異世界転移で指から唐揚げが出るようになった俺が唐揚げを作って食べるまで
くれは
プロローグ 俺が唐揚げをどれだけ楽しみにしていたか知ってほしい
俺の手を離れて、白いビニール袋が雨空に跳ね上がる。
あのビニール袋には、鶏モモ肉が入っている。だいたい五百グラム。
生姜とニンニクはチューブのやつが冷蔵庫に入ってる。醤油もあるし、ごま油もある。
鶏モモ肉を雑に切って、生姜とニンニクと醤油と、それからごま油。漬け込んでしばらく放置。下処理でこれ以上面倒なことはしない。どうせ俺しか食べないし、雑で良い。
薄力粉と片栗粉もまだある。というか、そろそろ薄力粉を使い切ってしまいたい。買う時はできるだけ量の少ないものを選んでるけど、粉類はなんだかんだ残ってしまう。薄力粉は残り全部。片栗粉も適当に。
あとは油でジュワッと揚げれば唐揚げだ。
付け合わせはキャベツの千切り。最近は、パックの千切りになったヤツを買って済ませることにしてる。余らせる心配がないのは、一人暮らしでは重要。
買う時はやる気に満ちてることが多いからキャベツ半玉買っても使いきれると思ってしまうんだけど、次の日くらいには面倒というか億劫というか、急にやる気がなくなったりして、そんでもってそのまましばらく料理なんかしなくなったりする。
以前に、うっかりと野菜を液体にしてしまってから、俺は自分のやる気を信用しなくなった。
液体になった野菜は吐きそうなにおいがするし、掃除は大変だった。
それから、ビール。スーパーで買ういつものヤツじゃなくて、頂き物の北海道の地ビールが冷蔵庫には入ってる。
次の休みは唐揚げって考えたのは、そもそもこの地ビールを頂いたからだったりする。唐揚げを作るしかないと考えたのだ。
そして、週末の地ビールと唐揚げを楽しみに、俺は平日を乗り切った。
ビール飲んで唐揚げ食べて、ダラダラとゲームしたりアニメ見たり映画見たり、最高の休日になるはずだった。
俺の体も、あのビニール袋みたいに跳ね上がってるような気がする。ビニール袋とは反対の手に持っていたはずの傘も、どっかに跳んでいってしまった。
地ビールは何種類か入っていた。どれから飲もうか。唐揚げ作りながら飲むのも良いなあ。
そして、それから、唐揚げを食べるんだ。
唐揚げ食べたい。
そんなことを思いながら、多分、俺は死んだのだと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます