第16話

 あの屋上でのやりとりから二日が過ぎた。

 心配していた先輩たちからの仕返しもなく、五月女先生も人目のない場所には近づかないようにしているとのことで、おそらく大丈夫に思えた。

 

 六限目終了のチャイムが鳴ると、クラスメイトたちがいそいそと帰り支度や部活動の準備に入る。皆一様にどこかソワソワしているように見えるのは、いよいよ間近に迫ってきた夏休みのせいだった。休み時間に入ると、クラスの誰もがそのことを話題にしていた。


「ねえねえ、そういえば姫守君は夏休みって何か予定はあるの?」

 隣の席の歌敷さんが身を乗り出して訊ねてくる。

「う~ん、どうだろう?お婆様から予定はまだ伺ってないから」

「お家のじゃなくて、姫守君個人の予定は?」

「僕の?僕の…」

 回答に困ってしまう。

 

 今迄、自分でなにか予定を立てるということをしたことがなかった。最近になって友人と買い物に出掛けたりすることはあったが、それも誘われたから着いて行ったわけで、『自主的に』という意味では皆無だった。


「いやいや、そんな難しい顔して悩まなくてもいいよ。もし暇だったらその…」

 歌敷さんがなにやら言いづらそうにしていると――


「なに、姫守夏休みの間暇なの?じゃあさ、一緒に遊ばね?海でも山でもいいから」

「あんたはどうせナンパが目的でしょ」

「そうよ、姫守君をだしに使わないでちょうだい」

「あんなアホほっといて、私たちと遊びに行かない?ショッピングしたり、 あの屋上でのやりとりから二日が過ぎた。

 心配していた先輩たちからの仕返しもなく、五月女先生も人目のない場所には近づかないようにしているとのことで、おそらく大丈夫に思えた。

 

 六限目終了のチャイムが鳴ると、クラスメイトたちがいそいそと帰り支度や部活動の準備に入る。皆一様にどこかソワソワしているように見えるのは、いよいよ間近に迫ってきた夏休みのせいだった。休み時間に入ると、クラスの誰もがそのことを話題にしていた。


「ねえねえ、そういえば姫守君は夏休みって何か予定はあるの?」

 隣の席の歌敷さんが身を乗り出して訊ねてくる。

「う~ん、どうだろう?お婆様から予定はまだ伺ってないから」

「お家のじゃなくて、姫守君個人の予定は?」

「僕の?僕の…」

 回答に困ってしまう。

 

 今迄、自分でなにか予定を立てるということをしたことがなかった。最近になって友人と買い物に出掛けたりすることはあったが、それも誘われたから着いて行ったわけで、『自主的に』という意味では皆無だった。


「いやいや、そんな難しい顔して悩まなくてもいいよ。もし暇だったらその…」

 歌敷さんがなにやら言いづらそうにしていると――


「なに、姫守夏休みの間暇なの?じゃあさ、一緒に遊ばね?海でも山でもいいから」

「どうせあんたはナンパが目的でしょ」

「そうよ、姫守君をだしに使わないでちょうだい」

「あんなアホほっといて、私たちと遊びに行かない?ショッピングしたり、カフェでおしゃべりしたり」

「アホっていうな、だって仕方ないだろ!このクラスには美人が一人しかいないんだから。しかもそれが男っていうな!ギャハハハ」

「んだとッゴルァァァ!!」

「テメェ永遠にナンパできない身体にしてやろうかッ!」

「よし、去勢しちゃおう♪」


 ――とても会話に入っていけそうにはなかった。


「あははは……」

 歌敷さんはどこかバツがわるそうに作り笑いを浮かべる。


 教室の中の熱気がどんどん上昇している最中、教室の扉が荒々しく開く。

「お前達、廊下まで声が漏れてるぞ、騒ぐなら静かに騒げ!」

 謎かけのような注意とともに、担任の五月女先生が教室に入ってくる。

「だって、先生。柴田ったら酷いんですよ!このクラスの女子はみんなブスだって」

「ブスとは言ってないだろ」

「いいえ、言いました」

「なんだと、このブス!」

 途端に、また教室内がギャアギャアと雛鳥の群れのように騒がしくなる。

「だ か ら 静かにしろって言ってんだろうがッ!」

 五月女先生の怒声が教室中に響き渡り、クラスメイトたちの声がピタリと止む。

「………よし、じゃあ始めるぞ。っと、その前に柴田、あんまり正直すぎると彼女できないぞー」

「先生、俺自分に正直に生きていきたいっス」

「良いセリフだけどな柴田、それここで言うセリフじゃないぞ」

 教室中がドッと笑いに包まれる。


「――最後に、夏休みが近いという事で、浮かれたい気持ちはわかるが、あくまで学生の本分を忘れず、節度をでのやりとりから二日が過ぎた。

 心配していた先輩たちからの仕返しもなく、五月女先生も人目のない場所には近づかないようにしているとのことで、おそらく大丈夫に思えた。

 

