4. 大晦日海に夕日を送る人
長い間、静岡県沼津市に住んでいたことがある。
千本松原と呼ばれる海岸に立つと、なだらかな弧を描いて延々と伸びる海岸線が駿河湾を抱き、反対側に目を転じれば、松原越しに遠く富士山の姿が見えた。
(これぞ東海道)と思わせられる雄大な景観だ。
大晦日の夕刻、私はその海岸沿いの防潮堤を歩いて一年の締めくくりの儀式としていた。
毎年、同じ時刻、波打ち際には、西の水平線を染めて沈んでゆく夕日を手を振って見送る、一人のもはや若くはない男の人がいた。
青春ドラマのシーンを連想させられ見ていて何となく気恥ずかしくなったが、手こそ振りはしないが、私も夕日が水平線に沈むまで冷たい海風の吹く防潮堤に佇んでいたものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます