第21話 去就
冒険者ギルドへ入ると、ランゴバルトと共にギルマスの部屋へ入る。
二人共ソファーに疲れた体を沈み込ませ、同時にため息をついた。
ギルド職員がお茶を持って来たので一服しがてら、レヴィンは疑問に思っていた事を尋ねた。
「ノンナさんですが、どうしてあそこまで態度が
「あいつは元々精霊の森に住む
「なんでそんな
「アウステリア王国はもうずっと前から、こじれていた
ランゴバルトは一気にお茶を飲み干すと、お湯を注いでお茶をカップに入れなおす。
しばらく部屋を沈黙が支配する。
「どうして、関係がこじれているのか聞かないんだな……」
「どうせ
レヴィンがそう言うと、ランゴバルトは感心したような表情を作る。
「ほう。知っていたのか……お前の言う通り、
「
「元々は
「人間と交流を図るのならもっと品の良い貴族なんかと交流させておけばいいんじゃないですか? 冒険者ギルドなんかだと、人間の醜い部分が一層良く見えると思うんですが……」
「俺も明らかな配置ミスだと思っている。しかし、上はそんな部分も含めて人間を理解してもらいたいそうだ。それが真の友情につながると信じているんじゃねーかな」
真の友情ねぇ……と、レヴィンは懐疑的な視線をランゴバルトに投げかける。
「という事は、このままノンナさんの意見に従って
「まぁ魔物だからな。滅ぼしてもどこからも文句は出てこんよ」
「文句を言う者が目の前にいるんですがそれは……」
「そこは割り切ってくれ」
ランゴバルトは、レヴィンが自分から
「どう割り切れと? 彼等は精霊の森に住んでいるからかは解りませんが、いたって温厚な部族です。他の地域で見た
「それを知っている者はお前しかいないんだぞ? 他の者にそれを言って納得してくれる者がどれだけいるかな?」
レヴィンとしても自分から保護すると言ってしまえば、申告義務違反を取り消しさせる事もできず、ギルドに貸しを作ることもできない。
貴族になりたてで権威も権力もコネもないレヴィンとしては、頼まれて
しかし、良い方法が浮かばないで困っているレヴィンであった。
ランゴバルトがトドメを刺しにかかる。
「俺もはっきり言って、
彼としてもレヴィンとの関係悪化はさけたいのだが、悪役に徹するしかないと考えている。レムレースの件にもレヴィンを派遣したいので、何とか貸しを作りたいランゴバルトであった。
お互いに視線が虚空で絡み合う。
(仮に全員を『種族進化』させても人間が本気になって討伐に臨めば、大きな犠牲がでるのは避けられないだろう)
もっと良い頭に生まれたかったレヴィンである。
(俺の頭脳が大人なら、たった一つの真実を見抜けただろうに……)
どこかの名探偵に嫉妬を覚えつつレヴィンは、口を開いた。
「解りました。
「そうか。魔物を保護するなんてことは認めがたいが、俺とお前の仲だ。各所に対してできる限り便宜を図ってやろう」
「ありがとうございます」
「しかし、こちらの要求も飲んでもらいたい。レムレースに行って、アンデッド討伐に加わって欲しいのだ」
「解りました。これで報告義務違反についても、お咎めなしと言う事でよろしいですよね?」
「ああ、構わない」
「では、詳細を教えてもらえますか?」
レヴィンは覚悟を決めてそう言った。
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