家庭教師は世捨て人!? ~最強の世捨て人、金がなくなり王族の家庭教師を始める~

酔いどれ悪魔

~起~

 

 とある異世界『ハルシュゲート』


 剣と魔術が支配するこの世界は、危険に満ち溢れていた。


 街には防御結界という魔術が展開され、外界からの脅威から人々を守っていた。


 しかし一度外に出ると、そこには凶悪な魔獣が闊歩しており、命のやり取りがそこら中で行われている世界。


 この世界には、世界を支配しようとする魔王や、人々を危険から守ってくれる勇者なんて言う都合のいい存在はない。


 力を持たず、自分の身を守れない者は、街の外に出る事すらままならない状態であった。



 そのため、この世界には『運送者トランスポーター』という職業についている者達がいた。



 街から街へ、危険な外界を渡り様々な荷を運送する者。


 運送するのは何も物だけとは限らない。荷物を運び、人を運び、想いを運ぶ。



 運送者トランスポーターの主人公、【シュバルト・ダロンドロス】



 数少ない凄腕の運送者トランスポーターであった彼の元には、毎日毎日大量の依頼が飛び込んで来ていた。


 彼は、その優れた能力で沢山の依頼を完遂し、人々から大きな感謝と尊敬の念を抱かれていた。



 ――――が、彼の心中にあったのは、仕事への遣り甲斐でもなければ、人々の役に立ちたい……といった崇高な事などではなく……




「がぁぁぁぁぁぁあ!!! もういやだ!! 毎日毎日仕事仕事仕事!! 朝起きると外には人の大行列! ガヤガヤガヤガヤと寝られやしない! おまけに深夜から場所取りするため、寝袋持参する奴まで現れやがった!!」



 名:シュバルト・ダロンドロス

 Age:二十四

 職業:運送者トランスポーター


 休み:なし

 自由:なし

 彼女:なし

 プライベート:なし



「やってられるかァァァァァァ!! 金をいくら稼いでも使う暇はなし! 金持ちなのに飯は毎日簡易食品! イケメンなのに彼女なし、経験なし!! へこへこへこへこ俺の機嫌を窺うようなあの眼!! 金さえ払えば何でも運んでくれると思っている馬鹿な商人ども!! もう人の声を聞くのもうんざりだ!!」



 依頼達成率:百パーセント

 運送物損傷率:零パーセント

 運送料金:結構安い



「……俺がその気になればなぁ……世界だって支配出来ちゃうんだぜ? なのに、なのに……なんで俺はこんな惨めな…………決めたぞ……俺は、俺はァ――――」



 呼び鈴が鳴った。



 <シュバルトさ~ん! 運送をお願いしたいのだが……>


「――――俺はっ……あ、は~い、今開けま~す」



――――――――――



「………………オルクスまで食料品の運送……オルクスなんて世界の裏側じゃねぇか!! おまっ……少しは考えろよ!? 世界の端から世界の端に食料運送なんて、非効率過ぎるだろ!!??」



 依頼引受率:百パーセント

 運送速度:超高速


 容姿:イケメン(自称)

 性格:頼まれると断れない



「もう無理……決めた、決めた決めた決めた!! 運送してやるよぉ……この俺自身をな!! 依頼者は俺、運送物は俺、運送者トランスポーターは俺、報酬は…………自由だぁぁぁぁぁぁ!!!」



