第11話 護衛依頼
朝食時に話を切り出すのも何度目だろうか。
たいていは静かなのが朝食の風景なのだ。
レヴィンは例の護衛依頼を受けようと、グレンにもう一度相談する事にした。
「魔の森には絶対に入らないから、カルマまでの護衛依頼を受けたい」
そう言うとグレンは意外にも言った。
「誓えるか?」
一瞬、びっくりして間が空いてしまったが、レヴィンは迷わず「誓う」と言った。
「でもあっちで回復役が見つかったら入っていいかな?」
「それは駄目だ。仲間になったら一度連れてきなさい」
仕方ないがここは引き下がろう。
レヴィンは朝食を食べ終わると、冒険者ギルドに向った。
出発は明日である。
冒険者ギルドは朝から賑わっていた。
依頼掲示板を見に行く。
カルマの町までの商人護衛依頼はまだ締め切られていなかった。
受付はどこも空いていなかった。
レヴィンは一番列が短そうなところに並ぶ。
今回の護衛依頼の対象ランクはEから上だ。魔の森の近くとは言え、王都の二つ隣りの都市で比較的治安も良い。
特にランクにこだわる気もなかったレヴィンであったが、ランクをFからEに上げておいて良かったと思う。
上位ランクでなければ受けられない依頼もあるため、春休みのうちにDには上げておこうと思った。
(そういやランクアップの条件を聞いていなかったな……どんなのだろ?)
そう考えているうちに順番が回ってきた。
「あのカルマの町までの護衛依頼を受けたいのですが……」
「はい。あッ、レヴィン君じゃない。護衛を受けるのは初めて?」
名前を呼ばれてよくよく思い出すと、冒険者登録をしてくれたお姉さんのようだ。
「はい。護衛依頼は初めてです。薬草採取依頼と魔物の素材確保依頼をこなした事があります。今ははぐれ
そう言うと、冒険者タグを手渡す。
お姉さんの胸に留めてあるネームプレートを見る。
どうやらレオーネと言うらしい。
「依頼番号は15110301003。依頼ランクはDね。受付ギリギリじゃない。商人のハモンドさんの護衛依頼ね。場所は王都―カルマ間。はいはい。出発は本日一三時。打ち合わせが会議室Bで十時からだから参加してね」
「解りました。ありがとうございます。ところでちょっと質問いいですか?」
「なぁに? なんでもどうぞ!」
レオーネはニコニコしながら語りかけてくる。
「冒険者ランクがEなんですがDに上がる条件って何なんでしょうか?」
「依頼ランクDの依頼を五つこなす事。ランクDの魔物討伐数を二十体以上にする事ね」
彼女は変わらない笑顔で答えてくれる。
「じゃあCランクは?」
「条件の一番の肝は人を殺せる覚悟を持てる事よ。詳細は……」
彼女はいい事?と前置きしてから人差し指を立てて語りだした。
レヴィンはお礼を言うと受付を後にした。
(まだ八時か。アイテムの確認をしとこう。カルマまで馬車で四日だったっけ。
ここで時空魔法を使う訳にもいかないので、一旦家に帰る事にした。
「お帰り。冒険者ギルドに行ってたの?」
家に帰ると、母リリナが出迎えてくれた。
グレンは店の方だろう。
「うん。ちょっと準備の確認をしようかと」
そう言うと、自分の部屋に入り魔法を放つ。
「
渦巻きのような空間が出現する。
本来はこの中に入る事によって一時避難する事を目的とした魔法である。
中に入っている間も時間は経過する。
よく小説にあるアイテムボックスのようなものではないのだが、この中には物も入れる事ができるため、レヴィンはアイテム入れとして使っていた。
と言っても今は大したものは入っていない。
(ポーション、鉄の剣、毛布、寝袋、いや毛布とか入れてても
鉄の剣も念のため腰に佩こうかとも思うが、魔導士然とした格好をしているので剣が浮く浮く。
ローブにダガー、トンガリ帽子である。これはもう黒魔導士じゃなかったらなんだというのかレベルである。
レヴィンは少し心配になったので、ハイポーションも持って行こうと店の方に顔を出す。
店ではグレンが暇を持て余していた。
この店儲かってんのかな?と疑問に思いつつ話しかけようとするとレヴィンに気づいたグレンの方から話しかけてきた。
「おう。どうした」
「念のため、ハイポーションでも買おうかと……」
「使えないのにか?」
「今回組む人達にアイテム士がいた場合、もしもの事があったら使ってもらおうかと思って」
「心配しすきじゃないか? どんなパーティ構成なんだ?」
「いや打ち合わせが十時からなんだ。だから解んない」
「依頼書の空欄に名前書いてなかったか?」
(う。書いてあったかも知んない)
「どうだろ。まぁそれは顔合わせの時解るからいいよ。ところで護衛の時の野営ってどうしてたの? 四日間の予定なんだけど……」
「最初は大きなリュック背負ってたなぁ……、寝袋とかこの時期はまだ寒いからな。毛布もあればいいけどかさばるわな。パーティを組むようになると時空魔法を使うヤツがいたからな。
やっぱり
レヴィンは「じゃあ行ってきます」と言って店から出ようかと思ったその時、グレンは棚からハイポーションを取るとレヴィンに手渡した。
「これ持ってけ。金はいらん。頑張ってこいよ」
心配を少しでも消そうと思ってくれたのだろう。
ハイポーションはその心遣いだ。
「ありがと。行ってきます!」
レヴィンはお礼を言って店の外へと一歩踏み出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます