あの人と私
化粧
何気なくだった。
「化粧、変えた?」
あの人は私の顔をチラッと見てから
そう言った。
なんで気付くの。
今まで化粧の話なんてしたことなかった。
驚く私を他所に続けてあの人は言う。
「うん、下地かな?変えたよね?」
相変わらずチラッとだけ私を見る。
「雰囲気もいつもと違うね。」
なんでこうも簡単にバレてしまうのか。
季節も変わったし、気分も変えたいし。
なんて完全に建前で。
あの人の前で綺麗になってやりたかった。
ちょっとでも私の好意を感じさせてやりたかった。
きっとそれさえも、お見通しなんだろう。
あの人には。
それでも精一杯の平然を装って私は答える。
「今日の化粧、濃かったですかね。」
私はチラッとさえあの人を見れない。
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