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身体の緊張は、車窓の向こう側に吹き飛ばされてしまったのかもしれない。
昼下がりだった。いつもは用事がまったくない路線の電車に揺られながら、見慣れない窓の外を見て、茅島ふくみは大きな欠伸をした。車両には誰もおらず、彼女とチームメイトの二人と親友、合わせて四人だけを乗せて走っていた。
これから任務に向かうというのに、張るような気がない。それを茅島ふくみは、良いとも悪いとも思わなかった。機械化能力者と呼ばれる、身体に搭載した特殊機能を用いる連中が起こす犯罪を制圧するのが、彼女たちの主な任務だったけれど、たまに実地調査のような仕事を振り分けられることもあった。上層部の気を使った采配のせいだろう。
今日は楽できそう。少し忙しい日々が続いた茅島ふくみは、柄にもなくそんなため息を吐いた。ふざけるほど手を抜いたり、過剰に張り切ったりもしない彼女だったけれど、今日だけは行楽のような気分だった。
「あと、何駅くらいですか?」
隣に座っている親友、加賀谷彩佳がふくみに向かって口を開いた。彼女はチームメイトというわけではなく、単にアルバイトという扱いだったけれど、近場であれば何処へでもついてくる、単なる学生だった。
ふくみらの所属する施設の人間とは違って、髪はいい具合の長さで切りそろえられており、服装にも気を使っている。大人しい彼女によく似合っていた。ふくみは、会う度に彩佳を可愛らしいと感じていた。
「もう二駅ほどかな」
と、ふくみではなく向かいに座っている八頭司美雪が答えた。彼女はふくみと同じチーム『戦慄』のメンバーで、頭を金色に染めた素行の悪そうな女だった。年齢は十代を終えたところだとも言われるが、尋ねたことはなかった。頭の色の割に、派手すぎない動きやすい服装を好んでいる。
「あ、もうすぐなんだ」
「うん。複雑な路線じゃなくて助かったね」
「本当ですよ。結構下調べしたんですけどね」
ともうひとりのチームメイト、精密女(本名不詳)が口にした。彼女は誰もいないのを良いことに、車両内をうろうろ歩き回っていた。長い髪は結んでおり、大人びた装いを好むが、行動は子供みたいだった。一応最年長だと本人は自称しているが、本当かどうかは定かではない。彼女の最大の特徴である、機械化された剥き出しの両腕も、変に人目に触れる機会があるからと、今回は分厚い長袖と手袋を着けさせられている。
車窓にスライドしながら映る、草や木や古臭い家屋を眺めながら、ふくみは今回の任務について思い出す。
この話を聞いたのは、つい数日ほど前になる。
田舎の住宅街へ行ってくれ、と単刀直入に説明を受けたのを覚えている。彼女らの上司に当たる女が言うには、その住宅街が機械化能力によって、非常に不健全な状態にあるらしいことを突き止めたという。それを止めさせる、もしくは原因となる機械化能力者の機能を判明させて報告する。それがチーム戦慄に課せられた主な任務だった。
不健全、という部分については、詳しくわかっていないと上司は答えたが、別にいつものように人が殺されているわけでも、警察が介入するような事件というわけでもない。さらに言えば、犯罪が多発している都市部での任務でもなかった。
大したことはないかな。
油断だな、と自覚はしながらも、ふくみは肩筋を張らなかった。簡単だとは思ってはいない。だけど、難しさを感じなかった。いつもどおりやれば、そう難航はしないだろう。
そして、こんな任務でも、いや危険ではないこんな任務だからこそなのか、アルバイトの彩佳まで同行している。
「来なくても大丈夫だったのに」
一緒に来られて嬉しいとは思った。だから嫌味たらしくならないように、ふくみは口にした。
彩佳はそれでも、微笑みながら答えた。
「いえ……仕事に慣れておきたかったので、私が頼みました」
「まあ……慣れるには、丁度いいかもね……」
