~承~
家庭教師生活三日目……
相変わらず今日も王女達は元気だ。元気過ぎて困っちまうくらいだよ。
ちなみに家庭教師の仕事の方は…………まったく進んでいない。
「――――おいお前ら、いい加減離れろよ? 勉強する気あんのか?」
「先生の言う通りよセレス? 早く離れて勉強しなさい?」
「ミスティこそ少しは勉強したほうがいいです、剣を振るうだけではダメだと思いますよ?」
家庭教師の内容は、こいつ等に剣術と魔術を教える事だ。
……だけどこいつ等ときたら、片方に指導している時に二人きりにさせるのが嫌なのか、自分の分野でない時も常に俺の傍にいたがる。
こう見えても俺はモテるんだぜ? 童貞だけど……
こいつ等の気持ちに気づいていない訳じゃない。でも危険な所を救われたっていう強烈すぎるスパイスによって、感覚が麻痺しているだけだ。
「おいミスティ、セレス! 喧嘩ばかりして全然捗らねぇんだよ!? 明日からは個別授業にするぞ!?」
「あ……ミスティって呼んでくれた……これで二十三回目……」
「私は二十五回目です。個別授業……素敵です……」
その時ミスティの表情が変わったのを俺は見逃さなかった。
セレスが惚けて何かを空想し始める反対側で、悲痛な顔をしたミスティの腕から込められる力が強くなった。
「……先生……私の方が二回も少ないのはどうして? ……先生は私の事が嫌いなの……?」
今にも泣きそうな顔をするミスティ、名前を呼ばれた回数なんてそんな重要かよ!?
ともかく、女の涙は苦手だ……なんとかしないと……
「き、嫌いな訳ないだろ? ミスティ、ミスティ、ミスティ……ほら、これでお前の方が一回多いぞ?」
そう言ってやると、さっきまでの悲痛な表情はなんだったのやら、恍惚の表情をするミスティ。
一段落……そう思っていたんだが……
「シュバルト先生……どうしてミスティばかり贔屓するのですか……? もしかして、私の事……」
「だぁぁぁぁぁぁ!? そんな事ないよ? だから泣かないで? 先生困っちゃう……セレス? ほら、これでミスティと同じ回数だろ?」
その言葉に大粒の涙を零し始めてしまうセレス。
何故だ!? 俺は何か…………あ……
「ご、ごめんセレス! あれはその……アレを呼んだんじゃなくて……その……固有名詞? ……というか……」
困惑しながらセレスに顔を向けると、もう涙が引っ込んでいた。
少し赤く腫れた目元が、何故か彼女の美しさを引き立たせる。
しかし……めんどくさい……。呼ばれた回数が一回多いとか少ないとかで……
「お前達……そんな事で張り合うな……。もし張り合い続けると言うのなら……もうお前達の事は名前で呼ばんからな?」
その言葉に彼女達は慌てて停戦協定を結び始める。
今日もほとんど授業なんて出来なかった……
決めた、明日からは本当に個別授業にしよう。
―――――
家庭教師生活十日目……
今日はお休みな為、ノンビリと与えられた自室に引きこもっている。
あれから個別授業を取り入れたのだが……大変だった……
部屋でセレスと魔術について学習していると、微妙に開かれた扉から覗き込むミスティの姿があった。
ただ覗いているだけならまだいいさ、問題なのは彼女から殺気が向けられていた事。
恐らくセレスに向けられた物だと思うが、殺気の出し方を知らない彼女は誰彼構わずに殺気を振り撒くものだから、気が気でなかった。
逆もしかり。ミスティに剣術の稽古をつけている時は常にセレスの視線を感じる。
本人は隠れているつもりだろうが、俺に取っちゃバレバレだ。
ただ俺を見てるだけならまだいいさ、問題なのは彼女から殺気を向けられていた事。
剣術の稽古だ、ミスティの手や腰を取って指導するのは仕方のない事だ。
ミスティもいちいち反応するもんだから、その度にセレスから尋常じゃない殺気が向けられて、気が気でなかった。
こんな状態が何日も続き、注意するが治まらなかった。
そのため俺は、最終手段に出るしかなかった。
家庭教師の現状と問題点を報告したのである。セリーヌ王妃様に。
それからは凄かったな……報告をした瞬間の部屋の空気。
王女達の顔は引きつり、ゼレイス王はそそくさと部屋を退室して行った。
「……貴女達……シュバルト様は貴女達の先生ですよ? 何故言う事が聞けないのですか? ……仕方ありませんね……今日の授業はお休みです。私の部屋に来なさい」
凄い圧だった。
第四魔境の魔獣が可愛く見えたぜ……世界は広いと思い知ったよ……
その日の夕飯時、目を真っ赤に腫らした二人の王女達が俺の元までやって来て、今までの事を謝罪し始めた。
よほど怖い目にあったのか、何かに怯える様に頭を下げる姿が印象的だった。
なにはともあれ、これで平穏な個別授業が行える。
俺の授業がない日は帝王学などを学ぶらしい。王女も大変だね……
「――――ところでお前ら……いつまでここに居るつもりなんだ?」
俺の目の前には、二人で仲良く書物を読んでいる王女達の姿があった。
双子のせいか、とても仲が良さそうに見える。いつもはあんなだが……
作り物のような美しい顔、きめ細かい金髪、そう大人しく書物を読んでいる姿は神秘的で、まさに深窓の令嬢と言った感じだな。
「先生、今日はお休みですよね? どこか遊びに行きましょう!」
「シュバルト先生……私、先生とお出かけしたいです……」
声を掛けると、待ってましたと言わんばかりの勢いで遊びに連れ出そうとする二人。
「……どこかって……俺この国知らねえし、そもそも王女が簡単に外に出られるものなのか?」
「私が案内します! ……本当はダメなのですけど、よくナタリアに連れ出してもらっていました」
「私も案内致します。シュバルト先生と一緒であればと、お父様達も許可して下さるはずです!」
せっかくの休みなのに面倒だな……
だがこいつ等の期待に胸を膨らませている様子……
はぁ……頼まれちゃ仕方ねぇか……
―――――
家庭教師生活十四日目……
今日はミスティに剣術の指導を行っている。
正直、王女様に剣なんて扱えるのか? と思っていたが、それは最初の稽古で覆っていた。
「――――っふ! やぁぁぁ!!」
「踏み込みが甘い! そんなんじゃ態勢を崩してしまうぞ? 早く剣を振る事より、しっかりと大地を踏みしめる事を意識しろ!」
確かに彼女には素質がある。
あまり人間と剣を交える事は少ない俺でも分かる。
「っっはい! 先生っ!! ――――たぁぁぁ!!」
鋭い剣先、迷いのない軌道。剣に重さはないが、そんなもの彼女には必要ない。
まるで踊っているような彼女の剣技は、ワザと隙を見せた場所へと的確に迫って来る。
「そうだ、地に足をつけ剣を振るえ! 視線を剣に落とすな! 真っすぐ相手の目を見るんだ、剣を体の一部としろ!」
彼女は呑み込みが早い。この前比べる為に騎士長って奴と模擬戦してみたが、彼女はそれに劣っていない。
「――――よっし、そこまでだ。少し休憩にしよう」
玉の汗を作っていたミスティにタオルと水を渡してやる。
汗を拭いつつ喉を潤すその姿は、とても美しく見える。
「先生、私の剣……どうですか?」
「あぁ、どんどんよくなってきているぞ? もう少しで騎士長にも届くかもな?」
その言葉にミスティは嬉しそうにはにかむ。
そして何か物欲しそうな顔で俺の目を見つめてきた。
「……あの……じゃあいつもの……ご褒美は……」
恥ずかしそうに目を逸らしながら言うミスティ。
まったく、いつもベタベタくっ付いて来るくせに……なんでこういう時は恥ずかしがるかな? ――――可愛いじゃねぇか!!