 シュバルト・ダロンドロス、俗世を捨てる事を決意。


 運送先は、人と関わらないで済む場所。



「よし……そうなったら早速準備だ、忙しくなるぞぉぉ!! ――――あ、でもこの依頼は引き受けちゃったし……やってからにしよう」



 この依頼のお陰で、彼の世捨て計画は一年の遅れを見せる。



 そして約一年後、身辺整理を行い、様々な物資を買い込み、ついに彼は旅立った。


 報酬の金を贅沢に使い、十年で築いた巨額の富は一夜にしてスッカラカン。


 それでも、彼の表情は晴れ晴れとしていた。


 とりあえずの行き先は、前人未到の地、『第四魔境』


 人との関りが嫌になった彼は、第四魔境で凶悪な魔獣達と関わるようになる。



――――――――――



「着いたぜ……」


 ここは魔獣が生まれる地とされている、『魔境』と呼ばれる場所。


「……ふふふ、静かだ。人の声なし、気配なし、人が住んでいる形跡なし、足を踏み入れた形跡もなし……」


 世界には四つの魔境が存在しており、その中でシュバルトが世捨て先に選んだのは、最も危険とされている第四魔境であった。


「ふふふ、ははは、はぁぁぁぁははははっ!! 自由だ! 俺はこの誰もいない場所で、第二の人生を――――」



 〈グギャアアアアアアアア!!!〉

 〈ギャオオオオオオオオオオ!!!〉

 〈シュルルルルルルルルルルル!!!〉

 〈キョエエエエエエエエエエエエ!!!〉

 〈トリッピートリッピートリッピー!!!〉



 耳を劈くような魔獣達の咆哮。

 確かにここには人はいない。



 そう、人はいない。



 いるのは人を好物としている、凶悪な魔獣達。


「魔獣か……まぁ人間よりはマシかな? 一匹変な奴がいるようだけど……」



 刹那、鬱蒼とした森の奥から数匹の魔獣の気配を感じる。



 人の匂いを嗅ぎ付け、地響きを轟かせながら姿を現したのは、飢えた五匹の魔獣。


 それは、外界でも滅多に見ないレベルの巨体の有した、恐ろしき狩人達。


 人は獲物、狩られる者。人間の命など、奴等に取っては腹を満たすだけのただの餌。



 が……目の前にいる矮小な人間は、逃げ惑うだけのエサとは違うのだった。



「……何見てんだよ? ……あ、そうか! ――――初めまして、今日からこの魔境に住まわせてもらうシュバルトと言います。どうぞ、よろ――――」



 〈〈〈グキャシュルキョトリッピーピー!!!〉〉〉



 お側に参りました。

 シュバルトの引っ越しのご挨拶は、受け入れられなかったようだ。


 おぞましい叫び声と共に、シュバルトへと迫る魔獣達。

 お互いの体をぶつけ合いながら、我先にと獲物を狙う。



「ありゃ……やっぱ手ぶらで来たから怒っちまったか? ……なんてなっ!」


 ――――一閃。


 シュバルトは帯刀していたの内、一本を引き抜き一閃。


 魔獣達に見えたのは、一瞬煌めいた、刃に反射した陽の光のみ。

 その光を認知した瞬間、意識に闇が落ちその生涯を終えた。



 獲物は、自分達であったと思いながら――――



「……魔獣は食えねぇからなぁ……とりあえず、拠点場所を探すか」


 事切れた魔獣達を火葬し、シュバルトは魔境の内部へと足を踏み入れる。


 ――――一歩。


 踏み込んだ瞬間に様々な場所から感じる魔獣の気配。


 しかし、襲い掛かってくる愚か者はいない。


 入口付近を縄張りとしていた魔獣達は、自分達より格上の魔獣達が一瞬で葬られた光景を目の当たりにしていた。


「……賢明な判断だぜ? これからは隣人なんだ、仲良くしてくれよ?」



 人間の言葉など理解出来ない。


 だが、本能が理解していた。


 このイカれた隣人に、関わってはいけないと…………



――――――――――



「――――うっし! こんなもんかな? 我ながら…………クソみたいなマイホームが出来たな」


 見晴らしのいい場所に、シュバルトは拠点を築く。


 眼下に広がるは鬱蒼とした瘴気の森。目を凝らして探す必要もないくらい、そこら中にいる魔獣達。


 ――――その時、背後に魔獣の気配を感じ取り、警戒を行うシュバルト。


 すでに、二十を超える魔獣達のお宅訪問が行われており、流石のシュバルトもこの非常識な隣人達に飽き飽きしていた。


「……またかよ……いい加減にしろよな!? お前で記念すべき三十匹目だぞ!?」


 記念すべき三十匹目を葬ったシュバルトだったが、それからも魔獣の襲撃は続き、毎日毎日休む暇もなく襲われた。



 ――――そして彼はついに決意する。



 引っ越した先が虫だらけ、駆除せど駆除せど湧いてくる。


 別の世捨て先を探そう…………ではなく、第四魔境大掃除計画。


 この土地は汚い…………そうだ、大掃除をしよう。



 ――――かくして始まった大掃除は、なんと二年の時を費やした。



 魔境を隅々まで回り、多くの魔獣を駆除しながらのサバイバル生活。


 そして、シュバルトは掃除を終わらせ、虫が涌かなくなった我が家へ二年ぶりに帰省する。



「……あ、防御結界と保存魔術使うの忘れてた……」



 二年ぶりに戻った拠点は、魔獣に荒らされ見るも無惨なボロ小屋に変わり果てており、物資は奪われ、様々な生活用品も損壊していた。


 後ろを振り返れば、大量の魔獣の亡骸と、元々少なかった資源が完全に尽きてしまった元魔境。


「この魔境はもうダメだ……俺はただ、静かに暮らしたかっただけなのに……」


 二年を費やし行った事は、魔境の魔獣を殲滅すると言う、まさに勇者の所業。


