神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~

波 七海

第1章 異世界転生

第1話 異世界転生!


「どうしてこうなった……」


 広さにして四畳半くらいだろうか?

 その部屋のベッドの中で青年は目を覚ました。


 その青年……藤堂貴正とうどうたかまさは二十四歳。だが、それは過去の話。

 現在はレヴィン……それが名前だ。そして年は十二歳。何故だか理解できた。


 いったいどういうことッ?と頭を悩ませる事それほど…もかからなかった。

 思い……出したッ!

 

 そうなのだ。少年は現在、レヴィンという名前で生きているのだが、前世は藤堂貴正という名前で生きてきた存在なのであった。


 何故今頃?


「異世界って言ったじゃん!」


 まぁ確かに転生なんだけれども。


 なんで生まれた瞬間から人生が始まらないんだあああああ!!


 脳の容量がとかそんな問題なのか、はたまたそれ以外の理由があってなのかは知らないが納得いかん!


 時は金なり。十二年間分の時間を返せえええええええ!!






 時は遡る事十二年前……。


「ぱんぱかぱ~~ん!!」


「おめでとうございます! 異世界転生する権利に当選しましたー!!」


「は?」


 いきなりふざけた効果音付のセリフをほざいたのは定番の神(自称)であった。

 少しウェーブがかった金髪に蒼い目をした白人男性がそこにはいた。

 いきなり、は?(威圧)とつきそうな勢いで返事をしたのには訳がある。


 藤堂貴正は、三姉弟の三番目に生を受けた。

 女、女と来て男。待望の男子の誕生であった。

 祖父はこの時、「武門の誉れじゃ!」と大はしゃぎであったらしい。


 そんな事だから貴正は両親や祖父から多大の期待を受けて育った。

 そして貴正もその期待を裏切る事もなく、人生を歩んでいった。


 しかし、医者になるために最高学府、帝国大学への大学受験に失敗した事で彼の人生に暗雲が立ち込める事となる。


 貴正としては、悔しかったが浪人してもう一度挑戦してみる気でいた。

 最初は落ち込んだが、気力も満ち溢れ、やる気は十分にあったのだ。

 だが両親はあからさまに失望し、貴正を冷遇し、まるで人生の敗北者であるかのように接した。


 いや、まだ接しているうちは良かったのかも知れない。

 それは最後には徹底的な無視に変わった。

 これらの事が積み重なり、貴正は荒れた。

 そして内に閉じこもっていったのである。

 肉親が彼を無視する中、ただ一人寄り添ってくれたのは祖父であった。

 精神的に追い詰められ、無職となり、ニートと化してしまった貴正にとって祖父が唯一の光だった。


 そんな中、祖父が交通事故で亡くなった。

 彼は絶望し、世の中を呪った。


 そんな時である。たまたま外出していた彼の目の前で少年が車に轢かれそうな状況に出くわしたのである。


 彼はとっさにその少年をかばい、代わりに車に撥ねられたのであった。


 「そ、そんな邪見にしないでくださいよぅ……」


 いきなり、こんな情けない声を出した神様に若干のイラつきを感じつつ貴正はとりあえず謝っておいた。

 

「ふッならば仕方がない。許してつかわす」

  

(めんどくせえ……)


「まぁ、そういう訳でアナタはなんと異世界に転生する事ができるのです」


(わー、ぱちぱちぱち)


 どこからともなく歓声と拍手が巻き起こる。

 いったいどういう訳か結局解らないまま、貴正は質問する。


「俺はいったいどうなったんでしょうか?」

 

「残念ながら貴方は死亡してしまいました。おお、死んでしまうとはふがいない(笑)」


 こいつは人をイラつかせる才能でもあんのかと再びイライラする貴正。

 はたから見ればまさに額に青筋がたっている状態であったろう。

 そんな貴正の心情を知ってか知らずか神様は続ける。


「今まで亡くなった人間の合計がキリの良い番号だったのでこうしてお呼びしたんです」


(要は昔のホームページのカウンターかッ! キリ番報告かッ!)


 貴正は心の中でつっこんだ。 

 

「まぁ、それは置いといて、と。この世には、あなたが暮らしていた世界とはまた別の世界が複数存在しているのです。複数存在すると言ってもどの世界も結構似たりよったりの近い世界線が多かったりするのですが、今回は別です。以前からそう、世界の可能性と申しましょうか、そう言ったものを見出せだの、挑戦しろだのと上司からせっつかれましてね。まぁトップダウン経営の悲しいところなんですが、そういう訳でちょっと我々管理者が適度に干渉した場合の世界を実現すべく活動している次第なんですよ」

 

 俺の死んだ理由をとりあえず置いとくなよと心の中で毒づきつつ、貴正は思いあたったことを口にする。

 

「つまり実験してるから付き合えって感じですかね?」


「そう。その通りなんです。その世界を今後、モデルケースとしていけるようにあくまで過度な干渉は避けて、自然にしーぜーんーにやっていきたいとそういう訳です」


 いちいち言い回しがくどい神様である。

 

「まぁそんな世界のために必要最小限の干渉として許可されているのが、他世界からの転生者の活用なのです」


「それで俺にその異世界とやらに行って何をしろと?」


「何でも構いません。記憶はそのままで向こうに行けますので、その知識を活かして無双するも良し、全然関係ない事をして自由気ままに生きるも良しです。そしてあわよくばその世界に革新を起こして欲しい、世界をより進化・深化させて欲しいというのが我々の希望です。その暁には特典としてあなたの希望を聞いて差し上げます。つまり神と呼ばれている、我々の願いを叶えて頂ければ、こちらも出来得る限りのご要望に沿えるよう努力しますよという事です」


(何? 七つの玉をそろえろとかそういうんじゃないのね?)


「例えば神様の願いには、どういったものがあるんですか?」


「あくまで例えばなんですが、魔王を討伐するだとか、天下を統一するだとかですねぇ」


「魔王?」


「あッ勇者討伐でも構いませんよ」


 違う。そうじゃないと心の中で叫びつつ、貴正は質問する。


「ちなみに、今はどんな世界なんですか? 今の話だと、魔王がいる世界なんですよね?」


「そうですね。前の世界で言うと中世から近世くらいの文明度でしょうか? そこには様々な種族が存在していて……、あ、もちろん魔法の存在も割とメジャーです。これ大事ね(笑)」


(うぜぇ……)

 

「あッもう一つありました。革新を起こす他に、この世界には――どの世界においてもなのだが――次元の歪みが発生する場合があります。要はバグですね。それを取り除いてくれたり報告したりしてくれた場合にも要望にお応えできるかと思います」


 神様はこれ大事よとばかりに人差し指を立てて忠告した。


「あ、細かい話をここでしていてもきりがないので、転生後、『ヘルプ君・改Ver5.2』に聞いてください。貴方にしか見えませんし、声も聞こえませんのでご安心を」


(ネーミングセンス……)


「では、転生する前に来世での種族と身分と職業クラスを決めなければいけません。これは転生後でも条件を満たせば変更する事が可能です」

 

「えっメチャメチャ大事じゃないですか!? そしたらヘルプ君じゃなくて今ここで出来得る限りの話を聞きたいんですけど!」


「チッ。初めてですよ。ここまで私をコケにしたおバカさんは……」

 

(今、舌打ちした。メッチャ舌打ちした)


「ダメです。そ、そうそうこれは規則ルールなんです。規則ルール


(ぜってぇ今作ったろ!? 動揺を隠せてないよ? 神様?)


「ちなみに世界に革新をもたらしやすい身分だと、それだけ叶えて頂く願いも大きいものになりますよ。例えば農民なのに天下統一しろとは言いません。それに王族とか権力の大きい人が社会改革を行ってもそれは権力のおかげによるところが大きいですよね? 上流階級ならもっと大きい事を成し遂げてもらわないとね」


「うーん。納得できないけど、仕方ない。解りました。じゃあ職業クラス一覧を見せてもらえますか?」


 神様は種族や身分、職業クラスの一覧を表示した。

 貴正はしばらく考えて決定する。


「じゃあ、人間族、奴隷、大魔導士でお願いします。え? 上級職の大魔導士は駄目? 最初は魔導士ですか? じゃあそこら辺についてだけもう少し詳しく教えてくださいよ」


「うーん。仕方ない。ちょびっつだけですよ? ゲーム風に言うと、職業クラスのレベルが上がり、条件を満たすと次の職業クラス職業変更クラスチェンジできます。例えば、騎士になりたい時には、戦士の職業クラスレベルが2にならないと職業変更クラスチェンジできません。なお、基本職業にはいつでも変更可能です。基本職業というのは、見習い戦士、アイテム士、黒魔導士、白魔導士の事を指します。職業クラスによって使える魔法に制限があります。また、異世界人は職業変更クラスチェンジしても他の職業の能力はそのまま使用する事ができます」


「上級職が駄目って事は、つまり基本職業の四つしか選択肢がないって事じゃないですか!?」


「す、すみません……」


「解りました……。それで魔法はどうやって使うんですか?」


「魔法は全て魔法陣で表現されます。魔法陣を頭の中で完全に再現してください。そして『力ある言葉』を言えば魔法が発動します。後、魔法陣を読み解き、それを改変できればオリジナル魔法も創れます」


 神様は他にもいくつかの知識や規則ルールを教えてくれた。


(うーん。奴隷はやりすぎだな? 自由度低そうだし、農民にするか? 豊臣秀吉も農民出身で立身出世したんだしな。それに魔法はロマンだッ!)


 貴正は流石に時間をかけて考える。


「じゃあ、迷うけど、人間族、平民、黒魔導士で。あ、それと異世界転生と言えばチートですけど、チートな能力ってもらえないんですか?」


「人間は欲張りですねぇ。異世界人というだけで結構優遇されているんですよ? レベルも上限はありませんし……。その他にも色々……その上チートな能力ですか?」


 神様は超でかいため息をついた。超わざとらしい。


「他の転生者はそういう能力を欲しがる人はいなかったんですか?」


「いや、いまいしたけど……」


(いたんかい!)


「参考までに聞きますけど、どういう能力を求められました?」


「そ、それはぁ……個人情報ですしぃ……」


 イラり。


「ほ、ほら、向こうで会った時、貴方の能力がバレてたら嫌でしょ? そういう事ですよ」


 でまかせにしては良い言い訳である。貴正は仕方ないと聞くのを諦める。


 少し考えた後、貴正は前世に意趣返しを行う事にした。

 無職ニートを最強の職業クラスにして、それを自分だけの専用職業クラスにしてもらう事にしたのだ。


「解りました。ではそのように仕様を調整しましょう。詳細は任せてくださいますね?」


「任せていいのかなぁ……」


「う!? そこは最強の職業クラスにふさわしいようにしますからッ!」


「うーん。解りました。ではお任せします」


 貴正は仕方なく納得しておく事にした。


 神様はコホンと、咳払いを一つすると、「それでは」と言いかける。


「あッ……」


「今度はなんなんですか?」


 ジト目で神様を見つめる貴正。


「……後、忘れてました。加護もあるんでした。どんなのにしますか?」


(どこまでもこいつはぁぁぁ~!!)


 神様は先程のように今度は加護一覧を表示させた。

 それを一通り確認した後、もう一度職業とその能力について表示するように頼む。

 職業とその能力を把握してからでないと役に立たない加護を選びかねない。


「あ、言葉とか文字は通じるんですか?」


「そこら辺は大丈夫ですよ。その世界にはもう何人もの異世界人が行っていて、願いも何個か叶えられていますし」


 また大事な事をサラッというヤツだなと貴正はもうため息すらでない。

 貴正はしばらく悩んで決める。


「ここにはないヤツで。無職を最強にするような加護を創ってください」


「ええ~」


 非難の声を上げる神様。


「いいじゃないですかッ! 無理やり呼び出されたんですよこっちはッ!」


「仕方ない……。解りました。調整しておきましょう」


 神様は思いっきりため息をついて言った。


「じゃあ心の準備はOKですか? では飛ばします。良い旅を!」


 そして貴正の意識が暗転した。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ありがとうございます! 波七海です。

拙作をお読み下さりありがとうございます。


本日より、第27回スニーカー大賞向けに改稿した『神様の願いを叶えて世界最強』の投稿を開始致しております。

内容としてはこの作品の第1章~第2章冒頭までとなっております。

主人公の性格や展開が大幅に変更されておりますので、是非読んで頂けると嬉しいです。6月30日まで毎日更新となります。

評価、応援、フォロー、感想などなど頂けるととても喜びます。

何卒、よろしくお願い致します!

作品はこちら!

https://kakuyomu.jp/works/16816452220713880719

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