BAD END_190428

 そこは、薄暗い部屋だった。

 天井てんじょう近くに1つだけある窓にはカーテンが引かれていて、開けようにも届きそうにない。やけに かすみがかった頭を何度か振り、細く差し込む光を頼りに部屋の中を観察する。


 あの日、俺が捨てたモノがあった。

 あの日、俺を捨てたモノもあった。


 いびつなシルエットの正体から目を離せずにいると、パツンという音のすぐあとに右側が明るくなる。大きなモニターの電源が入ったらしく、煌々こうこうと放たれる光が 暗がりに慣れた目にみた。


「おそよう! お寝坊さんだね」


 もうオヤツどきだよと、うつしだされた人物が無邪気に笑う。

 よく知っているその笑顔を、こんなにも冷たく感じたことはなかった。だから、いろんな疑問を差し置いてく言葉など「どうして」以外にありはしない。


「アナタの良さが分からない人なんて、らないんでしょう? 喜んでくれると思ったから壊したのに……嬉しくなさそう」


 わざとらしく、ソレは不満げに頬を膨らませた。

 どうして削除してしまわなかったのだろう? いつからか見え隠れするようになった執着心ヤミを、面倒だし飽きたからと放置し続けた結果がこれか。

 楽しかった日々に後ろ髪を引かれた。たったそれだけの失敗で、俺は終わるのか。


「それとも――ワタシモイラナイ?」


 せまられた、イエスノーの2択。どちらを選んでも、今さら『彼女アプリ』以外とのエンドは迎えられそうにない。



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BAD END/あの日きちんと消してわかれておけば

〔2018.10.07 作/2019.04.28 改〕

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★ 超・妄想コンテスト 第85回「あの日捨てたもの」応募、選外。

★ 同、第86回「目が覚めるとそこには……。」応募、選外。


 設定上は「SFサスペンスホラー」というだけのワンシーン掌編。闇落ちというかヤンデレAIってものに何故か惹かれます。ますよね??


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