そうだ。簡単だ。彩佳のための任務だと思うことにした。旅行みたいなものだ。彩佳と旅行なんて、そういえば記憶の上ではまだ行っていない。
考えながらふくみは、自らの足元を眺める。
過剰だったかもしれないほどだが、護身用にスパイクシューズを履いてきていた。山林作業用だ。それなりに値段もした。
これが役に立つような時が、来なければ良いのだけれど。
電車から下りると、吹き飛びそうなくらい小さな駅だった。
片田舎という言葉がよく似合っている。彩佳の現在住んでいる街に比べれば、悲しいくらいに何もなかった。ひょっとしたら、百年前から変わっていないのかもしれない。
ここからほど近いところにある、家屋やアパートが立ち並ぶ住宅街から道路を挟んで向こう側に突き抜けていくと、今回の現場である
駅周辺からパン屋、歯科医、小さなアパートが乱立する一角を抜けると、田んぼと倉庫に挟まれた細い道が見えてくる。地図によれば、ここから晴堀町になるらしいが、目の辺りにしても信じきれなかった。
「ここなの?」
先頭を歩いていたふくみは、後ろを向いて八頭司美雪に尋ねた。彼女は地図と電柱とを見比べてから、いまいち決まりの悪そうな顔を浮かべてはいたが、答えた。
「そうみたい」
真っすぐ伸びた道。左右には田んぼ、倉庫、アパート、アパート、マンション、一軒家、一軒家……。そんなものだけが目に入る。町と呼ぶことすら、心もとない。
「目的地は、ここから遠いんですか?」
土地については何も気にしないで、精密女が美雪に尋ねた。
「えっとね……十分くらいかな。お寺だからすぐわかると思うけど」
施設の方から既にアポイントは取ってあった。寺があるから、直接そこに来てくれという指定だった。不健全な状態、と言う割には意外にも話は通じるらしい。
ふくみが躊躇いもなく足を踏み入れる。三人がそれに続くと、彼女たちは何かを感じ取ったみたいに歩みを止めた。
「どうしたの?」
また振り返って、ふくみはそれぞれの顔を見つめながら訊いた。彼女の機能である超高性能な聴覚でも、なにも変化は感じ取れていない。
美雪は少しだけ恍惚感を箸で摘んだような表情を浮かべて、つぶやく。
「なんか……懐かしい。死んだおばあちゃんの家の近くみたいな感じする……」
「美雪、このあたりの出身だっけ?」
「いや、違うけど……なんか、思い出した、今、不意に」
「ええ……確かに」精密女までそんな事を言い始めた。「ずっと忘れていた記憶を無理やり思い出したような感覚です。風景と土の臭いのせいでしょうか」
ふくみは見回した。やはり単なる住宅街という感想しか浮かんでこない。臭いも、ただ都会では嗅ぐことのないタイプだった。それ以外に、特筆するべき点はないはずなのに。
「なによ。ただの田舎町じゃない」
「でもなんか、懐かしいです」
彩佳が、申し訳無さそうに口にした。田畑を、愛おしそうに眺めていた。
「知らない場所のはずなんですけど……どうしてでしょう」
「変ね。町に何もおかしなところはないと思うけど……」
「それは……茅島さんが記憶喪失だからじゃ……」
「あ、彩佳、酷いんだー」
「ええ、あ、ごめんなさい」
自分に過去の記憶が存在しないなんて、口にするほど気にもしていなかった。記憶を失う前の自分を知っている彩佳とも、こうしてずっと仲良くしていた。何か問題があるとは思えなかった。
だけどこの感覚を、人と共有できないのは素直に残念だった。自分だけが、ドレスコードを間違えたときみたいだった。
聞けば、彩佳の実家も似たような作りだと言った。
懐かしさか。
確かに、ここ数ヶ月より過去の記憶がない茅島ふくみにとっては、そんな感情は無縁だ。けれど、その感覚を楽しんでいるのか少し惚けたようになっている彩佳を見ていると、また可愛らしいと思ってしまった。
懐かしさのことは理解できなかった茅島ふくみだけれど、この町並みの珍しさくらいはわからないでもなかった。古臭い住宅が乱立しており、その脇を電車が通り、遠くでは未だ開発されていないかのような森林が見て取れた。
