食べにくいチョコ_210214
妻から荷物が届いた。イベントごとを欠かさないマメな性格だから中身はきっとアレだ。と分かっているからこそ、なんとなく開けるのをためらってしまう。
モヤモヤ気分で箱を開ければ、フォトカードが『ハッピーバレンタイン』と微笑みかけた。会えないうちにまた大きくなったなぁと娘の頭を撫で、妻の頬は強めにつつく。
愛らしいラッピングをサッとほどいて、早速1つ――掴んだところで再び手を止める。
いや、冷静に考えろ。『おしりふきシート』の箱で送られてきたからといって、何か得体の知れない汚らしさを感じてしまう僕がおかしいんだ。
たとえば先日通販した『豚骨ラーメン』の箱で届いたとしたら、雰囲気が台無しになるだけで済むはずだ。だが仮に洗剤系の箱で届いたとしても、〝丈夫な箱〟という基準で選ぶなら理に適っているのだから安易に否定もできない。
つまり。荷物のガワがなんであれ、中身は中身。当然〝おしり成分〟なんてものも配合されていない。
脳内会議を終了して口に放れば、僕好みの絶妙なビター。箱くらい許す。
食べにくくはあったが、とても美味しかったと電話した。
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食べにくいチョコ
〔2021.02.14作〕
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* Twitterにて創作のバレンタイン掌編。OFUSEのフォロワー限定で音声化配信フリー企画もやってます。
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