「……ほらよ」
ミスティの頭をガシガシと撫でてやる。凄く綺麗で触り心地のいい髪だ。
俺の方がご褒美を貰っているぜ。
ミスティは嬉しそうに目を細め、少しだけ恥ずかしそうに微笑むのであった。
―――――
家庭教師生活十八日目……
今日は朝早くからセレスと魔術のお勉強会だ。
まったく……朝起きたらもう部屋の前で待っていやがった。
俺が起きるのを黙って待っているのが、セレスらしいと思う。
「――――つまりだ、人によって属性には得意、不得意があるが使えない訳じゃない。その気になれば全ての属性魔術を扱える」
「でもシュバルト先生、私は炎の魔術が上手く構成出来ません。宮廷魔術師の方には、素質がないからだと言われました」
「それは間違いだ、属性に素質なんて関係ない。関係あるのはその魔術を如何に理解しているかという事だけ。……まぁ人によって魔力の量に違いはあるけど、セレスには関係ないしな」
セレスの魔力、それは明らかに異常だ。
自慢だけど、俺だって魔力には自信がある。どのくらいかと言うと、本気を出せばこの国なら一瞬で消し飛ばせるほどの魔力を有している。
だが、セレスの魔力はそんな俺をも遥かに上回っている。
この魔力には人為的なものも感じるが……俺は関わるつもりはない。
「まぁ基本は得意な属性を伸ばせばいいよ、他の属性は余裕があればって所だな。――――そして最も大事なのは魔力制御だ。魔力が多かろうが少なかろうが、制御から離れ暴走した魔力は大きな被害をもたらすからな」
魔力暴走は珍しい事ではない。己の力量を超えた魔力を制御しようとして、失敗した奴を沢山見てきたからな……
「はい! 分かりました、シュバルト先生!!」
さて、そろそろいい時間だな。今日はここまでとしようかな?
「……あの……今日の講義は終わりですか? 終わりなら、その……ギュっとしてもいいですか……?」
潤んだ瞳で俺を見上げるセレス。
不安そうな目は子犬のようで、庇護欲をそそられる。
まったく……何処でそんな仕草を覚えてきたのかな? ――――可愛いじゃねぇか!!
「……少しだけだぞ?」
その言葉にセレスが胸に飛び込んでくる。発展途上の胸が押し付けられる。
俺の方がギュッとしたくなるぜ。
セレスは俺を見上げながら、満面の笑みで微笑むのであった。
―――――
家庭教師生活二十六日目……
今日は久しぶりの合同学習だ。
内容は二人が力を合わせて、俺に一撃を与える事。
前衛のミスティ、後衛のセレス。バランスはとてもいい。
うまく連携すれば、俺に攻撃を届かせる事も不可能ではない。
今日は城にある大きな演習場に来ている為、観客が多い。
大勢の騎士達にメイドのナタリア、騎士長であるルクルーゼ、それとなんとか大臣の……なんとかもいる。
その中には娘の成長を見ようと、ゼレイス王やセリーヌ王妃の姿もあった。
「ギャラリーが多いけど、緊張する事はないぞ? いつも通りにやれば問題ない」
「「……はいっ!!」」
「ミスティ、相手の動きを読み、一手二手先を取れ。セレス、今回俺はお前を攻撃しないから焦る事はない、落ち着いて魔術を構成しろ」
「「はいっ!!!」」
二人の表情を見るに、リラックスしているみたいだな。
……やべ、俺が緊張してきたかも……
「では――――始めっ!!」
ルクルーゼの掛け声で模擬戦がスタートする。
俺はこの場を動くつもりはない。まずは俺を動かしてみせろ。
「たぁぁぁああ!!」
合図と共にミスティが迫り、様々な角度から俺の急所を狙って来る。
狙いは悪くない。今回俺は一切隙を見せていないが、俺の死角から、刀を持つ右手とは逆の左からなど、緩急をつけて剣を振っている。
「――――アイスランスッ!!」
ミスティの体で死角となった方向から、セレスの放った氷の槍が飛んでくる。
俺の足を狙ったようだ。足を負傷させ、機動力を奪う戦術は悪くない。
「やぁぁぁぁぁ!!」
片足を上げ回避を行った俺に、すかさずミスティが斬り込んでくる。
俺の態勢が崩れたと思ったのか、先ほどまでと違い攻撃が雑だ。
狙いは逸れ、剣は地に撃ち付けられ砂埃を上げる。
「……ミスティ、教えたよな? 敵の隙は誘いの隙かもしれない、ワザと誘いに乗るにしても、焦れば乗った意味がなくなるぞ?」
「もちろん、覚えています! ……先生は今、私の攻撃が取るに足らない物だと考えて見過ごしました。――――それが隙です!」
「フレアサークル!」
セレスの魔術名を聞いた俺は、慌てて地面に撃ち付けられた剣先を見る。
いつの間に用意したのか、剣を伝って地面に流れ込んでいる鈍い色をした液体。
この匂いは…………油か!?
