第6話華やかなる結婚式 Crawford view

窓の外を眺めながら、私は騎士服の上着を引き締めた。

近衛騎士団の、紺色の騎士服はなかなか気に入っている。

紺色と言うより、深い藍色と言った方がいいかもしれない。

腰に剣を刺す。

見事な装飾が施された、よく切れる剣だ。

陛下から賜った、私の1番の宝と言っても過言ではない。


「クロフォード様、お時間です。」


侍女長のステラリヨンが告げる。


「今、行く。」


深く深呼吸をし、私は部屋から出た。


少し歩いて、王宮のヘラ神殿まで向かう。

神殿の奥の扉を開くと……


「ロゼッタ……嬢……?」


見違えるほどの美少女が、そこに座っていた。

ティと争えるぐらいに。

ステラリヨン曰く、化粧は殆どしていないらしい。

純白のドレスを纏い、頬を少し赤く染めたロゼッタ嬢は、想像を絶する可憐さだった。


「あの……これ、私に似合ってるんでしょうか……」


不安げに彼女は問う。


「よく……似合っている……」


何とか声を出し、私は答えた。

彼女は少し嬉しそうな顔をした。ように見えた。



「レスト公爵家当主、クロフォード·レスト。

そなたは永遠の愛をサースシー伯爵家令嬢ロゼッタ·ヴィオラ·サースシーに捧げると女神ヘラに誓うか?」


神官が告げた。

私は昨日、正式に公爵になった。らしい。


「……誓う……」


会場のわりと手前の方から、視線を感じる。

リエドローザ嬢が私たちを、主にロゼッタ嬢を悔しそうに睨みつけているようだ。


「では、サースシー伯爵家令嬢ロゼッタ·ヴィオラ·サースシー。そなたは永遠の愛をレスト公爵家当主クロフォード·レストに捧げると女神ヘラに誓うか?」


「………誓い、ます……」


ロゼッタ嬢の手を取り膝をつく。

そして―――彼女の手の甲にそっと、口づけた―――


「………………………」


ロゼッタ嬢は、公爵家の本館を見て言葉を失っていた。

エントランスから中に入り、ステラリヨンに私室に通された彼女は、もっと言葉を失っていた。


「こ……ここが、私の部屋、ですか………………?」


「そうでございます、奥様。」


せわしなく動き回り、あちらこちらを見て小さな歓声をあげる彼女が、可愛すぎて目が離せない……


サロンに戻ると、何故かオズワールズ、セシル、ゼルディランがじっとこちらを見つめている。


「…………ロゼッタちゃん、だっけ?」


オズワールズが言った。


「ロゼッタ嬢……こんな冷酷なやつなんか放っておいて、僕と一緒においで……?」


「オズワールズ」


「ごめんって!冗談だよ!」


冗談だと言う割には本気そうな顔でやっていたがな?





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