第19話 チャリ鉄の旅
ある日、動画配信サイトで見つけた投稿。
女子高生の「ブレーキ壊れた原チャリで山道を下ったら、めっちゃ怖かった件」というタイトルだった。再生してみると、ヘルメットに付けたカメラの目線で、一気に引き込まれる。
「バイトに間に合わないから」
と無理やり坂道を下り始める。確かに、ブレーキレバーを必死に握ってるが、ほとんどスピードが落ちずに走り続ける。
「どいて! どいて~!」
路上で自撮りをしているハイカーを避けつつ、なんとかふもとの街道まででて、道の駅でのバイトに間に合う。
ここで視点は彼女から分離し、自分もロードバイクでサイクリングを始める。
場所は千葉県の奥深い山の中。周囲の緑に溢れた景観を楽しみながら、適当に走り続ける。
やがて日も傾き始め、そろそろ帰ろうか、とスマホを取り出し地図ソフトを起動しようとして、ふと道路の前方を横切る電柱の列に気づく。
まるで電車の架線だな。そう思い、近くまで走る。さもありなん、木立に隠れた無人駅がそこにあった。
そこへ入って来る、古びた車両。自転車ごと乗り込む。
ロードバイクを分解してバッグにしまっていると、名前を呼ばれた。振り向くと、見覚えのある顔立ち。クラスメートだった大隅君。なぜか輪郭がぼやけてる。
そこへアナウンス。この電車は岐阜方面まで。関東を縦断?
途中で地下へもぐって、東京のど真ん中を通って西日本、さらにどうやってか大陸へと続いているという。
走り進んで停まった地下鉄の駅は、タイル張りの円柱で支えられていた。トルコ風のアラベスク模様。
遠い大陸の西側まで、この路線を乗り継いで行きたかったが、今日の所はまず、日比谷あたりで降りて帰宅するとしよう。
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