俺は後方に回避せざるを得なくなる。セレスの魔術が油に引火したら、魔術不使用としたハンデを付けている俺では対処出来なくなる。
この攻撃を回避し仕切り直し……と思ったが、後方に飛んだ俺の足が何かを踏む。
砂地とは違う感触に違和感を覚えた瞬間、俺は大きくバランスを崩してしまった。
「なっ……!? ……氷!?」
俺が踏んで足を滑らせたのは、最初にセレスが放った氷槍の残氷であった。
偶然……じゃないよな。
偶然ではなかった。その証拠にミスティは焦った様子もなく、即座に駆け寄ってくるのが見える。
そして何故かフレイムサークルは発動していない……不発か? ともあれミスティの攻撃を回避しなくては……
俺は体を強引に捩じり、ミスティの剣を自分の刀で受け止める。
危なかった……セレスの魔術が発動する気配はない。仮に今発動したとしても余裕を持って回避出来る。
「……やるじゃないか? 少しヒヤッとしたぞ?」
「……先生、まさか防ぎ切ったと思っていますか?」
その瞬間、ミスティの背後に何かの気配を感じる。
「――――えぇぇぇぇいっ!!!」
「なっ!? セレスっ!?」
やるじゃないか? ……予想してなかったぜ。
避けられなくもないが……それは反則かな?
――――ッゴン!!
セレスの杖が俺の頭にクリーンヒットする。
一撃を与えられた……それも致命の一撃を……
「……まさかセレスが魔術じゃなく物理で来るとは……予想してなかったよ……」
「そっ……そこまでっ!!」
ルクルーゼが試合終了の合図を出す。
結果は言わずもがな……俺の完敗だ。
「素晴らしいぞ我が娘達!! あのシュバルトに一撃を与えたのだ! 皆の者、王女達に賞賛を!!」
刹那——割れんばかりの拍手と喝采が二人を包む。
二人は顔を真っ赤に染め、俺の背中へと隠れてしまった。
誰も彼も、その微笑ましい王女達の様子に笑顔が零れていた。
「うぅぅぅぅ……恥ずかしいよぉ……」
「シュバルト先生、どうでしたか? 私、頑張りました!」
「あぁ!! 良かったぞ? 数日前には考えられない動きだった! ……ミスティも、顔を俺のケツに埋めていないで……見ろよ? 皆お前達を祝福してくれて――――」
――――俺は確かに見た、見てしまった。
演習場に来ていた全ての者が、二人に惜しみない賞賛を送っている中、ただ一人拍手もせず、こちらに睨みを利かせる悪意ある顔をした者の姿を……
―――――
家庭教師生活三十日目……
今日は家庭教師の仕事はお休み、そして待ちに待った給料日だ!!!