 静かにのんびり暮らしたいが為だけに、二年間サバイバル生活を行い働き倒した。



 ――――その結果が、これである。



「他の場所探すか……他の魔境は…………ダメだな、ここと同じようになるのが目に見えてる……」


 再び始まる世捨計画。


 人と関わらずに済み、尚且つ魔獣と戯れる必要もない場所があるのかと思考を巡らせる。


 そんな場所は、このハルシュゲートの何処にも存在しない。



 ――――そう、この第四魔境以外には。



「……そっか、ここでいいんじゃん! でもこの魔境で生きていくのは無理だよな……餓死するわ」


 すでに資源が尽きた魔境。サバイバル生活すらもままならない。


「そもそも、俺は楽したいしな。……また金、稼ぐか……」



 シュバルトは、この静かになった第四魔境で楽な生活を送るために、一生分の物資を揃える事を決意する。


「でも運送業再開すると……また仕事尽くしになるよな……何か楽に稼げる仕事ないかな~」


 そしてすぐに、シュバルトは近くの街へと移動を開始する。


 とりあえず近くの街へと足を運べば、なんとかなるだろうと言う根拠の乏しい理由を携えて。



――――――――――



「――――お? あったあった! ……結構でけぇ街だな?」


 魔境を出発してから数日、シュバルトは魔境から一番近い街へと訪れていた。


「なんて街だろ? 運送では来た事ねぇなぁ」



 ――――街の門まであと少し……という所で、門から勢いよく飛び出してくる影があった。


「……荷馬車? 運送者トランスポーターか? あんな飛ばして、危ねぇなぁ」


 荷馬車はものすごい速度でシュバルトの脇を通過し、街道を走り去っていった。


「大変だねぇ運送者トランスポーターは……嫌だ嫌だ、戻りたくないね、あんなの」



 そしてシュバルトは街の門に到着する。かなり立派な作りだ。


 通常、街の門はその街の大小に関わらず、外界からの脅威に備えるため、警備が厳重であるのが普通である。



「……おかしいな……警備がいないし、そもそも門が開けっ放し――――」


「――――早くして下さい!! 早くしないと、早くしないと間に合わなくなってしまいます!!」


「いや、し、しかし! 我々だけで外界に行くのは、死にに行くようなものなのです!」


「あなた方は騎士団でしょう!? 他に誰が助けに行くと言うのですか!?」


 シュバルトが門の異常に気付き近づいた所、その付近で何やら言い合いをしている集団が目に付いた。


「そ、それは……運送者トランスポーター抹殺人イレイサーを雇うしかありません!」


 他の街でもよく目にした、物々しい甲冑を纏った騎士の風貌をした男が声を出す。


「なら早く手配して下さい!」


 騎士団に臆する事なく声を張り上げているのは若い女性だ。


 長い髪を後ろで二つ折りにして、高価そうな髪留めで纏めている。白と黒を基調とした服装が、キリッとした顔を引き立たせていた。


「綺麗な人だな……メイドさん……か?」


 シュバルトが離れた位置から鼻の下を伸ばして見ている事など露知らず、女性は鬼気迫る表情のまま騎士団に怒号を飛ばす。


「し、しかし、今すぐと言う訳には……」


「もういいです!! 貴方達には頼みません! 私が行きますっ!!」


 女性は憤怒の表情のまま、外界に出ようと此方に歩いてくる。



 ――――あり得ない。



 メイド服を着た華奢な体つきの女の子。武器などを身に付けている様子もなく、身のこなしから戦闘に心得がない事が見て取れる。


 そんな人間がこの魔獣蔓延る外界で、何分その命を保っていられるのか。



 ――――しかし、天は彼女の味方のようであった。



「っっ!? …………あ、貴方様、もしかして外界からいらしたのですか!? もしかして運送者トランスポーター抹殺人イレイサーの方ですか!?」


 そこにいたのは他でもない、世界最高の元運送者トランスポーター、シュバルト。


 ボーっと外界より門付近の様子を伺っていたシュバルトは、だらしない表情を正すと、女性に向き直った。


「いえ、違いますよ、ただの世捨て人です」


「よ、世捨て人? な、なんでもいいです! 世捨て人だろうがおくり人だろうが、外界を渡れるのですよね!? あのっ! お願いが――――」


「――――申しわけごさらん、拙者、急いでいる故これにて……」


 どこぞの流浪人の振りをして女性とすれ違うシュバルト。


 人との関わり、面倒事はごめんだと門に向かい歩き出す。



「お、お願い致します!! 国の有事なのです! ……お願い……あの子達を、王女様達を助けて……お願いだからぁ……」


 泣き崩れ膝を落とすメイドさん。


 気丈な態度を取っていたが、まだ若い女の子。助かるかもという希望に触れ揺れ動いた心は、告げられた絶望により形を保てなくなり瓦解する。



「………………」


 耳に入ってしまった、頼み事。



 幼少の頃より厳しく教え込まれた家訓、『困っている人には手を差し伸べよ』


 この呪いとも取れる家訓は、シュバルトの胸に楔として打ち込まれていた。


「お、お話だけなら、聞かん事もござらんよ?」


 お人好し。そう言えば聞こえはいいが、もはや病気である。


「ほ、本当ですか!? お、お願い致します! 世捨て様!」


 患っている病気により、一大決心で望んだ世捨て計画、そして他人との関わりの断絶は意図も簡単に崩壊した。


 しかしこの関わりは、彼の人生に大きな影響をもたらす関わりとなるのであった。



――――――――――――――――――――