彼女の特殊な耳も、町の音を捉える度に驚くようだった。車通りが極端に少ないだけで、こんなにも辺りが鮮明に聞こえるのか。虫の声や鳥、木々の揺れる音すらも、掌の上で転がすみたいに把握できる。一軒家の中に人がいて、何をしているのかだってわかってしまう自信さえあった。
近くに住んでいるのなら、たまの散歩に立ち寄ってみても良いとさえ思う。
少し進んだ所に、件の寺が見えてくる。大きな屋根の木造建築。周囲を塀で囲まれていて、入り口の門は開かれていた。住宅地の真ん中にこんな寺があるなんて、かなり浮いているような気がしたが、そもそも寺自体を彼女は見たことがなかった。
「えっと、うん。これだね。間違いないよ」
屋根の上の方まで見上げながら、美雪が言う。
「インターフォン、押すよ」
「ええ、お願い」
美雪は、門についていたインターフォンで呼び出した。
待っている間にふくみは観察した。
寺。別に、なんてことはない。不健全さの欠片も感じられない。立ててある掲示板には、ありがたい言葉が書かれている。『あなたが洗い流されます』。意味はよくわからない。紙の新しさから推測すると、この言葉は週に一回程度の頻度で更新されるようだ。
「彩佳は、お寺って来たことある?」
ふくみの近くでぼーっと立っている彩佳に話す。
「ああ、はい。実家の近くにありましたから、時々、法事なんかで」
「街中じゃ、てんで見ないわね」
「まあ、最近は、葬儀も簡素ですから……」
話していると、中から男性が出てきた。彼は印象にすら残らない挨拶を済ませると、ふくみたちを招いた。とりあえず、敵意がないらしいことを確認すると、ふくみたちは従った。ここで喧嘩を売ったって、何の意味もない。
通されたのは、本殿だとか言う部屋だった。畳の上に、いくつかの椅子が並べられていた。ここに腰掛けろという指示だろう。ふくみたちの人数分の椅子が揃っていた。
「ねえ。なに、あれ」
座るよりも前に、珍しそうな顔をして美雪が指した。ふくみも、最初に入ったときから、気にはなっていたが、寺なんてそういうものだろうと思っていたが、美雪の様子を見るとどうも違うようだった。
大きなタブレット端末が、中央、柵に囲まれて置かれていた。何も表示されていない。町民は集まって、ありがたそうにこれを崇めるのだろうか。なんだかよくわからない世界だな、とふくみは内心で呟いた。
それにしても大きい。高さは二メートルを超えるだろう。映画を流すのが、一番最適な使い方なのではないだろうか。
「へえ。大きいですね」精密女が座ったまま言った。「このサイズだと、結構値段もするでしょうねえ……都会のショップですら売ってませんよ。オーダーメイドでしょうね」
「あれも法事とやらに使うの?」気になって、ふくみは尋ねた。
「見たことはありませんけど、ええ、おそらくは……」
「ねえ、茅島さん」
隣に行儀よく座った彩佳が、口を開いた。
「これから会う人って、どんな人なんですか」
「ああ……まだ説明してなかったっけ」ふくみは長い髪をいじった。「この晴堀町で唯一とされる機械化能力者よ」
「じゃあ、その人が犯人……?」
「まあ、それをこれから判断するんだけど」
声がした。
「お待たせしました」
音もなく障子を開けて、女が一人現れる。
写真で見た通りの風貌だった。
彼女が、目的の人物。
「九曜ルノミ、と申します」
ルノミと名乗った女は、墨で字を書くくらい丁寧に頭を下げた。
真っ白い頭に、かなり小柄な体格。小学生かと見間違えそうだったけれど、顔つきは大人びている。つまり、年齢はよくわからない。ブワブワとした純白の和服を着ていて、頭には花をモチーフとした子供のような髪飾りが目立っていたが、それが妙なくらいに似合っていた。
顔立ちは整っているが、不気味な女だ。にこにこした表情を崩さないのも、変な気持ちになる。
