第5話伯爵家 Rosetta view

お昼、私は末の双子の妹弟、ジェルミアとセレニアと遊んでいた。


昨日のことは、光の神と永遠の女神お父様とお母様には話したけど、伯爵と伯爵夫人お父様とお母様には話せていない。

もちろんお兄様たちにもだけどさ。

どうして伝えたものかと考えていると、いつの間にかジェルミアとセレニアがどこかに行っている。


「すぐにどこかに行っちゃうんだから。ジェルミア、セレニア、どこに行ったの?」


おそらく庭にいるだろう。

私は2人を探しにエントランスまで向かった。


エントランスまで少しあるので、本当はいけないのだが少し走って向かう。


「ジェルミアー?セレニアー?どこに行ったのー?」


もしかしたら別のところにいるかもしれないので、少し声を掛けながら。

エントランスに着くと、2人は揃ってドアを少し開けて外を覗いていた。

大方鳥でも見ているのだろう。

私は2人に声をかけた。


「もう、こんなところにいたの?って……え……?」


扉の向こう側には流れる銀糸の髪、晴天の空のような綺麗な青い瞳。

近衛騎士団の紺の騎士服。


「ク……ク……クロフォード……様……?」


どうしよう……

今日も来客はないと思ってすっかり気を抜いてた……!

私の髪の色はほとんど金髪に戻ってしまっている。

私はものすごく焦りながら叫んだ。


「お母様ぁ!お客さんです接待お願いします!失礼しますクロフォード様!」


クロフォード様は酷く、驚いた顔をしていた。


応接間で、お父様をはじめとするサースシー伯爵家一家は、カタカタと震えていた。

さっき急いで髪の色を変えたせいで、髪の毛が少し乱れている(泣)

当のクロフォード様は1家全員いることに驚いている。

まあ、当たり前だよね……



「あの……公爵様がこんなところになんの御用で……」


お父様……緊張してる所悪いけど、クロフォード様はまだ公爵じゃない……

クロフォード様が意を決して口を開いた。


「ロゼッタ嬢との縁談についてだが、」


お母様が卒倒した。


「奥様!!お気を確かに〜」


「父上がロゼッタ嬢に会いたいと言っている。」


今度はお父様が卒倒した。


「旦那様〜!」




「どうして……そんな大切なことを伝えてくれなかったんだ……?ロゼッタ……」


「あははーごめんなさいー」


だってさ、タイミングが……(泣)



お父様は何とかクロフォード様と話をすると、私たちはレスト公爵家へと向かった。


「ロゼッタ嬢は……何か好きなことは……?」


沈黙が流れる馬車の中で、クロフォード様がゆっくりと口を開いた。

好きなこと……

好きなこと……


「ええっと……あ、家事……?」


しまった……

いくらなんでも伯爵令嬢が家事好きなんて……

上目遣いに様子を伺う。


「―――べつに……いいとは思うが……」


良かったぁ〜。

これはギリギリセーフ、だ、よ、ね?



「父上―――」


「クロフォード。入りなさい。」


レスト公爵家に着いた。今から、レスト公爵と会うらしい。

ああ、手が震えて……(泣)

ウィルフル様とはまた別の怖さが……


「父上……」


レスト公爵は少し驚いたような顔をしている。

もっと御色気美人を連れてくると思ったのかなぁ……


「名前は?」


静かに優しく、それでも威圧感のある声で、レスト公爵は私に聞いた。


「お初にお目にかかります……ロゼッタ……·ヴィオラ·サースシーと申します……公爵様……」


震え気味の声で、私は答えた。


「ロゼッタ嬢……響きのいい名前のお嬢さんだ。」

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