義妹の気持ち

あの時、故に、義妹

 好きで喧嘩ばかりしていたわけじゃない。

 ただ、向かってくる相手より私の方が強かったから返り討ちにしてやっただけ。

 そんな事を繰り返している内に、いつの間にか一帯を纏めるリーダー格にまでなってた。

 中途半端は嫌だから、髪も染めたりピアスを開けたりもした。

 慕われるのは悪い気分じゃない。

 けど、決まって私の顔色を窺(うかが)ってくるからそれだけがどうにも気掛かりだった……。


 「私、いつまでこんな感じなのかな……」


 そう思う時がある。

 喧嘩ばかりして、周りが私に合わせて物事を進めていく……いつまでこんな人生なんだろうかと、柄にもなく物思いに耽る事がある。

 「いい人でも見つけたら、変わるかもね」……ママがそう言っていたのを思い出して、死ぬまでこのままな気がしてきた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 それからも変わり映えのしない毎日を送っていたら、ママから電話があった。

 内容は、再婚したと言う話だった。

 父親は浮気でママにボコボコにされて追い出されたから、良い人が見つかった様で安心した。

 ママも私と同い年くらいの時には結構ヤンチャしていたと聞いた。

 私が生まれてからは落ち着いたみたいだけど、たまに素が出る時がある。


 「……一応、顔は出しておこうかな」


 ここ数日は友達の家に泊ってたからママとも会ってないし、再婚相手がどんな人かも知っておきたかった。

 つい数週間前に私の家に一緒に住み始めたと言っていたのを聞いて、もうちょっと早く伝えて欲しかったなぁとは思った。

 久々に家への道を歩いていたら、前から顔に包帯を巻いたおっさんがトボトボ歩いているのが目に入った。

 夫婦喧嘩でもして追い出されたのだろうと、気にも留めずに家へと向かった。

 少し歩く生まれ育った家に着いた。


 「ただいま」


 素っ気ない言葉と共に家へ入る。

 そこには、数日ぶりに会うママと、


 「紹介するわね、こちら恭君。私達の新しい家族よ」


 とても優しそうな笑みを私に向けてくれる人がいた。

 これが、私と恭の……出会い。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 恭を犯した。

 ママが家を空けた日、相談があると言って恭を私の部屋へと呼び出して犯した。

 抵抗していた恭だったけど、力で私に敵うわけも無くて最後まですることができた❤

 恭はずっと、何でって顔をしていた。

 そんなの決まってる……私が恭の事を好きだから。


 「おはよう、萌々ちゃん」


 恭が私に声を掛けてくれる度に。


 「萌々ちゃん、早くしないと遅れちゃうよ?」


 恭が私の名前を呼んでくれる度に。


 「ははは! 面白いね、萌々ちゃん!」


 恭が私に笑顔を向けてくれる度に。

 ……私の中で、「恭」という存在は何よりも優先する存在になっていった。

 そして同時に、今よりもっともっと深く繋がり合いたいと思って、告白した。

 私の告白を聞いた恭が可愛い顔で唖然としていたのを覚えている。

 それすらも愛おしく感じてしまって、もう我慢ができなかった。

 ホントはあんなにがっつくつもりは無かったのに、こうなったのも恭が私を誘惑するのが悪い❤


 「……今日の事は、忘れよう……萌々、ちゃん」


 事が終わって、恭がそんな事を言っていた。

 忘れる?

 そんな事できるわけない。

 だって、私と恭が深く繋がった記念日なんだから❤

 文字通り、深く、深く……体も、きっと心も、ね❤

 でも、あんまり毎日体を重ねるのもはしたないかなって思ったから、それ以降はボディタッチだったり匂いを堪能したり、キスするだけで我慢していた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 恭はとってもカッコ良くて優しい……だから、恭に悪い虫が付かないように目を光らせるのも私の役目。

 何度も何度も叩き落しても、すぐに湧いてくる……ホントにイライラする奴らだ。

 しかも恭に庇ってもらったりして……余計に頭にくる。

 そろそろ、我慢の限界かもしれない……。

 いつもの様に大学が終わる恭を待っていたら、恭の姿が見えた。


 「俺言ったよ、待ってなくていいって……」


 照れ隠しにそんな事を言う恭……ホントに可愛くて仕方がない❤

 思いっきり抱き着いてキスでもしようかと考えていたら……私達だけの場に、虫が割り込んできた。


 「オマエ、恭の何?」


 幸せに浸ってたのを邪魔された私は、勿論その虫を潰そうとした……のに。

 恭が、その虫を逃がした。

 私の前から遠くへ逃げて行く虫。

 怒鳴り散らす私を、恭が止めに入る。

 恭に庇ってもらえるのが妬ましくて、羨ましくて、苛ついて……もう、我慢なんて吹き飛んだ。

 恭の手を引いて、すぐに家へと帰った。

 そして、私の部屋に恭を押し入れて……あの日と同じ様に、存分に体を重ね合った。


 「恭は私の……誰にも渡さない❤」


 恭の出したものを、私はしっかりと中で受け止めた。

 これも全部、私のもの❤


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 最近何かと体が怠い。

 その小さな体調の変化を、私は見逃さなかった。

 もしかしてと思い調べたら……妊娠していた。

 初めて恭と繋がった時にできていたみたい。


 「……ははっ、あはははは❤」


 嬉しい、嬉しい、嬉しい❤

 恭と私の子だ❤

 まだ大きくなってもいないお腹をさすって、一人で喜びに浸っていた。

 恭にはまだ教えていない。

 だからバレない様に、朝早くに一人で産婦人科にも行った。


 「早く教えてあげたいなぁ❤」


 こういう事を伝えるのはタイミングが大事。

 いつ言おうかずっと考えていた。

 そうこうしている内に数日、数週間と日が過ぎていって……ある日、恭が家を出て行った。

 私に何も言わずに。

 妻である私に何も言わずに。

 でも、私は取り乱したりしなかった。

 だって私と恭には切っても切れない「繋がり」ができたんだから❤


 「ママなら恭の居場所、知ってるかな?」


 流石にママにも何も言わずに家を出たりはしないだろうと思って、ママに聞こうとリビングへ行った。

 ママは居なかったけど、代わりに何処かのアパートの間取りやら住所やらが掛かれた紙がテーブルの上に置きっぱにされていた。

 それだけですぐに分かった、恭はここにいるんだと。

 住所をスマホで調べてみると、この家からかなり離れた場所だった。

 イケナイ恭、私をこの子を置いてこんなに遠くへ行くなんて。


 「でも大丈夫だよ。恭がどこにいても、私が迎えに行くからね❤」


 だって私達……、


 「夫婦(かぞく)だもんね❤」


 二ヘラと笑みを浮かべて、私は家を出た。



――――――ポケットの中にある、私達の「繋がり」を証拠付けるものを握りしめて――――――

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