第5話 小鬼と豚人
今日は朝から天気が良い。いい気分だ。
早起きして家族と朝食を摂った後、冒険者ギルドによってもう一度、
さっそく精霊の森へ向かい、森の西側奥へと入っていく。
ここしばらくは魔物使いで
そして次は
少し森を舐めていたようで、少々迷ってしまったがなんとか到着した。
入り口で見張りともめてしまい、村に警報を出させてしまった。
前に来た時に俺の顔くらい思えておいてほしいものであったが、自分も
早速、長老のガンジ・ダの下へと連れて行かれる。
同時に(おそらく)前回と同じメンバーが集まってきた。
レヴィンは人間の討伐隊の編成が今行われている最中だと説明し、実際の討伐はもう少し後になると伝えておいた。
「ありがたいことじゃ。レヴィン殿、感謝するぞ」
そう言って頭を下げたのはガンジ・ダとギズ達のみであった。
他の長老連中はふんぞり返っている。やる気がなくなってきた。
「で、今日が期限でしたよね? 誰が
「俺だッ! 俺が行く予定だッ!」
ジグド・ダが胸を張ってそう答える。
とりあえず無視してガンジ・ダに話しかける。
「それで、もちろん隷属するつもりはないって事で良いんですよね?」
「うむ。本来ならば、従うか村を捨てて逃げるかしか選択肢はなかったのじゃが、レヴィン殿の協力が得られる事になったからの」
戦う気はなかったのかとは聞かない。どう見ても無謀でしかない。
「多分戦いになりますけど、僕とそこのジグド・ダさんの他に行って一緒に戦う者は誰かいますか?」
「若者を中心に二十人ほど集まった。一緒に連れて行って欲しい」
「俺モ行きマス!」
話を進めていると突然、ギズがそう言って立ち上がった。
「駄目じゃ。そなたはまだ若過ぎる。戦うとしても村での防衛戦になるだろう」
「しかシ、レヴィンも同ジ十二歳でハないですカ!?」
「彼は強いし、戦いの経験もある。だが、そなたは狩りもまだ行った事もないだろう?」
「行きタイと言っテも、連れて行っテくれまセンでしタ!」
しかし、ギズが何度行きたいと言ってもガンジ・ダは頑として聞き入れなかった。
ギズがどうしても納得がいかないようなので、レヴィンは彼に話しかける。
「ギズ、俺は、そこのジグド・ダさんと二人で行くつもりだ。他の若者達も連れて行く気はない」
多分、行っても役に立たないどころか、一方的に殺されるだけだろう。
というか魔法を撃つ時の邪魔になりさえすると思う。
「「「なッ!」」」
これには他の者も驚いたのかいくつか声が重なった。
「しかし、それで勝てるのか?」
「別に勝つ気はありません。
「本当にそれで良いのか?」
「はい。あッ、あとは何人かに
ジグド・ダにある事ない事言われたくないので。
「解った。手配しよう」
「では、いつ頃出発しましょうか?」
「すぐに出発だッ!」
ジグド・ダが吠える。
レヴィンは解ったと返事をすると皆に外に出るよう促した。
「出発の前に前回お願いした柵や武器を確認させてください」
村の設備が整っているか、武器はできているかを確認しようとする。
長老達と一緒に村を見て回る。
柵はあまりできていない。五割程度だろうか。あとは武器だ。
完成したという槍を見せてもらったが出来は良くない。数も二十本ほどしかない状態である。予想以上に悪い。
「では行きますか」
レヴィンは、そう言うとジグド・ダと見届け人三人と共に
そんな事を考えていると、目の前にクマベアーが姿を現した。
あちらもこちらに気づき、後ろ足二本で立ち上がると威嚇を始める。
(こいつ、どうするつもりなんだろ?)
