第17話 木彫りの馬

 クリスマスの朝。


 ぼくが目を覚ますと、枕元にプレゼントの包みがあった。

 大喜びで包みを開けると、一抱えほどのサイズの馬小屋だった。

 片側の壁が無くて、中には木彫りの馬や人が入っているのが見えた。キリストの誕生と、それを祝う人々のシーンらしい。


 テーブルに置いて小屋の扉を開け、今度はそちらから覗いてみた。すると、出口のそばに木彫りの馬が見えた。こちらを向いておかれていた。


 丸みを帯びていて、可愛らしいな。


 そう思って見つめていると、その木彫りの馬がコトコトと動きだし、ぼくのところまで歩いてきた。


 うわぁ、すごい!


 ぼくは木彫りの馬を手に取って、お母さんのところへ駆け寄った。


「お母さん、この馬、自分で歩いたよ!」


 すると、お母さんは「まぁ、気味が悪い」と木彫りの馬を取り上げてしまった。


「悪いモノが憑いているといけないから、一晩お寺に預けます」


 そう言って、お母さんは部屋を出て行ってしまった。

 気に入ってたのでガッカリしたけど。クリスマスのプレゼントなのに、お寺なのか。

 へんなの。


 翌日、お寺に行くと年末年始の飾りがしてあった。

 受付で話すと、和尚さんが木彫りの馬を持ってきてくれた。


「特に変わった事はありませんでしたよ」


 そう言ってもらって、ほっとする。

 木彫りの馬を受け取ると、外へ出て石段に腰かけた。そっと馬を置く。


 おん馬さんこちら、手の鳴る方へ。


 ほんとにはは手を鳴らさなかったけど、心の中で呼びかけた。すると、木彫りの馬はコトコトと動きだし、ぼくの方へ歩いてきた。

 手に取って、ほおずりする。


「すごいや。本当にすごいよ、キミ」


 その時、背後から声をかけられた。


「あなたは、そういう方のようですな」


 振り向くと、和尚さんが微笑んで、ぼくを見下ろしていた。


 そうか。変わっているのは、ぼくの方なんだ。

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