「――――おい、追っ手は来てねぇよ、速度を落とせ。ガタガタと乗り心地最悪だぜ」


「我慢しろよ。騎士団なんか怖かねぇけど、魔獣に嗅ぎ付けられたら面倒だろ?」


 結構な速度で街道を突き進んでいる荷馬車。


 街道とは言っても、キッチリと舗装された道ではない。

 大昔に作られた街道を、大きな損傷が出た時に整備をしているだけのオンボロ道。


 魔獣の脅威に対し、しっかり整備するだけのメリットも、沢山の傭兵を雇う金もない。


「くそったれが、ただでさえ狭ぇのによ! ガキが二匹も……どっちか一匹でいいんじゃねぇのかよ!?」


「じゃテメェに分かんのか!? どっちが依頼されたガキなのかがよ!?」


 荷馬車の中には数人の男達の姿があった。

 その中の二人が、狭い車内と乗り心地にイライラし、声を張り上げストレスをぶつけ合う。


「そんくらい確認してっ――――おい、ガキが起きたようだぞ」


 狭い車内で張り上げられた声に、隅に縛られて転がされていた者が目を覚ます。


「テメェが騒ぐからだろうが! ……まぁ丁度いい、ガキを一人減らせるチャンスだろ」


 縛られた者は回りを見渡し、状況を把握する。


 周りにいるのは小汚ない格好をした男達、すえた匂いが不快感を煽る。


 そしてすぐに自分が置かれた立場を理解した。



 ――――自分は、誘拐されたのだと……



「な、なによアンタ達!? こんな事をして、ただで済むと思っているの!?」


 目を覚まして非難の声を上げるのは、まだあどけなさが残る美しい女性。


 絹のような美しい金髪を靡かせ、深い蒼色をした目が男達を魅了する。

 召しているのは高価そうな白いドレス、それが相まってどこか気品漂う女性であった。



「うるせぇよ、騒ぐな! ……おい……お前はセレスレイア王女か?」


「…………」


「何黙ってんだよ、聞いてんだろ? お前はセレスレイアなのかってな!!」


「ひぅっ…………」


 男の怒声に恐怖を覚え、体を震わせる女性。


 無意識に、未だに隣で縛られて気を失っている女性の手を取り、安心を得ようとギュっと握り込む。


「セ、セレスレイアだったら何だと言うのよ?」


 体を震わせながらも、その涙ぐんでいる目で男を睨み返す。


「俺達に用があるのはセレスレイアだけだ。馬車も狭ぇ……いらねぇ方は放り出してやるよ!!」


 女性は目を見開いて、今男が言った言葉を考える。


 こいつらに着いて行ったら、まず間違いなく殺される。

 殺されないにしても、凡そ人の所業ではないような拷問や、酷い生活を送る事になるのだろう。


 自分の身分を考えれば、あり得ない話ではない。


「…………セリスレイアに何の用があるのよ?」


 女性は時間を稼ぐように男達と会話を続け、もう一つの行く末の方の思考を始める。



 この馬車から放り出された場合。


 ここは外界、力を持たない自分達が生きていられる世界ではない。



「うるせぇな? テメェは黙って答えればいいんだよ!」



 しかし女性は考える。必ずしも魔獣に襲われるとは限らない。

 運が良ければ、安全な所に辿り着く事も出来るだろう。


 なにより、自分達を救出しようと騎士団が動いているはずだと…………



「…………セレスレイアは、わ、私よ……」


「……本当だろうな? テメェ、嘘だったら容赦しねぇぞ?」


 女性はゴクリと唾を飲んだ。動揺を悟られないようにと必死で心を静める。



 ――――そう、この女性はセレスレイアではない。



「おい、本当がどうか分かったもんじゃねぇぞ? 黙って二人とも連れて行きゃあいいだろ?」


「馬鹿だなおめぇは、セレスレイアさえ無傷なら問題ねぇんだ。――――つまりこっちの女をどうしようが、俺達の自由って事だぜぇ!?」


 男は下卑た表情で舌舐りし、気を失っている女性に近付いていく。


 この女に飢えた男が、彼女を使って何をしようとしているのか、想像すらしたくない。


「ちょ、ちょっと、話が違うじゃない!? 近付かないで!!」


「ひひひ、なるほどな。おい、俺も混ぜろよ!」


 一転して状況が変わる。


 命の危険はないかもしれない。しかし、この男達に慰み者にされるなんて死んでもごめんだと、逃げ場のない馬車の中で後ずさる。


「お前には何もしねぇよ、セレスレイアなんだろ? テメェは黙ってそこで見ていやがれ!!」



 ――――その時、握っていた手に力が入るのが分かった。


 この煩い環境の中、長く眠りについていたお姫様も目を覚ましてしまったようだ。


「っっ!?」


 握られた手には、ハッキリと感じられるほど震えが伝わってくる。


 いつから覚醒していたのかは定かではないが、状況を把握しているようだ。


「……どけよ? それともテメェも仲良く犯してやろうか!?」


「ひゃぅっ…………」


 男の怒声に眠り姫の可愛らしい声が漏れてしまった。その言葉はハッキリと飢えた野獣達の耳にも入る。


「あぁん? ……コイツ、起きてやがるぜ?」


 見つかってしまった。女性はもう隠す気もないくらいに震えて怯えている。


 その彼女を、幾ばくか気丈に振舞っていた女性が自身の胸に抱きしめる。


「……おい、そこのお前、名前を言ってみろ」


「わ、私は…………セ、セレスレイア……です……」


 体を震わせながらも、女性は必至で言葉を絞り出した。


 自らの名前もセレスレイアだと言う。


 それは先ほどまでの会話を聞いていたため、二人ともセレスレイアであれば男達は判断する事が出来なくなり、襲われる事はなくなるかもしれない……といった事を考えての発言だった。


