終章 その1 伊勢原真紀 『きっと、箱の蓋を開けたらこの猫は死んでいる。』
九月。
放課後になり、私はこの間の合宿で撮った写真を持って、
自宅で焼いたから皆に見せに行く…のは口実。
一番の目的は
三年生になって私達はバラバラのクラスになった。
だから。
作らなければ話す機会が無い。
携帯でメッセージ送ったりはするけど。
そう言えば九月に入ってからネットでゲームをする事がなくなった。
もんじぃこと、
玲二は。
一生懸命勉強してる。
まぁ、
「ッしょっと」
耳障りな音を立てて男子
中には…。
何故かハナっちこと、
ここ、男子の部室ですケド?
頭には今年の初めに私達がプレゼントした黒いキャスケットが乗ってる。
…暑くないのかな?
「アレ?ハナっちだけ?玲二…ともんじぃは?」
私は慌てて玲二の次にもんじぃを付け足す。
「最近ずっと来てないですよ?山城先輩は。
手元のタブレットPCを見ながら、眼鏡越しに上目遣いで答えるハナっち。
「あ、そうなんだ?じゃあ教室かな〜?ホラホラ、夏の合宿の写真出来たからさ」
ハナっちに写真を数枚見せる。
ハナっちは写真をペラペラと
「むふ〜ッ」
俯いて溜息(?)をする。
眼鏡、真っ白だけど見えてる?
「…山城先輩、見掛けましたよ。三年生先輩に呼ばれてました。もちろん、女子です。…たぶん、柔剣道場裏です。あそこ目立ちにくいですし。道場の声がうるさいから他に聞かれにくいし。よく、告白に使われるみたいですよ?」
「え!?何でそんな事?」
「写真を見れば…」
そこでハナっちは、くしゅっと鼻をすすった。
「…見れば、分かっちゃいます。伊勢原先輩の気持ち」
「…アハハ、さすがハナっち。分かっちゃい、ますか?」
「はい。分かっちゃい、ます」
「
「はい」
「私も、さ。だからってワケじゃないけど好きなの。
「…はい」
「ヒヤヒヤよ?
「…先輩」
「ね、でも、
「…伊勢原先輩」
「…だから今回もその三年生は、泣くわね」
「…
「…はい」
「…伊勢原先輩が気持ちを伝える相手は私では、ないです」
「……はい」
「でも、怖いのも分かります」
「私、
「
「ナントカの猫?」
「はい。
「ハナっち。私ね。行ってくる」
私はスッと立ち上がる。
そして耳障りな音を立てる扉を開ける。
「ハナっちに言われたからじゃないよ?私が、ね。私のコト、だから、さ」
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