンから溢れた魔物達が砦に攻めてくる。

ゴブリンやコボルト、牙ウルフ、角うさぎ、ゾンビなどが襲ってくる。

メルルが悲鳴を上げている。

私は泣きたいよ!


時を戻すこと3時間前。

ダンジョン発見の為に魔爆弾を仕掛けて爆破すると、最初の土砂崩れで見事に的中した。


ふふふ、私のラッキーさに恐れを為すがいい!


などと思ったのは一瞬だ。

解放されたダンジョンから魔物が出るわ、出るわ!

それは見事なスタンピード(集団暴走)が発生した。


魔物は人を襲う習性がある。

私たちを見つけると一斉に襲ってきた。

数千匹の魔物が資材置き場に押し寄せる。

糞ぉ、ちゃんと砦を作ればよかった。


「すぐに絨毯爆弾を広げなさい」


絨毯爆弾は魔石と火薬を絨毯のように並べた爆弾マットだ。

一言で言ってしまえば、広域地雷。

狩りで使えないかと実験的に作られた試作品だった。


魔力を流すと仕込まれた魔石が大爆発を起こして、数百匹の魔物を一瞬で吹き飛ばしてくれた。


「エリザベート様」

「大丈夫よ。ただの魔力酔いよ。もう一枚はアンドラがやりなさい」

「はい、姉様」


陣地の前に絨毯を広げると、その上に魔物が通って襲ってくる。

アンドラが魔力を流すと大爆発を起こして再び数百匹が殲滅された。


「よし、魔物は怯んだ! 魔爆弾を投げ入れて、ファイラーをぶつけよ」

「判りました。爆弾ならまだまだ沢山あるぞ」

「投げ込め!」

「ファイラーを!」


試験用の絨毯爆弾は二枚しか用意しなかった。

ダンジョンを探す為に土砂崩れを何度も起こすつもりだったので魔爆弾を用意していたのが幸いだった。

ダイナマイトのような魔爆弾は大量にある。


「ははは、魔物がゴミのようだ。我が軍の戦力は圧倒的ではないか!」

「お嬢様、危のうございます」

「メルルもご覧なさい。魔物が飛び散る姿が壮観よ」


敵の勢いがなくなったところで、皆が飛び出してゆく。

レベル差もあって、一方的な蹂躙が始まる。

しかし、多勢に無勢。

間を抜けてきた魔物が資材置き場を襲ってくる。


メルルが悲鳴を上げる。

うるさいわ!

私が騒ぐのを止めるように言っても聞かない。

どうしてこうなった?


考えるのは後だ。

魔法銃の練習相手にしよう。

魔物はレベル1か、レベル2だ。

銃なしでも倒せないこともない。

でも、何千匹と襲ってくるのは恐ろしい。


何時間も悲鳴を上げるメルルもたいしたものだ。

耳が痛い。


「いい加減にその口を閉じなさい」

「無理ですよ」

「アンドラ様からもお嬢様に何か言って上げて下さい」

「無理ですよ。僕の言うことを姉様が聞いてくれたことはありません」

「そんなことはございません。次期当主のお坊ちゃまの安全を考えれば、ここは引き返すべきです」

「僕は次期当主である前に姉様の盾です。僕も無理矢理に連れて来られたことを忘れないで下さい」

「アンドラ様だけが頼りなのです。お嬢様に何かあってからでは遅いのです」

「そう言われても」

「判りました。メルルが私のことを案じてくれているのね!」

「お判りいただけましたか!」

「この魔法銃を貸して上げます。敵を撃って少しでも減らしなさい」

「どうしてそうなりますか!」

「この銃で私を守りなさい」

「無茶です。それに金貨1枚もする銃弾を撃つなんて恐れ多いです」

「そうですが、メルルは我が家の財政を心配してくれるのですね。メルルに感謝を!」

「ご理解して貰えてよかったです」

「外した分はメルルの給与から引きます。安心して打ちなさい。シャルロッテ、手伝いなさい」

「畏まりました」

「お嬢様!」

「メルル、早くおやり!」

「しくしく、意地悪です」


私もいつ終わるか判らない攻防に少し苛立った。

メルルをからかって気を晴らした。

おかしい?

マリアはこのダンジョンをレベル20が一人しかいない新人冒険者パーティと一緒に攻略した。

割と楽なダンジョンだったと思っていたのに!


スタンピード(集団暴走)とは。


ははは、不幸運も強いのかしら?


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