「何だと? てめぇら、ふざけてんのか? どっちがセレスレイアだっ!!?」


 男の怒号に、再び体をビク付かせた二人。各々の体を抱きしめ合いながら、声を絞り出す。


「わ、私がセレスレイアよ!」


「い、いいえ、私がセレスレイアです!」


 その言葉に男の表情が憤怒に染まる。頬はピクつき、今にも暴れ出しそうな勢いであった。


「……おい、もう両方ヤッちまおうぜ? なぁにバレやしねぇよ、要は傷だけ付けないように注意すればいいんだろ?」


 少しだけ恰幅のいい醜い男の言葉に、他の男達は視線を交わし意思の統一を図る。



 本来やってはいけない事、禁止されている事。


 しかし一人ではなく、皆でそれを破るのであれば……怖くないという、他人に責任を押し付け自分を正当化する行為。


 その実に身勝手な判断に、少女達の頭は恐怖と絶望で満たされてしまう。



「い、いやぁぁぁ!! やめて、来ないでぇ!!」


「さ、触らないで下さい!! やめて……お願い……誰か……誰か助けてぇぇぇぇ!!」


 少女達に出来るのは、子供の様に泣きじゃくる事と、この危険な外界に来るはずもない助けを必死に叫ぶ事だけ。



 ――――しかし、やはり天は可愛い者達の味方であるようであった。



「――――あのぉ……お取込み中失礼致します、お届け物で~す」



 突如現れたシュバルトに、困惑の目を向ける男達。


 少女達は、衣服を傷つけないようにと男達に剥ぎ取られ下着姿。

 誰が見ても、これからここで行われようとしていた事は明らかであった。


「な、なんだてめぇは!? どっから現れやがった!?」


「何処って……入口……馬車の扉からですけど……」


「ふざけんな!! 高速で走っている馬車にどうやって入れるって言うんだよ!?」


 男達の非難の声などお構いなしに、シュバルトは少女達へと近づいていく。


 あまりに自然に近づくものだから、男達はシュバルトを制止するのを忘れ見入ってしまう。


「セレスレイアさんに、ミスティリアさん……でお間違いないですか? お届け物です」


 自然に近づき、不自然な事を言う。この高速で走る馬車にお届け物など、明らかに異常である。


「は、はい、私達ですけど……あの……お届け物……?」



「ええ、お届けに参りました。――――希望を」



 一瞬、訳の分からない事を言うシュバルトに怪訝な顔を向ける少女達だったが、シュバルトの笑顔を見て、徐々に心に広がり始めた暖かいもの。



 ――――希望。



 その優しい光に触れた少女達は、安心と言うドーパミンで脳が満たされ、泣きじゃくりながらも眩い笑顔を見せるのであった。


「もう大丈夫ですよ? メイドさんに、二人に希望を届けてと依頼されまして」



 ――――一方男達は。


 シュバルトの自然な行動に呆気に取られていたが、即座に持ち直しシュバルトを排除しようと各々武器を構える。


 が……誰も行動出来ずにいた。


 シュバルトの無防備な背中から放たれている異常な殺気。

 この男達も外界を渡れる凄腕の者達なのだが、そのせいで嫌でも気づいてしまう。



 シュバルトが、絶対的強者であるという事に。



「……そうそう、貴方達にもお届け物があります。誘拐犯さんで間違いございませんか?」


 シュバルトの言葉に男達の体がビクつく。


 数人の男達は、声すら発する事が出来ない。自分で行動する事を放棄し、他者に責任を押し付ける。


 恐らくリーダーであろう男に数人分の視線が集まった。


「と、届け物だぁ? た、頼んでねぇぞ?」


「おや、困りましたね……必ずお届けするようにと仰せつかったのですが……」


 シュバルトはワザとらしく考え込む仕草し、男達は黙ってそれを見ている事しか出来ない。


 男達に冷や汗が流れる。何が運ばれて来たのかなんて、分かっていた。



「そう言わずに、お受け取り下さい。――――絶望を」



 ――――刹那、数人の男達が吹き飛ぶ。



 窓を突き破り外界に放り出された男達は、自身に何が起こったのか見当もつかない。


 突如聞こえた異音に、御者をしていた者は異常性に気づき馬車を停車させた。


「て、てめぇ!? 何をしやがった!?」


「何って、押しただけだけど……こんな風になっ!」


