第3話:いつもの放課後、大切な日常
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「うん、お待たせ。じゃあ帰ろっか」
私は教科書類をロッカーにしまうと鞄を持って立ち上がり、待っていてくれた妹と下駄箱へ向かう。
放課後すぐの下駄箱は
家に帰ったら家事をしないといけない、というのもあるけれど、早く帰って触れ合いたいというのが私の正直な理由だ。
もちろん紗夜が部活をしたいと言うのなら、私も一緒に入ろうかと思うけれど、たぶんそれも無い。
「お姉ちゃん? どうしたの?」
「ううん、何でもない」
「なら良いけど。……ね、それより早く帰ろ?」
「うん」
だって最近は私より、紗夜の方が先に私を求めてくるようになったからだ。もちろん、求めると言っても姉妹の間でする様なことだけ、
そうして私達は手を繋いで、2人並んで帰る。夕暮れに照らされた2人だけの帰り道は、まるで世界が幸せに包まれたかのように優しく感じて、ずっとこんな時間が続けばいいのにと思わせる。
そんな時間も、2人で並んでいるとすぐに過ぎてしまうのだけれど。
家に着くと、2人の間で決めたその日の当番の仕事をする。例えば今日は火曜日だから、私は夕飯を作る。その間に紗夜は、お風呂掃除をして、洗濯ものを取り込む。
今日のメニューは紗夜の希望でクリームシチューだ。それだけだと寂しいため、その他にトマトサラダや胡麻和えなども作る。はじめの頃は一品だけだったり、それすらも失敗してしまったりと大変だったが、5年もしていればさすがに慣れるというもので。
それに紗夜に「美味しい」と言ってもらえると、とても嬉しいというのもあって、上達は早かった。紗夜が「美味しくない」と言ったことは、今まででたった一度しかないのだけれど。
最後にクリームシチューを圧力鍋で煮込んでいる間にサラダをお皿に盛りつけて、完成。
メニューはあまり変わり映えしないけれど、2人で食べる夕飯はこれ以上なく美味しい。
今日も2人で一緒に、美味しく食べた。サラダにかけてあったマヨネーズが紗夜の口元に付いていたから舐め取ったり、逆に舐め取って貰ったり、そのままの勢いでお昼にはできなかった、ちょっとだけ挨拶を超えた軽いキスをしたりと、紗夜と2人、楽しみながら食事する。
夕飯を食べ終わったら、2人でお風呂に入る。
お風呂では、私が先に紗夜の身体を洗う。石鹸を手で泡立てて、背中から、首元、腕、胸、お腹、股の間、太もも、そして足の指の間まで、全部。
泡を乗せた手で、紗夜の弾力ある白い肌の上を滑らせていく。毎日してると、紗夜の弱い部分、敏感なところが手に取るように分かってきて、少し楽しい。
弱いところを優しく洗っていると、紗夜はピクッと反応して体をくねらせ、そして顔を蕩けさせる。
途中、「あんっ」と声が漏れてしまいそうになるけれど、唇でちゃんと塞いでいるから外に聞こえるほど声が漏れることはない。
隅々まで洗ってシャワーで流すと、紗夜はいつも気持ち良さそうに顔を赤らめたまま、はあはあと息を切らしている。とろんと溶けた目でこちらを見つめる紗夜と目を合わせていると、少しだけ変な気分になってしまいそうだ。
紗夜を洗い終わり、紗夜の息が整うのを待ってから、交代する。今度は私が紗夜に洗ってもらう番だ。
紗夜の洗い方は、いつも優しい。石鹸の泡を指の腹で優しく塗り広げるように、首回りからゆっくりと泡のついた手で撫でていく。股の間は敏感だから特に優しく、中指と薬指で愛撫するように洗う。
少しだけ声が出そうになるけど、頑張って抑える。妹に弱いところを見られたくないという姉心もあるのだけど、声を紗夜に聞かれると少しお風呂が長くなりそう、というのも理由だ。
暫くすると紗夜がシャワーで優しく泡を流してくれて、洗い終わる。そうして私がいつものように、「ありがとう」と笑って言うと、紗夜は少し不満気な顔を赤らめてこう言う。
「今日も、だめだった?」
「気持ちよかったよ?」
「……なら、良かった。じゃあ湯舟に浸かろっか」
気持ちよかったと答えても、少しため息を吐きそうな表情でよかったと言われるだけで、理由もわからないから少し寂しい。とはいえ、紗夜の顔はすぐにいつもの様子に戻るから、私は少し気になりながらも「うん」と答えて湯舟に浸かる。
それから紗夜も、私の方へと背中を預けて浸かる。
「気持ちいいね」
「うん」
うちの湯舟は年頃の2人が一緒に浸かるには狭いけど、こうして同じ方へと一緒に入ると足を伸ばせる。
そうしたまま、紗夜の背中を優しく抱き寄せて、いつものように、たわいもない話をするのだ。
今日は何があった? って。そうすると紗夜はいろんなことを話してくれる。なんの授業があった。なにが難しかった。今度なにがある。誰ちゃんがなにをしてくれた。誰さんがまた怒られていた。
そうしていつも笑いながら話すのだ。
お風呂から上がると、身体を拭いてパジャマを着て。それからは2人一緒にリビングでお勉強。
宿題をして、復習をして。わからないところは私が優しく教えてあげる。
そうして勉強が終わると、ソファーでぐだぐだと触れ合う。疲れたーって言いながら。明日学校行きたくないーって言いながら。
優しく触れ合って、励まし合って、そうしてまた明日も頑張ろうって。
就寝は同じ部屋の、違うベット。3年くらい前は一緒のベットだったんだけど、さすがに狭くなってきたから、分かれて眠っている。
本当は私は一緒の方が嬉しいんだけど、紗夜は「眠れなくなりそう」って言って、違うベットに寝るようになった。
「紗夜、おやすみ」
「おやすみ、お姉ちゃん」
そうして今日も、楽しい一日が終わる。
明日の朝は私が紗夜を起こしたいなって、そう思いながらゆっくりと意識を手放す。
これが、私たちのいつもの一日で、私の大好きな日常だ。
そして私は、いつも眠る前に星に願うのだ。私の大切な日常が、いつまでも続きますようにって。
仲良し姉妹の百合な日常 てる @teru0653
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