第18話 ”センテイ”へ向かって走れ

 駅で電車を待っていると、いきなり武装した集団がホームに雪崩れ込んで来る。リーダーらしき者が言う。

「君たちには”センテイ”に向かってもらう。そこで新たな国の礎となるのだ」

 ホームに列車が入って来て来た。見たことも無い車両だ。武装集団に強制的に乗せられる。走りだした列車はどうやら、北へ向かって走っているらしい。

 家に連絡しようにも、スマホは女性向けメールソフトらしきものが立ちあがってしまい、どうにもそこから抜け出せない。”センテイ”という場所を検索することも。

「くそっ! こんな時に限って!」

 苛立ちのあまり声を上げると、そばに座っていた女性が、びくっとなってこっちを見た。二十歳くらいで目が大きく、メガネをかけていた。不安そうな双眸には涙が滲んでいた。

「……すみません」

 そう言って座席から立ち上がる。

 列車のデッキで、見ず知らずの男女で語り合う。目的地はどこなのか。一体、何をさせられるのか。

 どこかの駅で列車は停まったが、そぼ降る雨の中、ホームは武装集団が占拠していた。逃げることも叶わず、不安と焦燥感だけが募る。

 ”センテイ”とは地名なのか。だとしたらどこなのか? 全く聞き覚えがない。

 なぜか、「剪定」の漢字が思い浮かんだ。植木を刈り込む作業。

 もしかしたら、「”センテイ”に向かう」とは、自分らを何らかの目的のために「剪定」するという意味なのではないか?

 もしそうなら、不要な枝として刈り取られた者は、一体どうなってしまうのだろう……。

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