 シュバルトの姿がブレたと思った瞬間、まるで重力がなくなったような感覚で体が吹き飛ばされる。


 リーダーの男に辛うじて見えたのは、一瞬で距離を詰めてきたシュバルトが、自身の体を手で押したという事だけであった。


「っく……そがぁ!! てめぇら! やっちま――――」


 その瞬間、突如湧き上がる強烈な嘔吐感。


 激痛と嘔吐感に我慢出来ず吐き出すと、出てきたのは真っ赤な鮮血。


 体の内側がズキズキと痛むのを感じ、手で押されただけで内臓を損傷したのだと理解する。



「……アンタ達、とりあえずこれ羽織ってなよ? 童貞には刺激が強すぎるわ」


 そう言ってシュバルトは馬車内に転がっていた毛布を少女達に投げ渡す。


「え……って、きゃあぁぁぁぁ!!」


「み、見ないで下さいぃぃぃ!!」


 少女達は自分達がどのような格好をしていたのか思い出し、顔を真っ赤に染めて毛布に包まった。


「服、あそこに落ちてるから、動けるなら着ておきなよ? 俺はまだ運送が終わってないからさ」


 そう言ってシュバルトは馬車の外に降りる。


 そこには血で服を真っ赤に染めた男達が、肩で息をしているのが見えた。


「汚ねぇな~……もう終わりか? アンタら……抹殺人イレイサーだろ? 根性見せてみろよ?」



 ――――抹殺人イレイサー。金を対価に魔獣の討伐を行い生計を立てている者達。


 金さえ積まれれば、人をも手に掛けるとの噂もあるが、定かではない。



「ぐぅぅ……言わせて置けばっ!! 行くぞてめぇらァ!!」


 男達は一斉にシュバルトに飛び掛かるが、シュバルトに動く気配などは見られない。


 目の前まで来てもなお動かないシュバルトに、多方向から様々な武器が襲い掛かる。



 ――――それは一瞬、瞬きを一度しただけでシュバルトの姿が視界から消える。


 武器は空を切り、行き場を失った殺気が地面に叩きつけられた。



「――――こっちだ、愚図ども」



 男達は後ろを振り返る。シュバルトは先ほど自分達が血をまき散らした場所に悠然と佇んでいた。


「てめぇ……なんか『魔術』使ってやがるな? ――――てめぇら!! 俺達も魔術で攻撃する――――」


「――――もう遅ぇよ? 足、見てみるんだな」


「はぁぁ? 何を言って…………うわぁぁぁぁぁ!? お、俺の足がぁぁぁぁぁ!!」



 男達は全員、片足を切り落とされていた。


 認知出来ないほど綺麗に切り落とされた足に痛みなどの感覚はなく、目から入った情報が脳に送られ、やっと彼らは激痛を知覚した。


 片足を失い、男達が激痛にのた打ち回っている地獄のような光景の中、シュバルトはゆっくりと馬車に向かい歩き始める。


 馬車まで戻って来たシュバルトは、未だに呻き声を上げている男達へと振り返り、最後に告げた。


「まぁ精々足掻いてみろよ? ――――ほら、来たぜ? 絶望がよ?」


 そう言ってシュバルトは馬車を走らせ、男達の元を離れて行った。



「くっそがぁぁ……アイツ……絶対に許さねぇ、覚えて――――」


「――――おいっ!! あれ! あれを見ろ!!」


 仲間の叫び声に目を向け確認すると、そこにはシュバルトの言った通り、絶望が向かって来るのが見えた。


 土煙と地鳴りを響かせながらやって来る絶望、魔獣達の群れが男達に襲い掛かる。


 片足を失った男達が、どうなったのか誰も知る事はなかった。



――――――――――――――――――――



「――――セレスレイア様!! ミスティリア様!!」


 馬車を走らせ、街まで彼女達を送ったシュバルトは、街の門前で待っていたメイドさんと彼女達が抱き合う光景を、御者席よりボーと眺めていた。


「よくぞご無事で……申し訳ありません……私が散歩にお連れしたせいで……」


「いいのよナタリア……私達の不注意だもの、貴女が悪いのではないわ!」


「そうです! 私達がお願いしたのですから……悪いのは私達です!」


「いいえ! そもそも城の近くであればと、護衛の一人も付けなかった私が悪いのです! 王女様達に非はありません!!」


 悪い悪くないと問答を繰り広げる三人の横を、そっと御者席から降りたシュバルトが通過する。