 六限目終了のチャイムが鳴ると、クラスメイトたちがいそいそと帰り支度や部活動の準備に入る。皆一様にどこかソワソワしているように見えるのは、いよいよ間近に迫ってきた夏休みのせいだった。休み時間に入ると、クラスの誰もがそのことを話題にしていた。


「ねえねえ、そういえば姫守君は夏休みって何か予定はあるの?」

 隣の席の歌敷さんが身を乗り出して訊ねてくる。

「う~ん、どうだろう?お婆様から予定はまだ伺ってないから」

「お家のじゃなくて、姫守君個人の予定は?」

「僕の?僕の…」

 回答に困ってしまう。

 

 今迄、自分でなにか予定を立てるということをしたことがなかった。最近になって友人と買い物に出掛けたりすることはあったが、それも誘われたから着いて行ったわけで、『自主的に』という意味では皆無だった。


「いやいや、そんな難しい顔して悩まなくてもいいよ。もし暇だったらその…」

 歌敷さんがなにやら言いづらそうにしていると――


「なに、姫守夏休みの間暇なの?じゃあさ、一緒に遊ばね?海でも山でもいいから」

「あんたはどうせナンパが目的でしょ」

「そうよ、姫守君をだしに使わないでちょうだい」

「あんなアホほっといて、私たちと遊びに行かない?ショッピングしたり、 あの屋上でのやりとりから二日が過ぎた。

 心配していた先輩たちからの仕返しもなく、五月女先生も人目のない場所には近づかないようにしているとのことで、おそらく大丈夫に思えた。

 

 六限目終了のチャイムが鳴ると、クラスメイトたちがいそいそと帰り支度や部活動の準備に入る。皆一様にどこかソワソワしているように見えるのは、いよいよ間近に迫ってきた夏休みのせいだった。休み時間に入ると、クラスの誰もがそのことを話題にしていた。


「ねえねえ、そういえば姫守君は夏休みって何か予定はあるの?」

 隣の席の歌敷さんが身を乗り出して訊ねてくる。

「う~ん、どうだろう?お婆様から予定はまだ伺ってないから」

「お家のじゃなくて、姫守君個人の予定は?」

「僕の?僕の…」

 回答に困ってしまう。

 

 今迄、自分でなにか予定を立てるということをしたことがなかった。最近になって友人と買い物に出掛けたりすることはあったが、それも誘われたから着いて行ったわけで、『自主的に』という意味では皆無だった。


「いやいや、そんな難しい顔して悩まなくてもいいよ。もし暇だったらその…」

 歌敷さんがなにやら言いづらそうにしていると――


「なに、姫守夏休みの間暇なの?じゃあさ、一緒に遊ばね?海でも山でもいいから」

「どうせあんたはナンパが目的でしょ」

「そうよ、姫守君をだしに使わないでちょうだい」

「あんなアホほっといて、私たちと遊びに行かない?ショッピングしたり、カフェでおしゃべりしたり」

「アホっていうな、だって仕方ないだろ!このクラスには美人が一人しかいないんだから。しかもそれが男っていうな!ギャハハハ」

「んだとッゴルァァァ!!」

「テメェ永遠にナンパできない身体にしてやろうかッ!」

「よし、去勢しちゃおう♪」


 ――とても会話に入っていけそうにはなかった。


「あははは……」

 歌敷さんはどこかバツがわるそうに作り笑いを浮かべる。


 教室の中の熱気がどんどん上昇している最中、教室の扉が荒々しく開く。

「お前達、廊下まで声が漏れてるぞ、騒ぐなら静かに騒げ!」

 謎かけのような注意とともに、担任の五月女先生が教室に入ってくる。

「だって、先生。柴田ったら酷いんですよ!このクラスの女子はみんなブスだって」

「ブスとは言ってないだろ」

「いいえ、言いました」

「なんだと、このブス!」

 途端に、また教室内がギャアギャアと雛鳥の群れのように騒がしくなる。

「だ か ら 静かにしろって言ってんだろうがッ!」

 五月女先生の怒声が教室中に響き渡り、クラスメイトたちの声がピタリと止む。

「………よし、じゃあ始めるぞ。っと、その前に柴田、あんまり正直すぎると彼女できないぞー」

「先生、俺自分に正直に生きていきたいっス」

「良いセリフだけどな柴田、それここで言うセリフじゃないぞ」

 教室中がドッと笑いに包まれる。


「――最後に、夏休みが近いという事で、浮かれたい気持ちはわかるが、あくまで学生の本分を忘れず、節度を守って日々の生活を送るように」

「は~い、先生、節度を守るって具体的にどこまでならOKですか?」

「そりゃあやっぱりチュウまでじゃない?」

「きゃああ~チュウだって~~」

「はぁ…、お前らはまず相手をみつけるところからだろ」

 五月女先生はため息まじりに答える。












 


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