ふくみたちが挨拶を返すと、ルノミは跳ねのような軽々とした動作で、ふくみたちの目の前の床に腰を下ろした。
「本日の要件は、なんでしょう?」
ルノミは首を傾げながら尋ねる。
ふくみが代表して答えた。
「この町の調査に来ました。既にお伝えしていると思いますけど」
「ええ、聞いていますけど、でも、どうして?」
ルノミはふくみをまっすぐに見据えた。
腹の底が、くすぐられて気持ち悪くなるような瞳だった。
本当に、なんで調査の手が入ろうとしているのか、何も理解していないらしい。
「どうも、この町は機械化能力者のせいで、非常に不健全な状況だと聞いたもので、その詳細を調べに来ました」ふくみは思い出しながら口にする。「数日ほど前にここから逃げたという男が、
「不健全って……なにもありませんよ、ここには」
そうはっきり言われると、ルノミの背後にある巨大なタブレット端末が、嫌でも気になってくる。彩佳も同じだったようで、じっとその方向を見つめていると、ルノミが気づいた。
「ああ、これに興味があるんですか?」服装を褒められた時くらい嬉しそうに、ルノミはタブレットに指を向ける。「御惨那さまですよ、これは」
「お、御惨那さま?」美雪が首を傾げた。「なんですかそれ」
「晴堀町の御神体です。町のあちこちに、小型の御惨那さまも設置してあります。この町を守ってくれてるんですよ」
ルノミは立ち上がって、そのタブレットに触れた。
すると画面が点灯して、そこには奇妙な模様が浮かんでいた。幾何学のような、見ていると目が回りそうになってくる。
「へえ……そうなんですか」
美雪と彩佳は、御惨那さまを興味深そうに見つめていたが、茅島ふくみにはなにが良いのかさっぱりわからなかった。
その後も、晴堀町についてをいくつか尋ねたが、ルノミに隙はなかった。事件の核心のしっぽさえなかなか掴めないでいた。
埒が明かないな……。
そう思ったふくみは、ルノミとの会話を精密女、八頭司美雪に任せて、トイレに立つふりをして、寺の内部と隣の母屋を調べに行った。
悪いとは思ったけれど、まあ軽く調査をするだけだ。この後本格的なものは、住宅街で行うとして、少しルノミに感じている奇妙な感覚をはっきりさせたかった。
あの底が知れない女の人間性を知りたかった。
寺の内部は、簡素な作りだった。本殿の他には、なにかに使うだろう小部屋がいくつかあるだけだった。そこにも怪しい部分はない。麻薬の一つでも見つかれば、話も早かったのだろうけれど。
続いて隣の母屋。住宅街によく建っているものと、似たようなタイプの一軒家だった。耳で確かめるが、中は誰もいないようだ。ルノミが普段ここで生活をしているのかどうか、それは定かではなかったけれど、どうやら誰かがここに住んで使われてはいる。
ノブに手をかける。開かない。施錠されていた。電子ロックではない。大昔に普及した、アナログ式だった。こんなのは、あまり見かけるものでもない。鍵はきっと、ルノミが持っているのだろう。
庭に回って、窓を覗き込んだ。まるで泥棒みたいで、少し気が引けた。
別に、忍び込もうってんじゃないのに。ふくみは罪悪感を覚えた。
カーテンは敷かれていない。
覗き込む。
そういえば、
ずっと嫌な予感はしていた。
勘とか、耳が無意識に捉えた違和感だったのだろうか。
覗いたその部屋には、
死体が転がっていた。
「え…………」
声を漏らすふくみ。
死んでいる? 死体だと頭は判断していたが、よく見るとただ眠っているだけなのかもしれない。窓を開けようとするが、ここも施錠されていた。
耳をガラスに当てる。
静かだ。呼吸の音も聞こえない。
――死体。
間違いなく、そこで人が死んでいる。年の頃は、高齢の男性。近くに薬瓶が落ちていて、中の錠剤がこぼれている。それが死因なのだろうか。周囲には他に、凶器となりそうなものもない。
死体は、本棚とテーブルの間に、眠るように転がっていた。
入り口も、見える範囲では、固く閉ざされていた。
つまりは密室?
