第5話
「あとは、それぞれ挨拶をして婚約の許可を取るだけだね」
そう言うライナーク様の国センディオン王国とユーヴィス様のドルトース国、ナシュタ様のスズビナ皇国は昔から仲がいい国で、姫が嫁いだり王子が婿に行ったり、親戚関係にあるのだそうだ。そのため、5人は幼い頃から国同士を行き来していて、幼馴染の関係でもあるらしい。
婚約の許しを得るのは早いほうがいいということで、すぐに解散となった。私もお父様に知らせに行こうとしたのだが、ルディリオの拘束は強くなるばかり。どうやらまだ話してくれないらしい。
ルディリオの泊まる部屋に入り、立ったままというのも辛いので、ルディリオにソファへと座らせ、その上に腰掛けることになった。ルディリオはまだ離れない。うん、バカップルとしか言いようがない。人に見られたらどうしようと少し目が遠くなるのは、仕方の無いことだと思いたい。
それから私達は、生まれ変わってから今までのことを話し合った。ルディリオは、今まで会っていなかった分を埋めるかのように、切羽詰まった様子で聞いてきた。
夕方になる頃にはどうにか離してもらえるようになり、明日また会う約束をしてルディリオと別れた。
急いで簡易ドレスに着替えた私は、部屋にいるであろうお父様のもとに向かった。
コンコンッ
ガチャリ…
「おや、姫様。このような時間にどうしたのですか?」
「ロード、お父様はいらっしゃるかしら?」
「ええ、中へどうぞ」
部屋に入ると、お父様は読書をしていたが、私に気づき栞を挟んだ。
「ミューシエンナ、とうしたんだい?もうすぐ夕食だというのに」
「その前にどうしてもお父様に話しておきたいことがありますの」
「ふむ、婚約したい相手でもできたのか?」
「そうなんですの。よく分かりましたわね」
「そんなわけ無いか。来るのも嫌がっていたし、な……?
………当たっていたのか。どんな奴なんだ?」
「センディオン王国のメイフォン公爵のご子息で、ルディリオ様と言います」
「メイフォン公爵というと、確か先代が前国王の右腕で、今の王妹が嫁いだんだったか……。よし、分かった。メイフォン公爵も王代として来ていたはずだ。話し合って正式な婚約を結ぼう」
「ありがとうございます!!」
「何、可愛い娘のためだ。さあ、もうすぐ夕飯の時間だ。部屋へ戻るといい」
「はい。少し早いですが、おやすみなさいませ」
「ああ、おやすみ」
ニコニコと上機嫌で部屋を出ると、心配そうな顔をするティナがいた。
「あらティナ、どうしたの?」
「姫様、陛下とのお話はもうよろしいのですか?」
「ええ。どうかした?」
「パーティーから帰ってくるなり、急いで着替えて陛下の元へと向かったので、何かあったのではないかと……」
「大丈夫よ。心配してくれてありがとう。お父様に婚約の許しをもらいにきただけだから」
「まあ!!ご婚約ですか。おめでとうございます!!お相手は何処の何方なのでしょうか?」
「センディオン王国のルディリオ・メイフォン様よ」
「ということは、次期公爵様ですね。ルディリオ様といえば、センディオン王国の女性皆が憧れられる方ですよ。文武両道で、次期宰相になられることも決まっておられるのだとか。ちなみにもう一人はライナーク王太子殿下ですね」
「……何故そんなことを知っているのかしら?」
「ふふふっ、私もただ姫様の世話をしていただけではありませんので。もし姫様がご婚約され嫁がれることが決まったときのため、色々な国の使用人たちと話し、情報収集しておりました」
「あら、ティナったらそんなことをしていたの」
「姫様の嫁ぎ先に何かあっては困りますから」
「そ、そう……」
前々から優秀だとは思っていたけれど、まさか諜報紛いのこともやってるとは思わなかった。
その後もルディリオ様がいかにカッコイイかを、夕食ができるまでの間ティナへと自慢しまくった。夕食が並べられたときにようやく気づいて、話を中断したが、それでも話足りないぐらいだった。
帝都にいる間、私とルディリオは毎日一緒に過ごした。街へと下りてデートしたり、中庭を借りてお茶をしたり、多くのことをした。メイフォン公爵からも無事に許可を貰えて、来年の春に結婚することが決まった。本当はもう少し早くに結婚したいが、急なことだから、どちらもなんの準備もできていないとのこと。お見合いのためにパーティーに行かせたのに、何故準備ができていないのか。どうせ相手が見つからないとでも思っていたのだろうか。
「ねあ、ルディリオ」
「何だ?」
「私、前世の記憶があったの」
「?それは俺もだが……」
「今世でのことじゃなくて、前世でのこと。私、今人生3回目なのよ」
「つまり……?」
「私ね、前前世も含めて、貴方が初恋なの。重いけど、受け止めてくれる?」
「ああ、もちろん。それを言うと、俺も人生2回分なわけだから、十分重いと言えると思うが?」
「そんなことないわよ」
二人でくすくすと笑う。前世では出来なかったことだと思うと、胸がほんのりと暖かく感じる。
「ミュー、俺の夢を聞いてくれるか?」
あの時と言い方は違っても、同じことを言ってくる。けれど、あの時とは状況も環境も違う。だから、私は笑って返した。
「あら、私とずっと幸せに暮らすことじゃないの?」
「それもだが、俺の一番の夢はミューと一緒に生きて一緒に死ぬことだ。そして、来世もまた貴女と結ばれたい」
「ルディリオ……」
「これでもまだ重くないと言うか?」
「ふふっ、確かに重いかもしれないわね。でも、それを願っているのは私も同じ。置いていかれるくらいなら、貴方を殺して私も死ぬわ」
「それは光栄だな」
愛が重い私達は、どうやらヤンデレの気もあったようだ。けど、それでも私達は、この幸せな気持ちを抱えたままずっと一緒にいるのだろう。
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