第四章 その7 機屋リューリ『まがい物。』
コトンという音に振り向くと、そこには缶コーヒーを差し出したまま、不機嫌な表情で、こちらを見ている女子。
身長は私より高いかも。
眉毛の太さがそのまま性格を表しているような、そんなはっきりした顔立ち。
そして、一目見て
スカートが必要以上に短く、胸元が開き強調されている。
…私には下品に映る身だしなみ。
それ以上観察する気にもなれず。
たぶん、こういう輩は関わらないのが良いわ。
そう直感する。
私はため息をつくと席を立つ。
「ちょっとちょっと、待ちなさいよ!人がコーヒー奢ってるのよ?何か言うべきじゃない!?」
「頼んでないわ」
「くぅ〜。人が下手に出てれば。
私は質問には答えず小首だけ傾げる。
「眼鏡の…中学校で同じチームだったでしょ!?」
その質問にも私は答えず、ああ、とだけ唇を動かす。
「学校が違うわ」
「そう。
「全く覚えてないわ」
「…少しは考えるフリくらいしなさいよ。腹立つケド、一応自己紹介。
…なるほど。
こういうタイプかと私は納得する。
こちらの考えはどうあれ、勝手にライバル視してくる人。
間違いなく面倒なタイプだわ。
私はそのままくるりと背を向ける。
「せめてコーヒー持って帰りなさいよ」
「…不味いでしょ?ソレ」
パパが淹れてくれたコーヒーなら。
私が好きなキーワード(苦味、深煎、チョコレート)で好きな豆を選んでくれて。
嫌いなキーワード(酸味、フルーティ)の豆は省いてくれる。
彼女の差し出したコーヒーは甘いだけに違いないわ。
「くぅ〜ホント、腹立つ。一応忠告するわ。ちょっとは人付き合い考えなさいよ?チームメイトなんだから」
「…」
…チームメイト…。
頭の中でその言葉を反芻する。
どうやらいつの間にかチームが決まっていたようだった。
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