 これ以上の面倒事はごめんだと、異常事態故に警備が愚かになっている門を潜ろうとしたその時であった――――



「――――あっ! お待ちください! 貴方様にもちゃんとお礼を致しませんと!」


 セレスレイアと呼ばれていた少女がシュバルトの元に駆け寄ってくる。


 再開を喜び合っていた三人の中で彼女だけが、シュバルトの動向に目を光らせていた。


「い、いえ、お礼には及びません……貴女の笑顔を見れただけで十分です、ではでは――――」


「――――ダメです!! 危険な所から助けて頂きました……お礼の一つもしないなんてあり得ません!! お願いですから、お聞き入れ下さい!」


 一番気弱そうな少女から発せられた、有無を言わせない圧力。


「そうよ! お礼くらい言わせて下さい!」


「世捨て様……お願いでございます。お付き合い頂けないでしょうか?」


 お願いと言う言葉に一歩留まってしまったシュバルトは、追いついてきたミスティリアとナタリアにも捕まり、お礼を受け取る事になってしまうのであった。



――――――――――



 場所は変わり、ここは王城の一室。


 かなり豪華な室内で、場違いな風貌をしたシュバルトがソファーに腰かけていた。


 そしてその両隣には身なりを整えた、の美しい王女達が寄り添っている。



「……あの……もう少し離れて頂けませんか?」


「え……? もしかして嫌ですか? ……それなら仕方ないけど……」


「そんな……私達の事がお嫌いなのですか? ……それなら仕方ありませんが……」


 まるで小悪魔。仕方がないと言いつつ、更に体を寄せ密着する王女達に困惑するシュバルト。


「い、いえ! 嫌ではござらん! しかし私の服はかなり汚れていますので……」


 シュバルトの言葉で顔に花を咲かせる王女達。

 拒絶されなかったのをいい事に、シュバルトの腕を取り胸に顔を埋め始める。


「……ちょっとセレス、貴女少しくっ付き過ぎよ? もう少し離れなさいよ?」


「ミスティこそ近すぎです、もう少し離れた方がいいと思います」


 シュバルトの胸の前で、頬を膨らませ抗議しあう王女達。


 抱かれている腕に込められる力が強くなり、いよいよ拒絶しようとシュバルトが声を出そうとした時であった――――



「――――はっははは。お前達、随分と彼を気に入っているようだな?」


「貴女達、はしたないですよ? 彼が困っているではありませんか。離れなさい」


 現れたのは只ならぬ雰囲気を纏った男と女。


 壮年でありながらもその眼光は鋭く、まさしく王者の風格を纏っている男。

 隣に立っているのは、王女達によく似た美しさを持ち、それでいて王女達にはない気品さが感じられる。



 この国の王、【ゼレイス・ヴァル・シトルハイム】とその妃、【セリーヌ・ヴァル・シトルハイム】である。



 セリーヌに咎められた二人は、慌ててシュバルトから距離を取る。

 距離は離れたが、二人の右手と左手はシュバルトの手を握って離さなかった。


「娘のそのような姿は見ていて気持ちのいいものではないな……お前達、ちゃんと自己紹介はしたのか?」


 その言葉にハッとした表情をした二人は即座に立ち上がり、優雅に一礼をしながらシュバルトに自己紹介をするのであった。



「遅れてごめんなさい。私は【ミスティリア・ヴァル・シトルハイム】です。ミスティって呼んで下さい!」


「私は【セレスレイア・ヴァル・シトルハイム】と申します。セレスと呼んでいただければ……嬉しいです」



 続いて王が、そして王妃がシュバルトに自己紹介をする。


 国のトップ達に自己紹介をさせ、自分がしない訳にはいかないとシュバルトも立ち上がり、自己紹介をするのであった。


「は、初めまして……シュバルト・ダロンドロスと言います」


「「……シュバルト様……」」


 王女達の顔が蕩ける。目を閉じながら、名をしっかりと刻み込もうとしている様子だ。


「シュバルト……ダロンドロス……どこかで聞いたよう――――っっ!? 運送者トランスポーターのシュバルト・ダロンドロスか!?」


 シュバルトの名前に聞き覚えがあったゼレイスは、自身の記憶を手繰り寄せ思い出す。


「あ……いえ、その……元運送者トランスポーターですね」


「元……? 引退されたという事か?」