ゼレイス王から受け取った金額を見て俺は驚いた。
だって俺が必死になって運送して稼いだ半年分の額と、ほぼ同じなんだもの……
もちろん即座に多すぎると返却しようとしたさ。
でもゼレイス王が言うには正当な報酬との事だ。多少色は付けているが、そこまで大騒ぎするほどの大金ではないと……
どんだけ薄給で働いていたんだよ俺は……
「この額なら、後二三ヶ月で目標額には到達するな! これでまた隠居生活が…………」
隠居生活……あれ? なんだか心が動かない。
おかしいな、あれほど望んでいた事なのに……ここに居て仕事をしているのは、隠居する為の資金集めをしていただけなのに……
楽しいのかな、俺……
休みの日だと言うのに、俺は二人にどうしたら分かりやすく教えられるかばかり考えている……。
思い浮かんでくるのは美しい二人の少女の眩い笑顔、それを微妙な顔で眺めている王様と、その王様を睨んでいる王妃の冷たい顔。
最近では騎士長のルクルーゼともいい仲だ。
その証拠に今日はルクルーゼと出かける予定であり、それを決めた日はルクルーゼをクビにすると王女達が暴れ大笑いしたものだ。
「……なんか……スッキリしねぇな……俺は……どうしたいんだ……」
「何がどうしたって?」
俺の呟きに、いつの間にか隣まで来ていたルクルーゼが反応した。
「お、驚かすなよ……ルクルーゼ」
「別に驚かしたつもりはないのだが……それで? 今日は何処に行くのだったか?」
コイツ……何を隠そう女たらしなのだ。
硬派な振りをしているが、何人もの女を泣かせてきたと有名なのだ。
まぁ、最近はメイドのナタリアに心を決めたとか言う話は噂されてたけどな……
まったく、顔は俺の方がイケメンだと思うが(客観的に見てもだぞ?)俺には女を喜ばせる知識はないからな。
「あぁ、軟派なお前に頼みがあるんだ……その……ある人達にプレゼントを贈りたいんだけど……何がいいのか全然分からなくてさ」
「誰が軟派だ誰が。――――王女殿下達へのプレゼントか……難しいな。高価な物は沢山貰って来ただろうしな」
「だ、誰も王女達へのプレゼントだなんて言ってねぇだろ!?」
コ、コイツ……なんで分かった。エスパーか?
「他に誰がいると言うのだ? ……お前は何処か人を避けている節があるからな。深く関わっているのは王女殿下達だけであろう?」
「…………あぁそうだよ。あいつ等と出会って一か月経った。給料も出たし、何か記念に渡してやりたくてな……」
自分でも驚いてるよ……。今まで他人からプレゼントを預かって送り届けた事は沢山あるが、自分からプレゼントを贈った事も贈ろうと思った事もないのに……
あいつ等の喜ぶ顔が、見たいんだ――――
「――――ふむ……そうか。では微力ながら手を貸そう、色々回ってみるか?」
俺とルクルーゼは様々な店を見て回った。
歩くたびにキャーキャーと黄色い声が飛んでくる。
イケメンって……罪だな。
――――――――――
「色々付き合わせて悪かったな? 喜んでくれるか分からねぇが……これを渡すよ」
「お前からの贈り物なのだ、王女殿下達なら何でも喜ぶさ」
だといいけど。ともかく城に戻るか、あまり長々と騎士長を連れ回すのも悪いしな。
「……シュバルト、俺からも一つ頼みたい事があるのだが……いいだろうか?」
「おう! 何でも言ってくれよ?」
ルクルーゼの顔が一瞬曇ったのを見逃さなかった。
何か頼みにくい事なのか?
「届け物を……頼みたい。……お前が
なるほど……頼み事は運送、元
「お前の頼みだ、聞いてやりたいが……明日も家庭教師の仕事があるんだよな……」
「それは問題ない、この国からそんなに離れていないのだ。お前の足であれば、朝までには戻って来れると思うが……」
再び顔を曇らせるルクルーゼ。
そんなに悲痛な顔しなくてもいいのに……そう言う事ならお安い御用だ!
「なら問題ねぇよ? 他ならぬ騎士長様からの頼みだ! ……でも俺は高いぜ?」
「……そうか、助かる。これが届け物と、届け先だ……報酬は用意しておく」
う~ん、この場所なら今から行けば早朝には戻れるかな……
寝不足くらい我慢するか、コイツには借りがあるしな。
「よっしゃ、任せとけ! じゃ早速行って来るわ! 報酬……忘れんなよ?」
俺は即座に街の門に向かい走り出した。
パパっと終わらせたかったってのもあるし、善は急げだ!
走り出した瞬間、ルクルーゼの奴が何か言ったような気がするが、どうせ街中を走るなとかそんな事だろうよ。
「……すまない……本当に……すまない……」
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