第6話 旅立ち

  街に帰ったノブは、持っていく荷物はないが、三年間世話になった母親に別れの挨拶をする事にした。


 「母さん、修行の旅に出ることになった」


「とうとうノブも旅に出るのね。お母さんは嬉しいわ。」


「母さん、今までありがとう。ところで、父さんは何でいないの?」


「父さんは、ガイア山脈の火口にあるダンジョンを通り毒の湖を泳いで渡り魔王の城で行方不明になったの」


(なんかフラグが来たぞ。俺は勇者だったパターンか? 親父を目撃した人の方がすごいんじゃない?)


「よく父さんってわかったね。」


「そうね、貴方のお父さんはトラ柄のマスクとマントを付けているのよ。それで分かったみたい。もし、会えたらこれを渡してね。」


(これ、タイガーマスクじゃん。親父の服装は上半身ハダカで下半身はレスラーのパンツだろうか? あったら見てみよう。)

 

「ノブ、もうそろそろ行くわよ」


「じぁ、もうそろそろ母さん行ってくるよ」


  ノブはミラに急かされながら街の外へと歩き出した。街の外に出るところで何時も声をかけてくれる門番のグレッグさんに呼び止められた。


「よう、ノブ。今から外に出るのか?」


「ああ、そうだよ。これから修行の旅に出るんだ。」


「そうか、お前の父さんは残念だったな。俺が非番の時に偶然お前の父さんを見かけてな。すまん、止めることは、出来なかった。」


  (貴方ですかー。そんな非番でぶらりと行けるところでないと思うんだけど。このゲーム製作者は、矛盾に気づいてるだろ)

ノブは心でツッコミを入れるのであった。


「しょいがないですよ。父が自分の意志で行ったのですから。」


「そう、言ってくれると助かる。もしお前の父さんに会うことがあれば、もうそろそろマスクを変えろと伝えてくれ。頭の部分が切れてて、髪が見えているぞと」


(俺の父さんは、筋肉の人の二世ですか?)

またも、ノブは頭の中でツッコミを入れた。


「わかった、伝えておくよ。」


こうしてノブとミラは、始まりの街を後にした。最後にノブはガジルに挨拶して行きたかったが、ミラが許してくれなかった。


「ノブ、そのまま歩くのではなくジャンケンドーの型で歩きなさい。」


「えー、歩くスピードが遅くなるじゃないか。夜までに次の村まで着かないじゃないか」


「大丈夫よ、型が自然に出来るまでは寝ずにやって貰うから」


「いや、普通に眠くなるだろう。」


「いいから、やりなさい」


「はい、はい」


ノブは渋々、次の村まで伝授されたジャンケンドーの型を繰り返し行うハメになった。

  次の村まで半分くらい来ただろか、今は夜中の0時を過ぎたあたりだ。周りは静かであった。


「なあ、ミラ。もうそろそろ休憩しないか?」


「ノブ、もうそろそろ本番よ」


ミラに言われた途端に、少女の叫び声が聞こえた。


「きゃー、誰か助けてー」


林から少女とそれを追うようにゴブリンが三体現れた。少女は、怪我をしているようで林から出てしばらく走っていた後にその場で、倒れた。


「ノブ、助けるか放置するか決めなさい。」


「ミラは、このイベントを知っているのか?」


「ええ、知ってるわ。放置すれば鬼畜の称号が与えられ、助けると下手すれば結婚フラグが立つの。結婚フラグは、数年後には強制実行されて少女の住んでいる村から一生出られないの。もう一つの鬼畜の称号が与えられると、まず宿屋とかが使えなくなるわ。色んなキャラから難癖をつけられるわ。」


「えげつねーな。」


「ええ、初心者殺しって言われているわ。ノブ早くしないと鬼畜の称号を貰うことになるわよ」


「おっといけない。早く助けなきゃ。」


ノブは、少女を助けることにした。少女の方へ走り出す。ゴブリンが少女に手を出すところで飛び蹴りして少女から離した。飛び蹴りを受けたゴブリンは5メートル転がった。

残り二匹のゴブリンが示し合わせたかのように同時に襲ってきた。


「特訓の成果を見せてやる。最初はグージャンケン、グーナックル。」


  右手の拳が炎で包まれ、例の金髪で髪のながい兄貴と同じエフェクトでゴブリンにグーナックルが当たる。グーナックルを受けたゴブリンはHPは0になり倒した。もう一匹のゴブリンがどこにいるか見渡す。もう一匹のブリンは、ノブが先ほどいたところで立っている。


「ジャンケン、チョキスラッシュ」


すかさず、振り向きチョキスラッシュを出した。チョキスラッシュをもう一匹のゴブリンに放った。チョキスラッシュを受けたゴブリンの首は飛び一撃で倒した。


「残り1、ジャンケン、パー玉」


手の平からバレーボールぐらいの玉が出て、始めに5メートルは離れているであろう飛び蹴したゴブリンに向けてパー玉が飛んでいった。


「ビギャん」


  パー玉が当たったゴブリンは誰かの奇妙な冒険に出て来そうな鳴き声を出して死んだ。


  ゴブリンとの戦闘が終わったので、急いで少女の所へ向かった。少女は怪我をして気を失っているようだ。直ぐにメニューウィンドウからポーションを取り出して少女にポーションを掛けようする。


「止めなさい、ノブ。フラグが立つわ」


「うわっと。」


   ノブは、右手で少女に垂らそうとしたポーションを左手で掴み強引に回復対象をノブに変えた。


「あぶねーな。ミラ、早く言ってくれよ。」


「注意する間も無く貴方が勝手にかけようとしただけでしょ」


「そうなんだけど、あと少しで死亡フラグが立つところだったんだぞ」


「結婚フラグよ。フラグが立っても回避方法があるわ。後で少女とゴブリンの巣に行くクエストが発生するの。その時に放置して逃げればいいわ。」


「それは、鬼畜じゃねーか。」


ミラは、少女に回復魔法を放った。


「少女が目を覚ます前に行くわよ」


「え? 待たなくて良いの?」


「もうゴブリンは襲ってこないわ。後は自力で帰るわ。それともフラグ立てたいの?  なら、待つけど」


「いや。先を急ごう」


  ノブはミラの手を掴み慌ててこの場を走り去った。少女が見えないところまでくるとミラの手を離して歩き始めた。


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