 シュバルトは面倒になったという本当の理由は明かさず、取るに足らない理由を述べ王達に説明を行った。



「――――むぅ……そうなのか。では観光などでこの国を訪れたと?」


「あなた、それよりも先にシュバルト様に言う事があるでしょう?」


 突如放たれた王妃の冷たい殺気、その殺気に王の顔は引きつり、即座にシュバルトに頭を下げつつ礼を言い始める。


 この国で一番強い者が誰なのか、分かった瞬間であった。


「そ、そうであった。――――シュバルト殿、この度は娘達を救ってくれた事、誠に感謝する。望みの謝礼を用意させてもらおう、どうか受け取って頂けないだろうか?」


「いぃぃえそんな!! 頭を上げてください! 王様が俺みたいな奴に頭を下げたらダメですって!!」


「……今はシトルハイム王としてではなく、二人の父として頭を下げている。父親の気持ち、受け取って頂きたい」


 未だに頭を上げない王の様子を見て、困惑しつつもシュバルトは返答する。


「わ、分かりました! 受け取ります! でも本当に気持ちだけで十分ですから……」


 頭を上げたゼレイスは、満足そうな表情をすると先ほどの話の続きをし始めた。


「それでシュバルト殿、まだこの国にはおられるな? 急いでいないのであれば、謝礼の意味も込めて晩餐会を開き、それに招待したいのだが……」


「いやいやそんな! そこまでして頂く訳にはいかないです! 俺はただ金を稼ぎに来ただけ――――あ……」


 シュバルトの言葉にゼレイスの目が光る。

 零れ落ちた言葉に即座に反応し、それを絡め取る。


「金を稼ぐ……金が必要なのか? 謝礼は決まったようだ、望む額を言ってくれ。用意しよう」


「いりませんって! 金は自分で稼ぎます! こんなデカい国ならいくらでも働き口はあるだろうし……最悪運送を再開すれば何とかなりますから……」


 その後もゼレイスとシュバルトは謝礼の事で長々と問答をする。


 ミスティリアとセレスレイアはニコニコとシュバルトを眺めるだけ、セリーヌだけが何やら思いついたような表情をしていたのが印象的だ。



「――――いい事を思いつきました。シュバルト様? お仕事をご紹介するというのは如何でしょうか? 貴方は仕事をし、それに見合った報酬を得る……問題ありませんね?」


 セリーヌ王妃の表情に、悪巧みの影が見られたような感じがしたシュバルトであったが、王妃の言葉を頭ごなしに拒否する事は出来なかったため、内容を聞く事とした。


「仕事……ですか? ご紹介頂けるのはありがたいですが……運送でしょうか?」



「家庭教師です。――――この子達の」



 セリーヌが視線を向けた先、そこには歓喜に染まった表情をした王女達がいた。


 ミスティリアとセレスレイアの家庭教師をしてくれと、セリーヌは言っているのだ。


「か、家庭教師? ……いやいや無理ですって!? 王族の方に教えられる教養なんて持ち合わせていません! そもそも人に何かを教えた事なんて……」


 シュバルトはハッキリと拒否するが、セリーヌの表情に変化は見られず、まるでその反応は予想していたと言う表情のままシュバルトに返答する。


「シュバルト様に教えて頂きたいのは、帝王学でもマナーでもありません。……貴方様は凄腕の運送者トランスポーター、それは武術や魔術に造詣が深いという事……この子達に剣術と魔術をご教授頂けませんか?」


「それはいい! ミスティリアには剣術の、セレスレイアには魔術の素質がある。それを伸ばしてもらいたい!」


「是非お願いします! ……もっと一緒にいたいし……」


「私からもお願い致します! シュバルト……先生っ!!」



 シュバルトは面倒そうだと思い拒否するが、是非にと王妃までもが頭を下げ始めた事と、シュバルトが家庭教師になるという事に、大喜びする王女達に押し切られ受諾してしまう。



 元運送者トランスポーターのシュバルト・ダロンドロス。


 人と関わらず隠居生活をするための金稼ぎ、選んだ仕事はまさかの王族の家庭教師。



 この関りは、彼の心にどんな変化をもたらすのか。


 再び隠居生活を送るために、彼は家庭教師をする事に。

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