第7話 試練

     結婚フラグを回避してから3ヶ月がたった。ノブはジャンケンドーをある程度、使えるようになっており道端でエンカウントするモンスターに遅れを取ることはなくなっていた。


 「ジャンケンドーを覚えたら竜種のモンスターを狩りにいってもらうわ。 竜がいるドラゴンバレーまで歩いていくから歩きながらレクチャーするわ。さあ、行きましょう 。」


  ヌルゲーになっているのを見越していたのか、ミラは次の試練を言い渡した。


「 え? もう、行くの?」


「そうよ、 時は命なりと言うことわざが古代からの伝承にあるのよ 」


「なんか、グレードが上がっているぞ。」


ノブはミラに手を捕まれ強引にドラゴンバレーへと旅立つこととなった。 ノブ達は、それから2週間かけてドラゴンバレーの入り口まで到着した。


「ミラ、ここがドラゴンバレーか?」


「ええ、そうよ。龍の谷、ドラゴンバレー。」


いつの間にか、フードを被った男が近づいてきた。その男の胸には9の数字がかかれている。


「やはり今回も君か? だが、随分来るのが早い……どういう事だ?」


「……」


「忠告しておこう、今この時期ドラゴンたちは繁殖期を迎え凶暴化している。今の君の実力ではまだ早い。命が惜しければ出直すことだ。」


 話し終えるとその男は何処かへ消えて行ってしまった。


(今回も?このクエストのNPCなのかな?)


「なぁ、ミラ。あれは何だったんだ?」


「あれは、 NPCよ。気にすることはないわ」


 ノブはミラの言うことを信じて気にすることはないが、心の奥底に何か引っ掛かりが有るように思った。何か重大なことを忘れているのではないかという気持ちにさせれた。


 暫く歩いたら、ノブ達はドラゴンを発見する。そのドラゴンは、何かを食べている最中だった。体長は、7mはあるだろうか土属性のためか背中の黄土色の鱗が上下に動いている。強力な尻尾による、アイアンテイルとドラゴン共通のブレス攻撃を持つ土属性のアースドラゴンだった。


「いきなり、中ボスクラスを引き当てるとはついてないなー。ここは、引き返そう」


「何言ってるの。早く倒しなさい」


「そうは言っても、でかすぎだろう」


「バキッ」


 ノブは、ミラの余裕っぷりに動揺したのか枯れ木を踏んで大きな音を立ててしまった。


「グワワー」


「し……しまった。見つかってしまった。」


「ほら、観念して行きなさい」


「うわー」


 ノブは、ミラに蹴られアースドラゴンの方へと行くことになった。アースドラゴンは、すぐにブレスを放ってきた。ノブはすかさず、その場でジャンプしてブレスの炎を回避した。


「あっぶねー、攻撃範囲が広いぞ。」


ジャンプして難を逃れたが後ろは火の海となった。

ミラは、火の海の向こう側に逃れ木に登りこちらを見ている。


「くそー、退路を絶たれた。こうなったら戦うしかない。まずは、距離を詰めよう。うおおおぉー」


ノブは、アースドラゴンに近付くため走りだしたがアースドラゴンはそれを見越したのか2回目のブレスを放つ。ノブはそのブレスをマトモに受けてしまった。


「うぉー、熱い。でも、思ったよりダメージを喰らってないぞ」


ノブは自分のHPのバーをチラ見してそれほど減っていないことを確認した。


「ノブ、さっさと倒しなさい。早くしないと次のドラゴンが来てしまうわ」


ミラのヤジが飛ぶ。

ノブは意を決して手をクロスに防御しながら攻撃できる距離まで近付くことにした。

2度のブレスのクールタイムが発生しているのか、3度目のブレスは放たれなかった。

クールタイムの間にノブは、アースドラゴンを攻撃できる距離まで近づけた。


攻撃できる距離まで詰めたノブは空かさずジャンケンドーで攻撃に入った。

ノブはジャンケンドーを繰り返すこと10回にしてようやくアースドラゴンにダメージを与えることができた。


「よし、ダメージを与えることができた。このまま、攻撃を続けるぞ」


ノブは、ダメージが入ったことで俄然やる気が出ていた。しかし、急にミラがいる方向から叫ぶ声が聞こえる。


「ノブ、そこから退きなさい。潰されるわよ」


ノブは、ミラの指示にしたがいアースドラゴンから距離を置いた。その瞬間、上空から大きな黒い塊がアースドラゴンを潰した。

その黒い塊は、アースドラゴンの5倍はあるであろう大きな黒いドラゴンであった。


「スッゲー、でかいなー」


「ノブ、黒龍王カイザードよ」


「誰だ?。わしの眠りを妨げるやつ?」


黒龍王カイザードは、周りに眠そうな声で言った。

ノブを見つけると、殺気をノブに放つ。


「貴様か? 儂の眠りを妨げたのは」


「ああ、そうだ。大きな音を立ててすまん」


ノブは、恐怖で体が震えてきていたが黒龍王に悟られまいと振る舞っていた。

すると、黒龍王は手の平をノブに見せた。


「五分だ。素直に謝ったことに免じて五分保てば許してやろう」


「おっおい、それだと四分だろ!」


黒龍王の手の指は、四本しかない。そのことをツッコミを入れたノブは、幾分か恐怖が消えた。


「おっと、すまん。いいだろう四分で手を打とう。では、儂の攻撃に耐えてみせよ」


黒龍王が口からブレスを吐く。黒龍王のブレスは、アースドラゴンの赤色の炎ではなく温度が高いのか青い炎がノブを襲う。

黒龍王のブレスによる開始の合図がだされたのであった。






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