レヴィンがジグド・ダの様子をうかがっていると、抜き身の大剣をぶら下げたまま正面からクマベアーに突っ込む。人間基準で言うとクマベアーはランクCの魔物であり、
ジグド・ダは鉄の大剣を大上段から思い切り振り下ろす。大剣がクマベアーの頭に迫る。クマベアーは半歩かわす動きを見せるが完全にはかわしきれない。左腕で剣を抑え込もうと振り上げる。
大剣は左腕にめり込むと、そのまま勢いが衰える事もなく、振り切られる。
クマベアーは左手を失ったものの右手の鉤爪でジグド・ダに切りつける。
彼は左肩にその一撃を受け、肉がえぐれる。
彼の顔が苦痛にゆがむ。そして勢いを殺しきれずにその場に倒され馬乗りにされてしまった。そして、クマベアーの右腕が彼に何度も叩きつけられる。さらに牙で喉を狙っているようだ。ジグド・ダは大剣を放り出して必死で右手で頭を引き離そうとしている。
(ここまでだな)
レヴィンは最早勝負がついたと判断し、クマベアーが頭を上げた瞬間を狙って魔法を発動する。
「
クマベアーの首が宙を舞った。
首から血をすごい勢いで噴射させながらその魔物は絶命した。
ジグド・ダは倒れたクマベアーの下でもがいている。左腕が動かないので脱出できないようだ。レヴィンは彼に
それは回復してくれた事への驚きなのか、はたまたその再生力への驚きなのか。
「さぁ行こう」
魔石だけを採取し、レヴィンがそう声をかけると、ジグド・ダは大剣を拾って後へ続いた。それからじっくり、一、二時間ほどかけて前に偵察した時の丘へたどり着いた。
「んじゃ、ここで様子を見ていてください」
見届け人の三人は頷くと床に伏せた。
ここら辺は木が伐採され、まばらに木が生えているだけなので、立っているとあちらから見つかる恐れがあるからだ。
「よしッ! 行くぞッ!」
調子を取り戻したジグド・ダは、そう言うと、先頭に立って歩き始める。その後ろをレヴィンが着いていく。
レヴィンはローブのフードを目深にかぶった。
そして、集落の入り口にさしかかった時、入口の見張り二人に止められる。
「何用だッ!」
「
「少し待ってろッ!」
しばらく待つと、先程の見張りが悠然と歩いて戻ってくる。
彼は自分に着いてくるように居丈高に命令する。
どうせ
案内されたのは集落の中央付近にある広場であった。
ここで待てと言われたので、しばらく周囲を観察する。
武器は取られなかった。完全に舐めているのだろう。
レヴィン達の目の前には木でできた大きな
そして何十人もの
しばらく待つと、一際大きな
3mくらいはあるだろうか。その
着いてきた二人は
すると、そのうちの一人が大音声を上げる。
「貴様ら図が高いぞッ! 平伏しろッ!」
その言葉にチラリとジグド・ダを見やる。
流石にあれだけ威勢が良かった彼もその重圧に耐えかねたのか、額から汗を流している。またそれはレヴィンも似たようなものだった。周囲を何十人もの
「聞いているのかッ!」
再度、言葉が投げかけられるもジグド・ダは従わない。
「平伏はしない。我々は従属の要求を拒否する」
その言葉を聞いて何人もの
どれも
「馬鹿なヤツ等だ。彼我の戦力差も理解できないとはな。ではお前達からまず血祭にあげてやろう」
その言葉を合図に武装していた
そこでレヴィンが声を上げる。
「待てッ! 争うのは愚かな事だッ! 和平を提案するッ!」
周囲が嘲笑に包まれる。
しかし、
「貴様……人間かッ!?」
流石は王と冠するだけあるようだ。レヴィンは被っていたフードを取ると素顔を見せる。今度は周囲を困惑の感情が包む。
「何故、人間が
「いやだね。お前達にも優しさやいたわりと言った感情があるだろう。それを何故、他種族に向ける事ができない?」
「何を企んでいる人間ッ!
「愚かで下劣なのはお前達じゃないのか? 俺が調停役をしよう。少しは仲良くする努力をしてみないか?」
「交渉の余地はないッ! それに一人で何ができるッ! 者共かかれッ!」
交渉は決裂した。一斉に
周囲の
「
地面が波立つ。
その波紋は同心円状に広がり、それに触れたものは例外なく、大地の錐に体を貫かれた。ジグド・ダはレヴィンのすぐ隣りにいたのでダメージはない。そして、レヴィンは立て続けに魔法を放つ。
(頭を潰すッ!)
「
空気の刃が豚人王へと迫る。
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