とにかく……精密女達に知らせないと。
ふくみは急いで彼女たちのもとへ戻る。道順は全く単純だった。一分もかからずに、元の部屋にたどり着いた。
「あら、おかえりなさい」緊張感のない言葉を精密女は投げかける。「長かったですね」
「……聞いて、死体を見つけた」
ふくみが簡素にそれだけを言うと、美雪と彩佳は驚いた。一方で精密女はまるで表情を変えないで、仕切り直るようにルノミを見た。
「母屋の、角の部屋よ」ふくみは続ける。「九曜ルノミさん、今すぐ警察を……」
「あら、どうして?」
ルノミは、
死んでいるという意味すらわかっていないみたいに、そう答えた。
「どうしてって……亡くなってるんですよ? 人が……。あの人は誰ですか? 母屋に住んでいる高齢の男性です」
「え? 知りませんよ。死んでいる? 何でしょう、それ。誰も、死んでなんかいませんよ」
「とぼけないで」ふくみは詰め寄って、ルノミの肩を掴んだ。「警察を呼ぶか、今すぐ母屋の鍵を開けて」
「嫌ですよ。どうして?」
「ルノミさん」精密女が刺すように口を挟む。「さっきからあなた、何を隠したいんですか?」
はあ、とルノミはため息をついて、首を振った。
「もう。なんなんですか。死体があったからって、どうだって言うんですか?」
そこまで発すると、
ルノミは口を開けて、舌を出した。
何?
その先には、ピアスが刺さっている。
こんな女が、意外なファッションだな、と考えていると、
なにかが起こった。
「ああ…………!」
急だった。ふくみを除いた三人が、うめき始めた。
様子がおかしい。
「彩佳!?」
呼ぶ。
彼女は、いや、彼女だけではなく美雪だって精密女だって、
頭を抱えて泣いていた。
ルノミから手を離して、彩佳に駆け寄った。
「どうしたの、彩佳! みんな!」
彩佳の目は、何処も見ていない。
ルノミに向き直る。
この女が、なにかやったんだ。
「あら? あなたは、どうして……?」
ルノミがふくみを睨んで、呟く。
近くの障子が開いた。
そこからは、町民が数人入ってきた。
「どうしました?」
「こいつらが、なにかやりましたか?」
「なんだ、お前たち」
町民はそれぞれ、ルノミに言う。
全員が明らかに、ふくみたちを敵視する視線を向けて。
しまった。
このまま取り押さえられたら……。
「逃げなさい!」
苦しげに、精密女がふくみにそう叫んだ。
ああそうだ、その判断は大いに正しかった。ここは一旦引くべきだ。正体不明の攻撃を受けている以上、長居は愚策だろう。この人数の町民も、精密女が何もできないなら、力でどうこうする術はない。
入り口に立っていた町民を突き飛ばして、全力で外に向かって駆けた。町民は身体を、近くの棚にぶつける。
「捕まえて!」
ルノミの声。
逃げろ。
しかし、腕を引っ張られて、そのまま羽交い締めにされる。
その際に、何かを首筋に注射された。
ちくりと、痛み。
「あ……!」
なんとか振りほどいた。
ふくみに真っ当な戦闘能力はない。一方で脚力には自信があった。
逃げるんだ。
寺の敷地を抜けた。
逃げるのは得意だった。
だけど、彩佳を置いてきたことが、何よりも辛かった。
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