終章 その4 緑川紅宇 『世界で二番目に空を飛んだ人間は誰にも覚えられない。でも初めては皆覚えてる。』
十月。
世間一般的には、秋も深まる…という時期。
寒くなると人肌恋しくなると言うが、私もその例に漏れない。
これからカーリングは本格的なシーズンとなり、大会や練習も増えていく。
自然と出費が増える。
そして人肌恋しいとなれば私の
だからという理由で油断があったとは思いたくないが。
私はその日、いつも通り
ばったりと出会ってしまったのだ。
機屋リューリに。
いつもならもっと警戒して周りに人がいないか、確認していたと思う。
だから油断。
アイツも男連れ。
なんでこんな所に男連れでいるのよ?
…アタシも人の事は全く言えないけど。
だから、そういう場所を探したければ隣町等に車を走らせなければならない。
この辺りにいるという事はつまり、
擦れ違い様に目が合う。
…口止めしなきゃ。
最悪、退学になっちゃう。
翌日、カーリング場での練習の後、機屋リューリを呼び出した。
学校で一刻も早く話をしたかったのだが、二人になる機会は無く、気軽にアイツに話し掛けられるほど、アタシ達は仲が良くない。
そうこうしている内に、放課後となってしまった。
アイツが誰かに言ったのではないか?
気が気ではなかった。
だが、学校でアイツの様子を伺えば伺う程、その疑念は薄れていった。
きっと。
アイツ、他人に
呼び出したけどやはりアイツは"何の用事だ?"って顔。
それでも私は念の為、口止めを試みる…はずだった。
「アンタ…昨日…あんな
私は自分でも予想外な事を口走った。
しかも自分を完全に棚上げしている。
「…わ」
案の定、リューリは答えない…と思ったら、何か呟いていた。
「何よ?」
「…分からない、わ」
「…分からないって、分からないであんな
リューリは答えずぼんやりしている。
「…アンタ、ホントに分からずにあんな
またぼんやりしているリューリ。
でも否定はない。
「…呆れた。なら教えてやるよ。あんな
リューリの瞳が僅かに動く。
「…ヤる、
「…ヤってはいないわ」
何故か私はホッとしたようだった。
「ねぇ、あなたはヤってたんでしょ?」
いつものように、吊り上がった目で私を見つめる。
でも、そこにいつもの
「…うん。まぁ、ヤっていたよ」
「ねぇ」
「
おう、トンデモないことを聞いてきやがった。
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